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最強の大魔法士、TSしてのんびり魔法書店の看板娘になります  作者: 冬葉月
魔法雑誌創刊編

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第17話 そういう魔法書

 エウロの謀略にまんまとはまり、私が雑誌のメインコンテンツにされる事になってしまった。その過程たる現在、魔法協会の職員二人によって捕らわれ、好き放題されている。別に物理的に拘束されているわけではないのだが、こちらは魔法書を持っていない上に魔力ゼロのため魔法は使えず、対する相手二人は魔法の熟練者で魔導書持ち、勝てるわけがない。


 その上アファレは私と会って興奮しているせいか、異常なほどにお喋りで、かたやメカクレなほうは全く喋らない。


 試しに名前を聞いてみたところ、『スィレン』とペンで書いて見せてきた。これが、彼女の名前らしい。自己紹介すら無口、しかしこちらの呼びかけに答えてくれるあたり、会話の意思はあるようだ。


 喋らないのには、何か理由があるのだろうか? 所持している魔法の都合上、喋ると不利になる要素があるとか。縛りという表現も変だが、そういう制約があるとか?


「ルーチェちゃん! どれから着たい!?」


 アファレは私に着せるために持ちこんだと思われる、メイド服、ゴスロリ、ワンピースなどなど、多種多様な服を広げていた。待て、そんな量をどこに隠し持っていた? そもそも着るなど一言も言っていないし。


「着ない。私はただ雑誌のためにしぶしぶ、自らを媒体とするだけであってだな、わざわざかわいいアピールをするつもりはないぞ」

「え~、そんなぁ……」


 しょぼくれた様子のアファレだが、当たり前である。魔法書店に関する質問には答えるし、ある程度宣材写真として必要な分にも協力するし、エウロとの約束上表紙の写真を私にするのも構わないが、いわゆるコスプレじみた事をする理由は全くない!


 TSしたからと言って、女装の趣味があるわけではないのだ。いや、もう女の子なのだから女装とは言わないか……? この場合、なんて言うのだろう。今のところ、利便性と服に興味がない性格とが相まって、ただの男物の魔法使いのローブを魔法で縮めた物を着ている。いずれは女子向けの服を着ることになるかもとは思っているが、正直未だに抵抗がある。


 もう歳も歳だしな……いちいち服ではしゃいだりもしないし。


「でも、エウロ様には好きにしていいって、言われてから~」


 と、アファレはまだ粘ろうとする。無駄だ、そもそも服に関しては、私が首を縦に振らない限り着替えさせることはできない。目の前での奇行が目立つ彼女でも、力尽くで服を脱がすなんてことはしないだろう。普通に犯罪だ。じじいの体だった頃でも犯罪だろうが、TSした今は数倍犯罪だ。


「好きにするのは構わないが、私は着替えるつもりはないぞ」

「え、好きにはしていいの?」

「まあ……常識の範囲内で。あと、雑誌作りの本命を忘れなければ、ご自由に」


 と、答えると、アファレはどこからともなく魔導書を一冊取り出した。なんで? というかこいつは四次元ポケットでも持っているのか? 服といい何といい、どこから持ってきたんだよ。


「一応確認するけど、ルーチェちゃん、自分から着替えるつもりはないんだよね?」

「ああ、毛頭ない」

「勝手に服が替わる分にはいいよね?」

「え?」


 えっ、と言ったときにはもう──体を包む感触が慣れないものに変わっていた。下を向いて自分の体を見れば、黒を基調としたゴスロリの服に身を包まれている。瞬きすらしていないというのに、まるで時間が飛んだかのように、いつのまにか。さっきまで着ていたローブは、先ほどまでゴスロリ服のあった地面に寝かされていた。


「え、なぜ? まさか、アファレ、その魔導書は──」

「『着替えの魔導書』だよ!」

「不意打ち過ぎるだろ! どっから手に入れたそんなもの!」

「実家が服屋さんでね~、こういう魔導書には詳しいんだよ~」


 なぜそんな人間が魔法協会で働いているんだ。どう考えてもこんなところで使うための物じゃないだろ。


 前世の分、異世界の分を含めて、ゴスロリ服など初めて着たが……異常に慣れない。違和感がすごい。なんか、着てはいけない服を着ている気がする。この場にはアファレとスィレンしかいないというのに、極めて恥ずかしくなってきた。


「あ~! 超カワイイ! 顔まで赤らめちゃって!」

「う、うるさいわ! 生まれて初めて着たわこんなもの!」

『良き』


 アファレだけでなく、スィレンまで感想を書いて見せてくる始末。ついでに、スィレンは写真の魔法書を使い、何枚か取っていた。完全に黒歴史として残ってしまいそうだ。


「この調子でどんどんカワイイを集めていこうねぇ~、ルーチェちゃん!」

「うるさい! お前は何をしにきた! 仕事を思い出せ!」

「雑誌でしょ~? 雑誌を読みたくなるような写真を撮るのも仕事のうちだから~」


 それはそうなのだが、そうではない!


 ◇


 結局、ありとあらゆる服にアファレによって強制的に着替えさせられ、スィレンに写真を撮りまくられ、とてもお嫁には行けない感じになってしまった。嫁に行くつもりなどないが、なんか悔しい。スィレンもあまり表情の変わらないタイプなはずなのに、どことなく楽しそうに見えた。人の体で遊びやがって。


「じゃあ、今度は雑誌のための内容を考えていくね~」

「最初からそうしろというのに……」


 続いて、今度は文章のほうだ。私の写真はもう腐るほど素材があるし、この魔法書店、建物自体の写真などは急がずともいくらでも取れる。建物は逃げも隠れもしない。ならば次に重要なのは、内容そのもの。


 順序立てて考える私の服は、最初の服……ローブではなくゴスロリ服の方に戻っているので、威厳など全くない状態である。まあTSして以降、威厳など消え去ったので今さらではある。


「でも~、ルーチェちゃんが魔法書店を始めるまでと、それからの話は私もだいたい知ってるから、良い感じの原稿書いちゃおうか?」

「おっと? できるのか?」

「うん~、良い感じにまとめられるよ~スィレンが」

「お前じゃないのかよ」

「適材適所~」

『(*´▽`)ノ 』


 スィレンもアファレの提案に賛成?のようで、陽気な顔文字で答えている。待て、こっちの世界に顔文字の文化はないだろ。独自に編み出すな。


「最初からずっと聞きたかったんだが……スィレンが喋らないのはどうしてだ? 魔法の影響か何かか?」

「え~と……、スィレンは昔、家族と旅行に行っていたときに、魔物に襲われちゃって……そのときのショックで喋れなくなっちゃったの」


 スィレンの代わりに、アファレが答えた。なるほど、トラウマによる物だったか……。


「そうか……今を見るにスィレンは助かったようだが、家族は大丈夫だったか?」


 気まずそうにするアファレ。今度は代わりに、スィレンが横に首を振って答える。ダメだったのか……。


 魔物に襲われて家族が、という話は、こっちの世界ではよくあることだ。人を買いする存在がそこらをうろついている世界な以上、どうしても避けられないことではある。


「スィレンはどうやって助かったんだ? そのときから、魔法が使えたのか?」

『北の果てから帰る途中のルミエール様に救出された』


 ……申し訳ないが、全く記憶にない。正直、当時は人助けなどしているつもりはなく、たまたま魔物がいたから消し飛ばしただけで、よく言えば当然の事をしたまでであって、いちいち記憶に残っていないのだ。


 助けられた側はそうではないらしく、詳細に記憶に残っているようだ。


『説明するときは旅行って言ってるけど、父さんは医者で、魔物に襲われた人の治療のために、北の果ての近くまで行かなきゃいけない時があって。私のわがままで、一緒に連れて行ってもらったんだ。父の仕事が見たかったから。私も小さいから、父さんだけだと見切れないってことで、母さんも一緒についてきたんだけど……結局、両親とも、ね。それで、魔物に囲まれて後は私一人なところで、ルミエール様が全部倒して私を助け出してくれたの』


 らしい。言われてみればそんなことも……だが、あまり気分のいい光景ではなかったはずなので、あえて意識的に記憶から消したのかもしれない。


『その後、ルミエール様の紹介で、魔法関係の名家に拾ってもらって、魔法の勉強を始めた。けど、もっと早く知れていたら、両親は生きてたかも知れないから。だから、ルーチェが魔法を広めるのに、私は賛成だよ』

「……それはありがたいな」


 正直、そこまで真剣には考えていないので少し後ろめたさもあるが、魔法協会の一職員である彼女が、わざわざ協力してくれる理由には納得がいった。


 ところで、先ほどから長文を書いて見せてくるが、明らかにペンで書いていない。そもそも、この量の文章を書いたら時間が相当にかかるだろうし、一瞬でこっちに見せてくる。それは一体何だ? 


『これは思ったことを文字にできる魔法書と、書いた文字に従って魔法を発動させる魔導書の組み合わせだよ。ペンで書いてるのは説明が面倒な人向けに、素振りだけするようにしてるの』

「高度だな……自分で思いついたのか?」

『ルミエール様のインデックスに似たものを作りたくて、作った』


 それにしたって流石のものだ。魔法の才能がなければそう簡単には作れないし、使えない。魔法の発動には何かしら手順が必要だが、事実上省略して、思うがままに魔法が使えるようなものだ。こういう使い方もあるのか……私は頭が硬いせいで、なんでもかんでも魔法書でごり押そうとする節がある。もっと頭を柔らかくしなければダメだな。


 おっと、つい良い魔法書を見ると意識が引っ張られる。本題に戻ろう。


「じゃあ、中身の文章はスィレンに任せよう。私が書くより、明らかに早そうだしな」

『うん。それで、今の話も、雑誌に載せていい?』

「いやむしろ、スィレンがいいのか?」


 かなり、デリケートな話だったように思う。


『いつか、ルミエール様にお礼が言いたくて。でも、ずっと伝えられないままだったから。ルミエール様がその雑誌?を読むか分からないけど、間接的にでも、お礼を言いたいの』

「……そうか。私は構わないから、後の事はスィレンに任せるぞ」


 ルミエールは目の前にいる……とは、とても言えなかった。


 形式上、ルミエールは隠居中で行方不明、私はルミエールの拾い子どいうことになっているが、このまま放置するのもあまり良くないのかも知れないな。いずれ、私の立ち位置も固めなければ。


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