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最強の大魔法士、TSしてのんびり魔法書店の看板娘になります  作者: 冬葉月
魔法雑誌創刊編

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第15話 大魔法士たちの談話・下

「……何か思いついたようですね。かつて、ルミエールという大魔法士が同様の顔を浮かべた後には、毎度のこと魔法史に一ページが追加されたものですが……。今度は何を思いついたのですか?」


 思案から覚めて顔を上げると、エウロは興味深そうに私の様子を眺めていた。


 私はルーチェなので全然ルミエールではないのだが、きっとルミエールにそんなつもりは全くなかったと思うよ。他人だから全然わかんないけど。


「まあ、まだ単なる思いつきだからな。上手くいくかは微妙だが。雑誌を作ろうと思う」

「ほう……どのようなものですか?」


「定期刊行物だな。決まった期間ごとに発行される大きめの本だと思ってくれれば構わない。雑誌ごとに特定の界隈に絞った情報を集めて、定期的に発行する。今回は、魔法書とその使い方、および周辺知識をまとめて、毎週発行する形式にしていこうと思う」


 毎週にしたのは、魔法書店に魔法書を運ぶゴーレムが、週の決まった日にやってくるからだ。結局、輸送はゴーレムに任せることになるだろうし、それに合わせるのが妥当だろう。


 私の説明を聞いたエウロは納得したようにうなずき、テッラは納得できないようにうなっていた。


「なるほど……性質としては街の掲示板に近いですね。街の掲示板であればその地域の人にとってのみ有益な情報をまとめているように、雑誌では特定の話題のみに絞って取りまとめて形作ると。書き込みを行う人間が一人である点は大きく違いますが」

「でもさ~ルーチェ、それって魔法に興味ない人は読まないんじゃない? 僕とかみたいな、もう魔法を知ってる人しかさ」

「実際そうだな。だからそういう専門誌にならないように、魔法に限らずエンタメ的な要素を多めにしようと思ってるぞ」


 要は、誰が読んでも面白い要素を入れよう、というわけだ。近いもので言えば新聞にある四コマ、雑誌にある謎のクロスワードパズルなど、何でも良いが、極論魔法に一切興味がなくともなんとなく毎週買ってパラパラ見ちゃうみたいな領域にたどりつきたい。


 まずは毎週手に取ってもらえるだけのコンテンツ力を作らねば。まあ、作らねばといって作れるのなら、だれも苦労しないか。


 本格的に流通させるとなれば魔法協会の協力は必須だろう。が、まずはその前に、広く公開する価値があるかどうか、イゾラの人たちに読んでもらわなければ。全く興味のない彼らが興味を示せば、きっと他の地域でも良い効果が得られるだろう。


 そして、原稿を作るに当たって、私一人では戦力が心もとない。一人で編集をするとどうしても内容に偏りが生まれるし、資料集めも十分にできないし、客観的な目線に欠ける。


 というわけで、テッラとエウロには是非とも手伝ってもらいたいのだが……そう簡単に首を縦に振る連中でもない。


 何を交渉条件にしようかな……。二人とも、物になびくタイプではないし……。直接聞くしかないか。


「それでなんだがな、仮に二人に手伝ってもらいたいと言ったとしてだ」

「いいよ」

「え、ウソ!? 即承諾!?」


 テッラは条件を聞くまでもなく良いよと言った。当たり前と言わんばかりの、普通の表情のままである。一方こちらの表情は衝撃の二文字である。なんか、最近素直すぎじゃないか……? そういう時期もあるのかな、女の子には。私もいずれそうなるのか?


「私も協力は拒みませんよ。魔法書の普及が本当に可能なのであれば、国にとって大きな利益となるでしょう。ただし、私が手伝うにあたっては、一つ条件があります」


 まあコイツはそうだろうな。商人気質というか、もらえるものはできるだけもらっておくタイプだろう。むしろ想定内なので、こっちには驚かない。


「なんだ? 私にできることならなでも言ってくれ」

「表紙は、ルーチェさん、あなたにしましょう」

「は? なんで?」


 はい驚きました。予想外です。意味がわかりません。


「面白いからです。というのは冗談で、ルミエールに拾われた謎の少女が、突如として田舎に魔法書店を開き、雑誌と呼ばれる新たな本を作り出したとなれば、表紙にふさわしいのはむしろあなたしかいません。あなたは見た目も悪くありませんし、表紙に適していますよ」


「本音は?」

「まさか。述べたとおりですよ」


『かつての友人が少女の姿になり、その姿があらゆる人に知れ渡るなど、これほど眺めて愉快なことはないではありませんか』


「…………」


「この条件を飲んでいただけるのであれば、魔法書の普及を拒む貴族たちへの説得、および面倒な事務作業の全てを引き受けましょう。いかがです?」


「あまりにもこちらに利益があるな。今回はどんなあくどいことを考えてるんだ?」

「まさか。私も雑誌に載せる題材の一つを思いついたというだけですよ」


 このやろー、スペックは優秀なんだが、性格がアレだな、本当に。いい性格してやがる。あ、褒めてないですよ。


 しかし、あまりにも上手い話であるから、私が表紙になることだけで協力が得られるのなら拒む理由はないに等しい。彼のサポートがあれば、私は雑誌のコンテンツ作りに集中できる。よけいなことを考えなくていい。


 今さら恥ずかしいなどというプライドもない……のか? ただのしわがれた老人ならまだしも、一人の少女として表紙を飾るのに、本当に恥ずかしさがないのか?


 ……なんとも言えないな。そのときにならなければ。


「……わかった。いいだろう。好きにすると良い」

「了解しました。私のほうでも準備しておきますので、ルーチェさんの作業が終わりましたらまた声をかけてください。では用事ができましたので失礼」


 と、エウロは話が終わるや否や席を立ち、ツカツカと歩いて店を出ていった。一体何を企んでいるのやら。


「で、僕は何をすれば良いの?」

「先に聞いてしまったが、テッラに頼み事をするのはもう少し後だ。また別の日に呼んでもいいか?」

「おっけー。あ、あと、ししょーに会えたら僕に教えてね~」

「わ、わかったぞ、もちろん」


 鏡を見ればいつでも報告できるが、そういうことではない。


 ともかく、肝心のものが作れなければ始まらない。創刊号となる最初の原稿を作らねばな。できる限り、興味のない人にも手に取ってもらえるくらいの面白い物を。


 書くべき内容は、魔法書の扱い方、文字の読み方の二つをベースにして、後は王都の流行や人気の店など軽い話題を含めて専門性を薄める。


 残りは四コマ漫画とかのおまけコンテンツで埋めていこう。エウロが思ったより乗り気になっているみたいだし、細かい事務作業は彼にまかせて、私はメインコンテンツを集めていこうか。

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