8鬼 順調
「ハァハァハァ!…………し、死ぬかと思った!!」
「プ、プルプル!」
意気揚々とダンジョン攻略をしようとした俺とダスト。
しかしここで俺たちは大きなミスをしてしまった。主に俺の責任なんだが、
「このダンジョン、全然初心者用じゃない!」
難易度があまりにも俺たちには高すぎたんだ。敵が強すぎて危うく死ぬところだったな。
こっちの攻撃は効かないし、向こうは一撃で俺たちに大けが負わせて吹き飛ばすし。まともに戦えるわけがないという状況だった。
「圧推のやつ、自分があそこで暴れたいからって適当な場所に置きやがったな」
俺の確認不足が大きな問題なのだが、全部の責任は負いたくないのでとりあえず圧推のせいと言うことにしておく。
ここまで運んできたのは圧推だからな。
「唯一の救いは、収穫が0じゃなったことか」
危ない場面は多かったが、それでも俺たちは俺たちなりに頑張った。
収穫もあるにはあって、宝箱を開けられたりしたんだ。
初心者用の難易度だとそういうことはないんだが、ある程度難易度が上がれば入り口近くに宝箱が設置されていることなんてざら。
逆にそこまで挑戦できるようになったころにはあまりありがたみも感じないんだろうが、
「ちょっと品質の高いポーションに毒を付与できるっぽい短剣。結構おいしい収穫だったな」
「プルッ!!」
俺たちにとってはかなり貴重なアイテムだ。
ポーションに関してはまだしばらく使いどころはないだろうけど保険として持っておいて悪くはないし、短剣に関しては段違いな性能になるから今後の攻略がかなり楽になる。
「多分、さっき手に入れた剣よりも攻撃力高そうだよな。短剣って、そこまでダメージ出る武器じゃないはずなのに」
攻撃力も高く毒まで付与できる。良いことづくめにもほどがあるよな。
ここまでいい武器を持っていしまうと使いたくなるもので、一周と言っていたけど絶対に3週くらいしてきただろう圧推に文句を言いながら乗って、今度こそ安全なところに向かうとすぐに俺たちはダンジョンへ突入して攻撃を始める。
「さすがにこの程度の相手なら無双できるか。きっとレベル差と武器の性能でごり押しできてるんだよな」
「プルッ!!」
俺の短剣の攻撃はまさに一撃必殺。
たいしてダメージなどないんじゃないかと言うような小さい傷でも、それを作ることさえできればゴブリンは即死する。
毒と言うより、短剣の出したダメージの数値だけでHP(という概念があるのかは分からないけど)が吹き飛んでいそうだ。
「ダストも消化系のスキルのレベルが上がってるから倒す時間が速くなったか?」
「プルプル」
ダストは俺とは違って圧推の暴走によるレベルアップなんかはしてないんだが、それでもゴミ処理などによってスキルのレベルが上がった影響か以前よりも少し早く敵を倒せていた。
それは良い事なんだけど、ジワジワ倒す速さが速くなっても結局溶かして倒していることは変わってないからグロさも変わらないんだよな。
正直勘弁してほしい。
「もう体当たりのダメージすら使わずに溶解だけで倒そうとしてるし…………凶悪さが増してないか?」
倒していくごとにレベルが上がって行って余裕が生まれたのか、どんどんその敵の倒し方は視るのがツラい物へと変わっていく。
段々スライムの癖にパワーも上がっているみたいで、ゴブリンの腕とかを縛ると完全にそれを動かすことができなくなってしまう。
そしてその動かないものを溶かしていって、と拷問かと思うような倒し方をしているぞ。
「ダンジョンも余裕で攻略できるし、これはもう脱初心者と言ってもいいのでは?」
「プルプルッ!」
調子に乗っている自覚はあるけど、それでも自分の実力がより高まってきていることを感じ取っているんだから仕方がない。
攻略を何度か繰り返して圧推が迎えに来た頃にはかなりの量の素材やアイテムが集まっていた。
圧推の持ってきた分を合わせるとそれなりの分量になるわけで、
「これは、売却すれば金額になりそうだな。しばらく続けていれば、そのうちもう少し土地を買えるくらいの金額にはなるんじゃないか?」
「おぉ!そいつは何より。あっしも頑張った甲斐があったというものでさぁ」
なんとなく探索者としての道が明るくなってきた気がする。
さすがに10年くらいはかかるだろうけど、それでも今のまま進めたっていい具合に金を稼ぐことはできるだろうな。
もちろん、今のままで進めていくつもりはないしもう少し難易度の高い場所に挑戦したっていいから、下手をすれば1年以内での土地の追加購入とクランハウスの増築も夢ではないかもしれない。
「そういうことなら、仲間ももっと増やしていいな。テイムするモンスターも何が良いか検討してみるか」
まさに順調。非常に順調。
天が俺に味方してくれていると言ってもいい。
まさかこんな簡単い稼げて生活を立ち行かせるめどが立つとは思わなかった。
探索者、最高だぜ!!
なんてことを思いながら帰宅したところ、玄関で座敷童のモベヤに出迎えてもらったところで、
「あっ!モベヤお姉ちゃん!!」
「あら?増華?」
俺たちは全く気付いていなかったが、近くから声が聞こえてきた。
そっちを見てみればそこにいるのは妖怪ではなく人間だったのだが、俺は血の気が引いて行くことを感じた。




