53鬼 デュラハン
2回の攻撃によって、デュラハンは大ダメージを負った。
その傷の事を考えれば倒せたと確信できる。
しかし、
「嘘だろ?まだ動くのかよ」
「これが格上かぁ」
それでもまだデュラハンは動く。
立ち上がろうと手を伸ばし、
「いや、限界だったみたいだな」
「びっくりした。さすがにそうだよね」
さすがに難易度の高いダンジョンのボスと言えど、大けがをすれば限界が来る。
立ち上がることはかなわず、途中で力尽きることとなった。
とは言ってもまだ息絶えたわけではなく、更には諦めた様子もなく何やら手を動かしている。
下手に放置をしていると魔法とか使ってきそうだ。
「あの様子なら俺の持ってるアイテムでも対応できそうだが…………い、一応やってみるか。『テイム』」
「ちょっと、ボス。それはあまりにもじゃない?」
この行動は、俺も油断をし過ぎているようにも思える。
相手は格上なんだから、一切心を緩ませることなくとどめを刺すべく動くべきだとは思ったんだ。
だが、それでも俺の口は動いてしまった。
とは言ってもそれだけでは終わらせずすぐに仕留めるためのアイテムを追加で使おうとして、
「ん?成功した?」
「えっ!?本当に!?」
「うぇ!?…………ちょっとっと!?危うくとどめ刺すところだったんだけど!?」
俺の言葉で慌ててとどめの一撃を鎧の合間を縫って入れようとしていたメリーが手を止める。
皆信じられないという顔をしているが、1番ビックリしたのは俺だ。
幾ら弱っているとはいえど、俺とのレベル差があるのに成功するとは思わなかった。
「宝箱まで出てるし。本当に成功したんだ」
「最後がこんなので良いわけ?強い仲間が手に入ることに文句はないけどさぁ」
俺の言葉の正しさは、ダンジョンのボスを倒したあかしともいえる宝箱の出現により裏付けされた。
まだデュラハンが動ているのに討伐の証が出てくるということは、『テイム』が成功した以外の選択肢を考えられないからな。
「な、なら、早く回復してあげないと!ここまで傷ついてたら放っとくと危ないでしょ!」
「あっ、やべぇ。ここまでレベル高い奴の回復ができるようなポーションなんてあったか?」
「あぁ~。マズいよ!どんどん腕の位置が下がってきてるぅぅ!!」
そういえば俺でもテイムできるくらいには弱らせてるから、放置しておくと危ないんだった。
と言うことで、急いで回復に取り掛かる。
一応買っていたお高めのポーションなども惜しまず使っってみたのだが、一切傷が癒える様子はなく俺たちのポーションを放出するだけでは足りないと感じてしまった。
が、
「ん?ダスト?何を出してきたんだ?…………って、それは激ヤバ探索者の持ち物か!?その中になら良いポーションがあるかも!」
せっかく強い仲間を手に入れられたのにと頭を抱えていた俺たちだったが、なんとダストが希望をもたらしてくれた。
ヤベェ探索者の持ちものを事前に奪っていてくれたため、まだそこに品質の良いポーションが残っている可能性があるんだ。
「さすがに大量に使い込まれてるが…………あった。ポーションだ!」
「貸して!使うから!」
俺がやればよかったんだが、わざわざメリーが俺の手からポーションを奪い取り転移によって近づいてそれを書ける。
さすがにあの探索者が持っていたものなだけはあってかなり俺たちが持つものよりも良い物らしく、
「おぉ~。傷がふさがってる」
「これだけの回復量があるってことは、これが必要なくらいHPが多かったってことだよね?よく私たち勝てたよね」
何とか危ないところからは持ち直せた。
追加で3個ほどかけてやれば、完全に見かけ上は回復した様子となる。
「さすがに鎧の方はどうにもならないか…………ただ、今はこの鎧よりもボロボロなものがあるからな」
鎧などまだ気になる点はあるが、俺は一旦そこまででデュラハンに何かをするということはやめる。
そこから視線を移して、もっとひどい状態のものに目を向ける。
「あぁ。廻場…………」
「ひどい姿になっちゃったね」
ぼろぼろの和傘。
デュラハンを倒せたからと言って、ポーションでも治せなかったそれを今なら治せるようになったのかと問われると当然そんなはずもない。
もうその和傘は動くことすらなく、
「いや~。もうそれは暫く使えなさそうっすね!補修とかしてくれる人がいたらいいんすけど」
「本当だよな~」
「ねぇ~」
代わりに別のところから廻場の声が聞こえてくる。
それは増華の手元からであり、
「まさか、廻場が実は刀だったなんて思わなかった」
「いや~。言う機会を逃してたっすけど、実はそうだったんすよねぇ。それに、オイラしか前を張れるメンバーもいなかったので、ひぇんなことはせずこのままにしておいた方が良いかと思ってたんすけど」
「だからって隠さなくてもいいじゃん。こんなに強いならもっと早く言ってよぉ!」
廻場は、なんと唐笠お化けなどではなかった。
その本体は中に隠されていた刀であり、傘を動かしていただけだったのだ。
要するに、和傘を使った仕込み刀だったわけだな。




