51鬼 やけくそ
絶望的で諦めるしかないとは思う状況なのだが、少しまだあがかせてもらうことにした。
幸い階段はセーフティーゾーンとなっているため攻撃もこないし、作戦会議はいつまででもできる。
「とりあえず、できることを話し合うぞ」
「できる事って言ったって、アタイたちにできることはそう多くないでしょ。もう全部知ってんじゃない?」
「メリーに関してはまだ転移能力に隠された部分があるかもしれんだろ。だが、それ以上に何かあるかもしれないのは増華と廻場か。1番まだ手札を切れそうなのは増華だとは思うが」
「私?なんで?」
「滅魔士として教わった術、俺たちにすべて見せたわけじゃないだろ?もしかしたら、敵によっては通用する術とかあるかもしれない」
「えぇ?そんなに都合のいい物はないよ。ほとんど全部私が教わったのは妖怪に対してしか効果のない物ばっかりだから。最低限自己強化はできるけど、それももう全部見せたことあるしなぁ。多少はこの場所なら力を開放してもバレないから普段より強化倍率はあげられるけど、それでも限界があるよ?できて普段の5倍かな」
「思ったより出せるけど、それでも難しいっすね。敵の強さは普段の5倍じゃ足りないみたいっすし。姉御の剣の一撃が最大火力ではあるっすけど、それでも5倍では厳しそうっすよねぇ…………」
「俺の持っているアイテムの中に一時的に攻撃力を倍にする者はあるが、それでも10倍。まだまだ届かないな。100倍行けてようやく最低ラインに立てるかどうかってところなんだが」
普段出していないものはある。
だが、そのどの手札を切っても勝てるビジョンは見えてこなかった。
「弱ったな」
「さすがにこの実力差はどうにもならないでしょ。確かに私が感知した限りでも敵は1体しかいないから最下層なんだろうけど、上の方の数とかとんでもないよ?私たちじゃどうにも出来なさそうな数がうようよしてる。それを超えた先にいるボスなんだからどう頑張っても無理でしょ」
「厳しそうっすねぇ。オイラも昔見たことのある凄そうな呪いの札とか持ってこれてれば使えたんすけど」
「それ、触った時点であんたは消滅するんじゃない?それか、乗っ取られるか」
全員もうあきらめムードだ。
となるともうやけくそ状態となって、
「メリー。頼む」
「はいはい。ちゃんと注意は引いておいてね」
やることはある意味いつも通り。
今回は偵察を目的とするが、できるならメリーに仕留めてもらおうと俺たちが気を引き向こうの背後に隙を作るつもりだ。
「敵とご対面…………へぇ?人型か」
「首がないから、デュラハンとかかな?」
「倒したら持ってる武器とかをドロップしてくれるんすかねぇ?」
階段を抜けた先に居たのは、首のない騎士。
所謂デュラハンと言うやつだと思われ、
「ッ!?速い!?」
「もう来るんすか!?」
俺たちが準備している時間は与えないとばかりに、突撃をしてきた。
唐笠お化けの廻場が慌てて注意を引きつけるが、あれはかなり対応に苦労しそうだな。
「えいっ!」
だが、そうして廻場を狙ってくれるタイミングで足が止まるため、メリーも攻撃するチャンスが生まれる。
先ほどまでは突進が早すぎて背後に回り込んでも攻撃する前に引き離されてしまっただろうが、今なら止まってくれているからそのようなことは起こらない。
首がないため明確な急所であるそこを狙うことはできないが、丁度そこに防具がないことは確かだから、
「ッ!?ナイフが!?」
やってやったとメリーが喜んだのもつかの間。
使ったナイフはドロドロに溶けてしまっていた。
これでは本当に刺すことができたのかどうかすら怪しく思えてしまう。
ただそれに俺たちが驚いている暇はなく、
「メリー!離脱しろ!」
「あっ、マズッ!?」
俺が声をかけた後すぐさまメリーは思い出し転移をするが、それもギリギリだった。
転移を発動する前に剣は振られ始められていて、メリーは腕の一部を切られながら戻ってくる。
「痛ぁぁぁいっ!!!???」
「落ち着け。ポーションを使うからちょっと待ってろ。そこまで深い傷じゃない」
メリーは騒ぐが、正直それに付き合ってる暇はない。
メリーが戻って着たら終わりと言うわけにもいかず、
「増華。吹き飛ばせ!」
「うん!」
「オイラもサポートするっすよ!!」
まだ廻場の近くにデュラハンはいる。
それをどうにか引きはがさなければ逃げることもできないため、増華の火力で吹き飛ばしてもらってから逃げることにした。
幸い向こうもメリーの転移を警戒してか注意が緩んでいたため、増華の攻撃はヒットさせることに成功。
狙い通り吹き飛んでいった。
「うおぉぉぉ!!!!逃げろ逃げろ!」
「やってられるかぁぁ!!!」
「これはもう無理っすよぉぉ!!!」
「先にアタイのけがを治せぇぇぇ!!!!」
皆全力で走り撤退しようとはする。
だが、
「無理かも!向こう速い!」
「もう距離だいぶ詰められたのかよ!」
敵の速度の方が圧倒的に上。
どうにか安全圏である階段まで戻って行けるかと言うギリギリのところで、
「っ!?マズい!魔法が来る」
デュラハンが初めて、武器での攻撃以外のものを使ってきた。
その手から放たれた黒い球は俺たちの足元近くに着弾し、
「ぐわああぁぁ!!!???」
「廻場!?」
廻場にその魔法がかすり、吹き飛ばされる。
そしてそのまま、俺たちは階段へと転がり込んでいった。




