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43鬼 ブラッドオーシャンズ

圧推のそれなりに速度を出した状態での直進を、生身で受け止めて見せた大男。

まだどんな相手なのかは分からないが、俺が限界を迎えたところを見てしばらく待ってくれる辺り必ずしもこちらを仕留めたいわけではないと言うことが分かった。

そこまで殺意が強いわけでないのなら、話し合いでどうにかなるかもしれないという希望が持てるぞ。


「…………待たせたな。それじゃあ、話を聞こう」


「おう。俺様の名前は、吾久能租(あくのそ)雨水(うすい)。クラン『ブラッドオーシャンズ』のトップを務めている」


「『ブラッドオーシャンズ』?」


相手の名乗りに、いつの間にか車から降りていた増華が首をかしげる。

どうやら増華は知らないようだが、俺はその名前を色々調べている時に見かけていて、


「ブラッドオーシャンズ。この国で3番目に大きいとされているクランで、あまり柄の良くない連中が所属してると言われてるクランだな。悪いうわさが絶えないところだ」


「おいおい。それを俺様の前で言うのかよ…………まあ、間違っちゃいねぇけどな」


ニヤリと笑って見せる大男。

その表情は、獲物を見つけた猛獣の物のように見えなくもない。


「それで?何でそんな後ろ暗いクランのトップがわざわざ俺の前に出てきたんだ?特に目を付けられることなんてした覚えがないんだけどな」


ここまでの反応からも少し情報は出してもらえそうなので、今のうちに1番聞いておきたいところを聞いてみる。

これで、俺たちの誰かをさらう依頼を受けているなんて言う話が出たら困るが、


「俺たちのクランのひよっこ部隊がいくつかやられててな。その少し後から急に頭角を現し始めたのがお前らで、何も繋がりがないとは思えないってことだ。ユニークスキル持ちの貴重な人材を次々襲って行ったこと、お前らの記憶にもあるだろ?」


お前たちが犯人なのだろう。

そういわんばかりの言葉を投げかけてくる大男に俺たちは、


「え?それってもしかして、あの人たちが犯人なんじゃ」

「おい!増華、やめろ!」


俺が何か言う前に、増華が口を開いてしあった。

思い当たる節がありすぎるから仕方ない事ではあるが、できればやめてほしかったな。


「え?だって、私たちが犯人じゃないんだよ。犯人っぽい人がいるんだからそっちを教えてあげれば解決なんじゃ………」


「それが、本当の話だったらな?もしかしたらこいつとあいつらが裏でつながってて、あいつらの秘密を俺たちがつかんでないか探ってきてる可能性だってあるだろ」


「あっ…………ヤバいね」


「ヤバいだろ?発言には注意してくれよ」


今更感がものすごいが、一応注意はしておいた。

それから大男の顔を見てみれば、


「お前たちではないか。だが、何か知ってるみたいだな。吐いてもらうぞ」


「俺もう吐いた後なんだが」


「そういう意味じゃねぇよ」


とりあえず俺が危惧したような繋がりはなさそうだ。

ただ、油断はできないな。これすらも演技の可能性があるから(それに意味があるのかは別として)。


「話す?」


「話すしかないだろ。そうしないと、俺たちの命が危ういぞ」


「だよねぇ」


俺たちに話さないという選択肢がないことを確認しあい、大男に事情を説明していく。

俺たちが出会った、相手のスキルを奪うことができるというユニークスキルを持つヤベェ探索者の事を。


「そんな奴が?にわかには信じられねぇが…………ただそういえば、殺されたやつの1人が持っていたユニークスキルによる効果と同じ様な攻撃の跡を見た奴がいたな。気のせいだろうと考えていたが、意外とそうでもないかもしれねぇか」


「可能性は高いんじゃないか?こっちも情報の出所は明かせないから、そっちにとっては信用しきれるかどうかは分からないが」


「そうだな嘘だった場合はお前らを全員血祭りにあげるから覚悟しとけ?」


「勘弁してくれ。俺たちは知ってる情報を喋っただけだぞ?そこまでするのは、情報屋だとかそういう連中にしてくれよ。その様子だと、情報屋は俺たちのことくらいしかロクな情報を出せてないんだろ?」


「…………まあな」


どこか忌々しいとでも感じち得るような様子で反応が返ってきた。

何か情報や関連で問題が起きているのかも知らないな。


「ということで、話したし俺たちはこのまま帰っても良いか?」


「ああ。良いだろう…………そういえば、下っ端が襲って悪かったな」


「ああ。別に気にしてない」


良い経験値になったしな。

そう言いそうになって、口をつぐむ。

そして変なことには感づかれないように、


「カーチェースなんて人生で初めてやったし、いい経験になった。二度とごめんではあるけどな」


「そうか…………お前らをダンジョンの中で襲おうとした奴らとかいたんだが、そいつらとは会ってないのか。もし相手して命を奪っているっていうのなら、報復しなきゃいけないところだったんだが」


「おいおい。カマかけてきてたのかよ。勘弁してくれ」


俺は自分の選択が間違っていなかったことを悟る。

俺が口をつぐんだ理由がこれなんだ。こいつなら、自分の部下に手を出した時点でアウトだとか思ってそうだったし。


増華は、向こうからは見えないようにこそしているが、変なこと口走らなくて良かった~と言いたげな表情をしているぞ。


「…………とりあえず明日までに情報を集めてくる。好きに行動して構わねぇが、もし犯人がお前らだった場合は、覚悟しとけよ?」


「ああ。そうじゃないことは確かだから、気楽に待てそうだ」


「ハッ。そうかよ」


大男はそこまで言うと、俺たちに背を向けて去っていく。

もちろん歩いて行くとかではなく、ジャンプしてどこかに消えていった。


「脚力凄いな」


「どんだけレベルが高いんだろうね?さすがは大手クランのトップ」

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