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41鬼 カーチェース

襲われた俺たちだったのだが、てっきり襲われたのは俺たちだけだと思っていた。

しかしそれ以外にも襲われた相手がいて、


「まさか、お前まで襲われるなんてな。これは予想外だった」

「そうだねぇ。私たちがいないからチャンスだと思ったのかな?」


「いや~。ボスたちもお疲れ様でさぁ~。あっしもなかなか苦労しやしたよ」


火車の圧推。

こちらの方にも、襲ってきた奴がいたらしい。

ただ、圧推の方もどうにか切り抜けることができたようだ。


「いや~。監視カメラのある所に逃げそうになりやして。見られないようにしながら轢くのが大変だったんでさぁ」


「へ、へぇ」

「それは大変だったな…………うん」

「苦労したんすね」


俺たちには共感しにくい事を言っているが、とりあえず苦労したのだろうことは間違いない。

否定せず労っておくことにしよう。


「遺体とかはどうしたんだ?」


「ああ。そこはあっしも困っておりやして。さすがに放置はマズいんで、回収したんでさぁ。今もほら、トランクの中に」


「嘘だろ!?」

「私たち、遺体と一緒に車に乗ってたの!?」

「ちょ、ちょっとなんだか気分が悪く………」


まさかの事実が発覚した。

圧推は殺した人間をどうして良いか分からず、とりあえず道はきれいにして遺体は中に入れてしまったそうだ。


「ダスト。急いで消化を頼む…………そういわれると何だか臭いも気になる」


圧推も襲われたという話を聞いて慌てていたから気付かなかったが、落ち着いてくると臭いの違和感に気づき始める。完全に不快感を感じてしまう前にダストに消してもらおう。


「とりあえず今日はこのまま帰って対策を考えないとな」


「…………ボス。そうもいかないようでさぁ」


「は?なんでだ?」


「後ろから何台か似たような車が。どうやらこっちを追ってきているようで。(やっこ)さんのお出ましでさぁ」


「嘘だろ。勘弁してくれよ」


これで終わりとはいかないらしい。

確かにバックミラーを見てみればいかにもな黒塗りの同じ様な高級車が追いかけてきており、少し周囲に視線を向けてみればこちらを取り囲もうとしているようにも見える。


「少し飛ばしまさぁ。しっかり捕まっておいてくだせぇ」


「え?ちょっと待って…………ギャアアアァァ!!!????」

「な、なんかオイラの体が今浮いたっすよぉぉ!!!??」

「ノォォォォォォ!!!!?????」

「相変わらず荒い運転しやがる」


圧推が速度を上げ、初めて圧推の激しい運転を経験した面々から悲鳴があがる。

俺もダンジョンでモンスターを圧推が轢いて回るのに付き合って以来だから、まだ完全に慣れきってはいないな。


「できるだけ誰にもかけないようにするから、何かあっても勘弁してくれ」


「ボスが覚悟の決まった目をしてる!?」

「もう戻してしまうのは前提なんすね!?」


「や、やめてくだせぇ!せめて外に出てそういうのはしてもらわないと困りまさぁ」


「うるせぇ。我慢なんてしてられるか」


圧推からも悲鳴が上がったが、俺は気にしない。

やりたくなったらやってやる。


だが、俺がそう思い他の連中が悲鳴を上げるくらいには速度を上げただけはあって、


「どうにか包囲は抜けられたっぽいね」

「さすがに見えないほどにまで引き離せてはいないっすけど、それなりに距離は開けられたしこのままいけば逃げきれそうっすね」


「…………廻場。それをフラグと言うんだぞ」


「え?オイラ、何かやっちゃったっすか?」


残念ながら廻場はやってしまった。

それが分かるのは数秒後の事で、


「っ!?今度はバイクが横から近づいてきてるよ!?あと、なんか大型車みたいなのが前をふさいでるっぽい!」


「うげぇ。逃げられたと思ったんだけどな」


「誘い込まれていたみたいでさぁ」


敵の数と情報収集能力、そして連携は相当な物らしい。

圧推も自身が車であるためかなり人の運転する車とは格が違うと言って良いような運転テクニックを持っているはずなんだが、それでも確実に追い込んできやがった。


これは絶望的かと思われるんだが、


「でも、安心してくだせぇ。この程度、どうにでもなりまさぁ」


そう自信満々に言ってみせた圧推は、自分の体を横に向けた。

その先にあるのは、


「ぶ、ぶつかっちゃうよ!?」


「ご安心くだせぇ。通り抜けられまさぁ!」


「う、嘘だろぉ!?」


向かう先にあるのはガードレール。

そしてその先にあるのは、急な崖。


圧推は車体を傾け無理矢理片側を浮かせて、細いガードレールの隙間に入って崖へと落ちていく。


「調べた情報によれば、ここは走れる斜面になってるんでさぁ」


「それ、走れるって言おうのか!?ただ斜面にタイヤがくっつきながら滑り落ちているだけな気がするんだがぁぁ!!???」


さすがにこれには俺も悲鳴を上げる。

車内で見な騒がしくしながら、追ってから逃れるように斜面と圧推は主張する崖を下っていくのだった。


「だが、これで無事に行けるならさすがに逃げられるよな」

「こ、今度こそ安心して良いんすよね」


「…………うぅん。言いづらいんだけど、バイクが何台か下って追いかけてきてるかも。まだ無理そう」


「…………しょ、正気かそいつら。圧推だから行けたところだろ?」


「うん。さすがに何台か、というか、半分以上は失敗してるっぽい。けど、10台くらいは無事かな」


「そんなに犠牲を出してまでこっちを狙うのか?いったい何が目的なのやら…………」


まだまだ俺たちは逃げ続けなければいけないようだ。

今日はなかなか刺激的な1日だな。

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