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38鬼 対人戦

ちょっと唐突すぎるかと思いつつ

模擬戦は偉大である。

そう俺は実感することになった。


「まさか、ここで襲われるとは思わなかったっすねぇ」


「こいつら、何だったんだろうな?」


「人に襲われるとは思わなかったねぇ。さっきまでの戦闘でアドレナリンがどうにかなったけど、罪悪感が凄い」


「一番増華が堪えてるじゃん。意外かも」


俺たちの視線の先にあるのは、いくつかの死体。

それらはすべて、新鮮な人間の死骸だった。


こいつらが突然襲い掛かってきたから、返り討ちにしたんだ。

本当ならば捕まえてギルドに突き出すという手もとれたしその場合は色々と得られるものもあったのだが、俺たちはメリーの転移や廻場のことなど隠したいことが多すぎたから全員処分させてもらった。


「近くに人はいなかったから組織的な犯行ではないと思うけど」


「そうか。とりあえず、増華はしばらく休んでろ。術で敵か人かが近づいてきてるかだけ確認してくれればそれでいい」


「分かった…………ごめんね」


「気にすんな」


初めて、人に自分で手を下した。

それが意外と精神的にきつかったようで、増華は顔色が悪い。

逆に、俺を含めた妖怪のメンツはたいして気にしてないな。個人的には、廻場も今までそういう経験があるだろうしメリーだって人に害をなすことを目的としている怪異だから大丈夫だと思っていたが、俺までショックを受けないことは意外だった。


「結局、うまくまぎれられていても所詮妖怪は妖怪か」


「別に悪い事じゃないんじゃない?襲われて躊躇するより何倍もましでしょ」


「まあな」


増華はしばらく戦わせるのは心配だし、スライムのダストに死体の処理(証拠隠蔽)もしてもらわなきゃいけないからしばらく待機することにした。

襲ってきた奴らは探索者だからダンジョンのモンスターと散って死体も残らないし、ダストもご満悦な様子でほおばっている。


「これで、人の味を覚えたりしないと良いんだが」


「そうなったら結構怖いっすね…………でも、ボスは妖怪っすし、人とは違うから大丈夫じゃないっすか?ボスも自分でそんな感じの事言ってたっすよね?」


「確かに…………ダストが人と妖怪の区別をしてくれれば俺は襲われずに済むかもな」


廻場が上手く返してきてくれたので少し笑ってしまった。

ただ、ダストの事は心配なんだよなぁ。

変な方向に進まないことを祈るばかりだ。


「でも、オイラたちよく損害なく勝てたっすね。格上っぽい雰囲気だったので不思議っす」


「そうだな。増華の術がなければ気付かなかったし、相当高度な隠密能力を持っていたはずなんだが…………メリーの転移が上手くハマったのか?」


「ふふふっ。アタイのお陰ってわけだね!感謝しろぉ!」


「おお。感謝してるしてる」

「してるっすよ~。超感謝してるっす~」


「全然心がこもってな~い!!」


当たり前だが、探索者と言えど転移してくる相手の対処法なんて持っていなかったらしい。

さすがに一撃で仕留めるということはできなかったが、首のような急所にがっつりキズを作ることができたからその後の対処は楽だったな。


「麻痺とか毒は効いてなさそうだったから、そっちはまだまだ足りてないってことだよな」


「そうっすねぇ。逆に向こうの動きは読みやすかったっすから、もう少し強いくらいの相手でもオイラは前を張れるっすよ」


「それは頼もしい限りだな」


廻場はまだまだ余裕があるという様子だが、正直今回廻場に余裕があったのは唐笠お化けと言う存在を認知していなかったからだと思う。

知識としてあったかどうかはともかくとして、ダンジョンのモンスターにもこんな風な傘のものはいないだろう。

戦いなれないだろうし、気味が悪いと感じたはずだ。


「俺も何発か貰ったが、飛び道具なんかはソーが安全に無効化してくれてた。やっぱりリビングメイルに守ってもらうことは大切だな」


俺や増華のダメージはほとんどない。

リビングメイルがマジで有能過ぎる。


なんてことまで話していたら、


「あっ、マズいかも、人が来た」


「人か…………一応あいつらの仲間の可能性を考えておいた方が良いか?」


「そうかもしれない。私もだいたい持ち直したし、逃げようか」


「そうだな。それが今は1番か」


増華によれば、人が近くまで来ているらしい。

さすがにまだ全てをダストが消化しきれず体内にため込んでいる状況なので、俺たちは証拠を見られないように移動することにした。


「ダストは俺が抱えていくから、戦闘をやる時にはメリーと廻場に任せる。増華は、人から離れつつ、敵の少ないルートを選んでくれ」


「了解。頑張る」


ダストも大きくなってきたことで重量も増しており、抱えるには両手を使う必要がある。

俺はアイテムなどを使うことが不可能なため、他のメンバーに諸々は任せることにした。


その次の瞬間だった。


「…………っ!?ボス!危ない!?」


「え?」


突然の声に混乱する俺。

すぐに周囲に視線を向けると、剣が俺の目前まで迫っているのが見えた。


「ッ!?」


マズい。

躱せな、い……

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