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36鬼 模擬戦

「ボス、覚悟ぉぉぉ!!!」


「奇襲するのに声を上げてんじゃねぇよ」


「ふぎゃっ!?」


平日。

増華が学校に行っていない昼間に、俺とメリーは争っていた。

とは言っても本気ではなくあくまでもケガなどをしないように配慮した模擬戦であり、


「とどめまで持ってい行くのが難しいな。あまり何回もやられると何かの拍子にミスをするかもしれないし、時間をかけてられない」


「それはこっちだって同じだよ。アタイもそっちのミスを待つしかないけど、そうするにはかなり積極的に攻めていかないといけない。激しく攻めればこっちのミスだって増えそうだし…………」


メリーと俺はどちらも決定打に欠ける状況となっていた。

背後を取られるというのは予想しているため向こうの転移に合わせて反撃をすることはできるが、完璧に位置を掴めるわけではないからどうしても決めきれないんだよな。

防がれたり避けられたり、当たったとしてもそこまで流れを大きく変えられるようなほどにはならない。


「なら、今度はこっちから攻めさせてもらうぞ」


「おっと。それはマズいかも!麻痺しちゃえ!!」


「チッ。さすがに体の動きは悪くなるか。攻めきれないな」


さすがに実力で言えばまだ俺の方が上ではあるんだが、そこを埋めるのが職業とスキルの差。

まだ俺が麻痺を無効化しきれないため絶妙にこちらが一方的にもなれないでいた。


「そしてそのうえで転移の対応も考えなければならないとなると…………厄介な相手だな」


「それはこっちのセリフなんだけど?何で増華みたいにこっちの位置を掴めるわけでもないのに、正確にこっちの動きを把握できるのさ」


「全く以て正確性はないだろ。ただ、そっちが転移してくるのは背後だっていうことと目の前から消えるタイミングを考えて予測してるだけに過ぎないぞ」


「それができる時点で十分化け物じゃんか!」


「妖怪だからな。最初から化け物だ」


「そういう話じゃな~い!!!」


お互い決め手に欠けて軽口まで叩いているが、それでも一切油断はしていないし隙もさらすことはない。

メリーは背後に回り混み、俺は即座にそれに対処する。

模擬戦の狙いの1つでもある麻痺も何度か受けつつ、俺たちは互いに同格程度の相手の対人技術を高めていった。


「………いや、アタイは確かに人と戦う技術は磨かれてるけど、ボスはあんまり対人技術の向上にはなってなくない?一般の人間は転移なんてしないでしょ」


「そうかもな。なら、俺の場合は「危ない!後ろ!」って言われた時に素早く対応するための訓練ができている」


ついでに、麻痺の耐性を上げることも。

対人技術を磨くのに適していないかもしれないが、それでも文句など一切ない。


「一体そんな訓練の成果を発揮する日はいつになるのやら…………意外とありそうで怖い」


「ダンジョンなら普通にあり得るよな。最近行ってるダンジョンはかなりの頻度で集団がやってくるし」


口には出していないし実際に文句はないが、俺としては対人戦闘の技術も高めたい。

と言うことで、こういう時に最適な相手となるのが、


「ふふふっ!オイラに当てるなんて100年早いっすよ!」


「言ったな廻場。なら、今すぐ当ててやるよ!」


唐笠お化けの廻場。

普段前衛を張ってくれているだけあって、その回避能力はすさまじい。俺も木剣で襲い掛かるのだが、ものの見事にかわされていく。


「増華の姉御の剣を見てる分、さすがにボスの攻撃は生ぬるく感じるっすね」


「それはそうだろな。剣士と同じくらいの技術を持ってたら職業なんて何の意味ない…………けど、それを甘んじて受け入れようという気にはなれんな!!」


「おぉ~。やる気はあるっすね。やる気だけ、と言ったところっすけど」


俺の攻撃は、正直に言って大したことがない。

特にそういう系統のスキルが強化されていたりはしないし、そもそも職業がテイマーだから武器を持った攻撃に補正なんて入らない。

ただそれでも、廻場に攻撃がかすりもしないというのはなかなか悔しかった。


だから、


「まだまだぁ!」


「むきになっても意味はないっすよ?逆に隙ありっす!」


「そう来ると思ってたんだよぉ!」


あえてがっついて攻撃をする振りをして、向こうの反撃を誘う。

思い通り俺の隙を指摘したがった廻場は手を出してきてくれて、俺はカウンターを決められる状況となった。


「けど、ダメか」


「危なかったっすよ?でも、やっぱり実力が不足してるっすね。先まで考えていても、それを体が完璧に再現できる状態にないと」


作戦は完璧だが、俺の能力がそれをするには足りなかった、と言うことみたいだな。

惜しいところまではいけたものの、結局俺は廻場に一撃も入れることはできなかった。

もちろん、こっちがもらうことはなったけどな。


ただ、悔しいことに、


「ほぉれ!アタイの攻撃をくらえぇ!」


「ぬぉ!?オイラは振り向く動作がそんなに得意じゃないんすよね…………って、もう後ろに!?ギャアアァァァ!!!!???」


メリーは普通に廻場に攻撃を当てていてた。

やはり、無制限の転移ってチートだな。

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