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35鬼 難易度上昇

「オーガが来たぞ!目をつぶすから合わせろ」

「はいはい…………それじゃあ、おとなしく麻痺してな!」


「ガアアアァァァ!!!!!」


「おお。メリーの麻痺を受けてもまだ動けるっすか。さすがはオーガっすね」

「でも、動きにキレはないけどね。これなら私でも楽に仕留められるよ!」


メリーが仲間になってから1週間ほど。

俺たちは今まで挑んできた中で1番難易度の高いダンジョンへと踏み入れていた。

以前ピクシーに魔法を撃たれて苦戦したところにも行ったんだがそっちはメリーが仲間になって武器が新調されたおかげかあっさり制覇。

これならもう少し上に挑んでも大丈夫だろうという考えの下こうして新しいところに挑んでいるのだ。


「オーガが数体とはいえ集団でいるとは、少し前なら生きることを諦めてた光景だな」


「そうだねぇ。これを廻場に全部任せて抑えてもらうとかさすがにやりたくないよね」


「オイラもやりたくないっすねぇ。かすっただけでも終わりなわけっすし、これを複数体万全な状態では厳しいっす」


「アタイもこの数は嫌かも」


全員が、1人でもかければこの状況は辛いと考えている。

ただ逆に、全員が万全な状態であればどうにかなる。

そのくらいの難易度に感じられた。


「たとえメリーが操れなくても、麻痺しているだけで十分ダストの足止めが効果を発揮するからな。やっぱり麻痺を入れられている部分は大きいか」


「そうだねぇ。でも、あの麻痺の中動いてる様子を見る限りダストも相当頑張っていると思うよ。あそこまでの動きを止めるのにはダスト側もかなりパワーが必要でしょ」


「しかも動きを止めるだけじゃなく、的確に四肢の主要な筋肉の腱とかを溶かしていってるからね。例え麻痺が解けても動けなくなってるなんてことにできるのはすごい。アタイも脱帽したよ」


「そこまでできるなら首とかの頸動脈でも溶かしてほしいと思うのはオイラだけっすかねぇ」


「それは俺もだ。だが、ダストの趣味は捕食だからそこまで危険じゃない限りは諦めてくれ」


メリーの付与する麻痺。そしてその後の絡みつくダスト。

この2つが組み合わさると、完璧に1体は敵を動けなくすることができる。

本音を言えば動かせなくするだけでなくとどめまで素早く刺してほしいところだが、ダストの性格上どうしてもそれは難しいな。

本当に必要な時には動いてくれるからヨシとしてるが、油断と言う風に見ることもできるんだよなぁ。


と、ダストの今後の教育なども考えていたのだがすぐにそれは中断。

ここはダンジョンの中で気が抜けるような場所ではないのだ。

例えモンスターの集団を倒しても、


「追加が来たよ。ピクシーがいるから、メリーはそれを優先でよろしくね」


「はいはい。アタイがあんな羽虫すぐに叩き落してやるんだから!」


まだまだおかわりがやってくる。

探知もしているためすぐに気がついた増華が声をかけ、メリーが対処に動く。


「ほいほい…………おっ?麻痺が上手く刺さってる?珍しい。じゃあ、いつ切れてもいいように自爆しておいて~」


どうやらメリーの麻痺が珍しくピクシーに通用したようで、久しぶりに敵を操っている。

とは言っても、ピクシーの耐性がどれほどあるかも分からないからすぐに使えなくなるかもしれないし、自爆程度しかさせることはないみたいだが。

ただ、それでも十分被害は出るため、


「だいぶ減ったな。かなり楽になった」


「いや~。あの脅威だったピクシーの魔法をこっちが活用できるわけだからねぇ。それは助かるに決まってるよ」


直線上で放って来たときには強引に近づくこともできず逃げることしかできなかったほどにはピクシーの魔法の威力は高い。それを全力で、自分の被害など考えずに使わせればそれなりに敵にダメージを負わせることが可能だ。


「ただ、ここを倒しても安心できないんだろうな」


「そうだね。さっきより早く片付けられるだろうから少し合間は空けられるだろうけど、すぐに戦いになるでしょ。そろそろ入り口方向に移動していった方が良いかな?」


「今でも十分入り口の近くなんすけどねぇ」


難易度が上がるとほとんど進むこともできない。

ひっきりなしに敵が出てきて、下手なことをして対処が遅れたら挟み撃ちになるなんてこともあり得てしまう状況だ。


「ある程度強くなるまでこのダンジョンにはお世話になるだろうな」


今は当然ここで戦えば強くなれる。

ただ、ここから相手をもっと素早く倒せるようになったとしても結局奥に行こうとすればそれなりに高い頻度で接敵するだろうから戦いの頻度は今と同じくらいになるはずだ。

それこそ、1回の戦闘時間が短いだけで今以上に高い頻度で敵に会うことになるかもしれない。


「1つのダンジョンで長く楽しめるなんて、お得だね」


「別に1つのダンジョンにこだわる必要はないから、お徳とは言わんだろ。どちらかと言えば動きのパターンなどを覚えてしまって他のダンジョンで新しい動きに対処できないなんてこともあり得るぞ」


「それは大丈夫じゃないっすか?増華の姉御もそうっすけど、皆それぞれ慣らしだったりで他のダンジョンにもソロとかで挑んでるわけっすし」


「それもそうか」


増華は放課後に帰り道でダンジョンに寄ったりしているようだし、俺たちも増華がいない時にはそれぞれで近場のダンジョンに行ったり連携強化のためにそろって潜ったりもしている。

それを考えれば、この環境で自分たちを鍛えることはそこまで悪くないように思えた。

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