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28鬼 危機一髪

宝箱発見から少しして。

俺たちはまだダンジョン内で戦闘を繰り返していたんだが、


「うげっ!?面倒なのに見つかった!?」


「これはマズいっすね!!」


長い通路の先に見えるのは、宙に浮かぶピクシーの姿。

こちらが気づいたときにはすでに向こうにも補足されており、


「ギャアアァァ!!???魔法を躱しながら近づくとか無理っすよ~!?」


「チッ!退避だ!こっちにはろくな遠距離攻撃手段がないから、ここで戦ってもいい結果を出せるとは思えん」


「同感。角で出待ちとかして倒した方が良いかもねぇ」


相手が魔法を多用する存在だったことが災いし、長い通路の先から一方的にこちらが攻撃されるという状況になってしまった。

現在全力で逃走中である。

片手には直線距離での移動速度が低い廻場を持ち、ジグザグに走って回避するなんていうことを考える事すらなくただただ全力でまっすぐ走っていく。


「ソーとチャックは戻して生身で走るべきか!?」


「あんまりそれはやりたくないなぁ。当たったら、死んじゃうんじゃない?」


「そうだよな。さすがにダメか」


速度だけを考えれば、俺たちはすぐにリビングメイルであるチャックとソーを脱ぎ捨てて一旦俺の持つモンスターを閉じ込めておくアイテムに戻すことをした方が良い。

ただ、それをした場合魔法を受けたら終わりと言うかなり危険な状況になるんだよなぁ。


「隠し部屋とかがあればすぐさま飛び込むんだけどなぁ!」


「それは今じゃなくてもじゃないかな!?」


軽口は叩くが、かなり必死だ。

しかし、それもここまでの話。

曲がり角はもうすぐで、ついにピクシーの魔法の射線を外せるわけで、


「よしっ!どうにかな、ってない!?」


「ガアアァァァ!!!!!」


曲がり角を曲がった俺たちを待ち受けていたのは、何かと縁のあるオーガだった。

先ほどまでならどうにかなったが今回はあまりにも間が悪い。

曲がり角で見えていなかったうえに、向こうは圧倒的に近接の力が強い。

そして下がれば、俺たちは魔法の脅威にさらされる。


絶体絶命大ピンチってことだ。


「どうにかなれぇ!!!」


とりあえずどうにかならないかと、俺は全力で手に持っていた邪魔なものをオーガに向かって投げる。

それが最適な行動だったとはとても思えないが、それによって一瞬オーガはそちらに視線がいき、俺たちが意識から外れる。


「出し惜しみとかしてらんねぇなぁ!」


このチャンスを逃せないと、俺は緊急時用のアイテムを惜しまず使用することにした。

最初にオーガに使った吹き矢とは桁が1つ違う、それなりに高位の探索者も使用するようなアイテムで、


「爆ぜろ!」


ボンッ!という少し大きめの爆発音とともに、一瞬にしてオーガの首から上が消滅する。

悲鳴すらあげることもできず、オーガは息絶えた。


「よしっ!次は増華とダスト!ピクシーを角で出待ちしろ!」


「わ、分かった!」

「判断が早いっすね」


俺がそこまでやることが驚きだったのか、増華や廻場はいつもより少し遅れた反応をする。

今なら問題ないが、さっきのような緊急時に俺が指示を出しても反応が遅れると困るな。


「そこも課題にはなるか」


色々と今回課題は見えたが、それでもどうにか形はつく。

スライムのダストが追ってきたピクシーに襲い掛かればそれだけで解決。


「ん?何か、向こうから聞こえないか?」


「そうだね……あっ、何体かモンスターが来てるかも。連戦になるんじゃない?」


「なるほど。じゃあ逃げるか」


全てが丸く収まることはなかった。

さすがにここまでの戦闘で騒がしくしたから、多いというほどではないが数体モンスターが集まってきてしまったらしい。

俺たちは即座に逃走を選択した。


「あっ、そういえば、オーガに投げた人形を回収し忘れたな」


「ああ。そういえばオーガに人形投げてたね。あれ、高い物とか言ってたけど良かったの?」


「良くはない。だが、あそこで咄嗟に投げれるものがそれくらいしかなかったんだから仕方がないだろ?」


走る最中、投げたものの話をする。

幸いなことに失ったものはそこまで貴重と言うほどでもない上に俺たちにとって重要でもない人形だったが悪いというほどではなかった。

さっきオーガを倒すに使ったアイテムの事を考えれば、収入が減るのは痛い部分ではあるけどな。


「…………さて、そろそろ良いか?」


「いいんじゃない?移動速度の事を考えれば、これくらいでもう充分でしょ」


人形の事を話し終えた俺たちは、そこまで逃走していたのにもかかわらず足を止める。

そして逆に迎え撃つように今まで逃げてきていた方向を向いて、


「まずはダスト。頼むぞ」


「プルプルッ!」


追ってきていたモンスターのうちの1体。俺たちに追いつきそうだった、1番敵の中でも機動力のある小型のモンスターをダストに処理してもらう。


俺たちがここまで走っていたのは、ただ逃げるためと言うわけではない。

こうやってある程度走ることで敵を移動速度の差によってバラけさせ、移動速度の高いモンスターから順番に処理していこうという考えなんだ。


「次はライトで目をつぶすから、そこまでの注意の惹きつけを頼むぞ」


「了解っす」

「私もとどめを刺せるようにしておくねぇ」


今日は、探索者と言う仕事も一筋縄ではいかないということを感じさせてくれる1日だったな。

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