26鬼 危険人物
手に入れた情報は。上級探索者からのものということもあって悪い物ではなかった。
というより、良い物だったな。
「隠し部屋とかゲームでは見たことがあったが、現実でもあるものなんだな」
「だねぇ。しかも、隠し部屋がそこまで難易度の高くないところでも普通に存在するなんて思ってなかったよ」
俺から出した情報は1つだけだったにもかかわらず、向こうはそれなりの量と質の情報を与えてくれた。
これから探索者を続けていけば知ることになるだろう知識なのかもしれないが、それでも今手に入れられたというのは悪くない。
「でも、まさかボスが渡せるような情報を持ってるとは思わなかったよ。リビングメイルの事ってそんなに重要な情報だったんだ」
「まあな。あれでいろいろと代わったのは間違いないだろ?本当は錆を落とすことでより動きを良くできることも教えてよかったんだが…………使えないじゃないかとかいう文句を言われた時に教えてやればいいだろ」
「うわぁ。悪いねボス。それ、工夫しようと思えばすぐに思いつくことだとかいえば向こうは文句言えないやつじゃん」
増華は俺がなかなかあくどい事をしていると言ってくるが、これも実を言うと仕方のない事なんだ。
さすがに、格上の探索者の頼みである以上今回の頼みを断るとどうなるか分かったものじゃないしな。影響力も大きいだろうし、探索者としてのつながりが上手く作れなくなってきても困るんだ。
そして、
「だからって、妖怪であることとかを伝えるわけにもいかないからな」
「それはねぇ。ついでに言えば、滅魔士であることも、かな?」
俺たちが強い理由の1つが、人間ではなく妖怪だからだなんていうことを言えるはずがない。
だからこそ俺が切れる手札なんてリビングメイルのことくらいしかなかったともいえる。
こうしていい取引ができたと言えなくもない俺たちだったが、少し雰囲気を変えさせてもらう。
ここからは、一段と真面目な話をするつもりだ。
「…………で?結局あいつらはどうだったんだ?」
「うん。黒だね」
「そうか。不自然ではあったし、驚きはないな」
話題は、先ほどまで話をしていた上級探索者の事。
あいつらは確かに怪しむほどの理由がなかったが、それでも不自然な部分があったことは確か。
ということで、増華に術を使って盗聴などをして探ってもらっていたわけだ。
その結果、
「どうだった、あいつらは?」
「本当に言ってた通りの事しかなさそうだな。偽装のレベルが高くてステータスを全て見ることは無理だったが、とりあえず強制看破を使った限りユニークスキルは見つからなかった」
「チッ。強奪したかったんだけどな。さすがにユニークスキル意外に使うのはもったいない」
「見かけたら適当に勧誘するくらいでいいだろ」
と言ったような会話がなされていることが分かった。
あまりこれだけだと何をしたいのかはよく分からなかったが、詳しい解説は増華が行なってくれて、
「さっきの人の内の1人が、『強奪』っていうスキルを持っているみたい。これは、殺した相手のスキルを任意で奪うことができるものなんだって」
「へぇ?それはうらやましいスキルだな。俺も欲しい」
「だね。ただ、そのスキルもさすがに制限があるらしくって、使える回数に制限があるらしいの。だから、ユニークスキルとかいう特殊なスキルを持っている相手に使いたいんだってさ」
「へぇ?ユニークスキルねぇ?」
存在だけは聞いたことがある。
ゲームには存在しない、現実の極限られた人間しか持っていないと言われるその人物固有のスキル。
それこそがユニークスキルだ。
どれも制限がある代わりに非常に強力らしく、それがあれば探索者として成功することは保証されたようなものだなんて話もある。
「あの様子と今の話から考えるに、すでにユニークスキルはいくつか奪っているって考えた方が良いか?」
「そう考えた方が良いかもしれないね…………始末するなら念入りにやらないと」
「ああ。奇襲して真っ先にそいつの首を取ることは確定だな。ついでに、それすらどうにかするようなユニークスキルとかを持ってるかもしれないから、始末して動かない間に他の仲間を全滅させる必要もあるか」
「うぅん…………無理ゲーじゃない?」
「今はな。さすがに現状の俺たちでどうこうできる相手ではないだろ」
さらっと増華がそいつらを始末することを提案してきたが、俺は無理だろうと判断した。
だが、野放しにするつもりもない。
「もしそういうことをしているやつだと発覚した場合、見逃された俺たちにも疑いの目が向けられかねないよな」
「それは確かに。となると、ずっと野放しっていうわけにもいかないのかな」
疑いの目を向けられたからどうしたという話ではあるのだが、その時に怪しまれて俺たちの写真なんかが出回るとマズい。
増華は元婚約者だとかいうやつに見つかる可能性があるし、俺も実家にバレると何を言われるか分かったものじゃない。
「ほどほどに忘れられたくらいで、ダンジョンないとかで襲えばいいんじゃないか?もちろん、それまでの間にあいつら以上に強く成っておく必要はあるんだが」
「なら、もっと力をつけて、ついでに仲間も増やさないとねぇ。ついでに情報収集もするからそこは任せて」
「分かった。頼りにしてる」
一旦対応の話は終わり。
もしかすと次の襲われる候補なんかの話を増華が聞いたりするあるも知れないが、その時はその時だ。
どうするかはその時の自分たちや襲われる相手の事を考えて判断しよう。
「何があっても対応できるように、ダンジョンに行かないとね!」
「ああ。ヤバい奴らだったとはいえ話まで間違ったものではないみたいだし、教えてもらったことも活用しつつもう1回あのダンジョンに行くか」




