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25鬼 情報交換

最初のオーガとの戦闘から約1時間ほど。

いつもに比べると圧倒的に短い時間なのだが、ここで俺たちは一旦ダンジョンから引き揚げさせてもらった。

アイテムなどが底を尽きてしまったというわけではないんだが、


「つ、疲れた」


「さすがにな。敵が強すぎる」


ほとんど見ているだけと言ってもいい状態であった俺や増華でさえそれなりに疲れを感じていた。

やっぱり、普段よりも気を張っていたからだろうな。


俺たちでこれなのだから実際に動きまくっていた廻場はもっとつらいだろうということで今回は休憩することにしたわけだ。


「お昼何食べようか?」


「近場はほとんど行ってみたからな。せっかくだし、少し遠出してみるか?」


「おお~。いいじゃん。どこ行こうか?」


昼飯の事なんかを気楽に話ながら、ギルドで素材の買取などをしてもらう。

そうしている時だった。


「君たち。少しいかな?」


「ん?何…………ですか?」


何だ、と言おうとしたのを改めて、敬語で答えた。

何故かと言えば、俺たちに話かけた人間が明らかに格上だという雰囲気を出しているからである。

もちろん雰囲気以外でも強さは感じ取っているし、俺としては最近使えずにいて精神的負担がかかっていた敬語を開放できた喜びも感じていた。


「ハハハッ。そこまでかしこまる必要もないんだけど」


「いえいえ。それで?何の御用でしょう?」


俺が敬語を使うところなんて飲食店に入って店員と話をするときくらいにしか見ていない増華からは変な者を見る目で見られている気がするが、気にせず話しかけてきた人に用件を尋ねる。

年上に対して敬語を使えることに安心はしてるが、もちろん内容には警戒しているぞ。

最悪、引き抜きの可能性だって考えられるしな。


「実は、君たちが初心者の中でかなりとびぬけて成長をしていると聞いてね。できればその秘訣を少しでも聞けないかと思って声をかけさせてもらったんだ…………あっ、申し遅れたね。僕はこういうものだよ」


「これはご丁寧にどうも」


向こうが名刺のような物(ギルドが正式に発効する信用性の高い物)を差し出してきたのでそれを受け取り確認させてもらう。

そこには名前と、予想通りかなり上級の探索者であることが記載されていた。


「ここまでの実力者が、私たちにわざわざ成長の秘訣を聞きに来るというのは………」


「ああ。分かるよ。信じがたい事だよね。でも、僕たちはそれだけ真剣なんだってことだよ。現実の探索者は、ゲームと違って死ねばそれで終わりなんだから。どれだけプライドを捨てても、生きることに執着することが長く生きる秘訣さ」


「なるほど。そう言われると何も反論できませんね」


俺に嘘を見抜くような力はないが、とりあえず疑う要素が少ないというのは確かだ。

初心者に近づいてくるのは不自然だが、理由は納得できるものであったしな。

しかも、


「もちろん、情報の対価は支払うよ。だいたい金額としてはこれくらいになるかな」


俺たちにだけ見えるようにして際出してきた画面の中には、それなりの良い金額が書かれていた。

正直この金額は欲しい。


「ギルドを仲介した取引にしてもらっても構わないよ。仲介手数料はないうえに向こうがしっかり契約の遂行を確認してくれるから安心してくれていい」


「なるほど。かなり好条件ですね」


好条件も好条件。詐欺を疑いたくなるほどだ。

それでも、さすがにギルドを仲介に使うとなると疑えない。


俺と増華は目を合わせて確認を取った後、


「構いませんよ。出せる範囲の情報はお話します。ただ、対価の方は少し変更をしていただきたいのですが」


「なにかな?情報次第では金額を上げるのもやぶさかではないけど」


「いえいえ。そうではなく、こちらも対価は情報でほしいんですよ。まだまだ新人ですし、先輩からのありがたいアドバイスは今のうちに聞いておいた方がイカと思いまして」


「なるほど。確かに、ダンジョンには危険が多いからね。経験の長さではこちらの方が圧倒的に上だし、教えられることも多いかもしれないね」


頷いた。

そうするとすぐにギルドの職員が仲介人として話を聞いてくれたうえで俺たちの情報提供がまず始まって、


「今のダンジョンでも戦えている大きな要素の1つが、仲間にしたリビングメイルの存在だと思いますね」


「ほぅ?リビングメイルかい?と言うことは、君はテイマーなのかな?」


「はい。テイムした数はまだ3体なのでまだそこまでテイマーとしての経験をつめたわけではありませんけど、それでもリビングメイルは当たりだったと思っています」


「なるほど。リビングメイルは機動力に問題があった気がするけど、上位のダンジョンに挑戦するならそこまで 深い階層に行くこともないし攻撃力と防御力だけあればどうにかなる、ということかな?」


俺が近亜紀使うことにした情報の手札は、リビングメイル。

チャックとソーの情報を出すことにしたわけだ。

相手側もやはり基本的なリビングメイルの特徴しか知らないようで、


「確かに素の状態であればリビングメイルは機動力に賭けますが、一応私たちの方では解決策。と言うほどではないものの有効に生かす手段を見つけました」


「なるほど。それが上に行けた秘訣と言うことか…………内容は?」


「そこまで難しい話でもありません。単純に、中に人間が入ればいいだけです。中に入った人間が動けば、それだけで外側のリビングメイルの機動力は向上します。さらに、中の人間とリビングメイルの攻撃力が合算されるだけでなく、攻撃には上げられた機動力の分も少し乗っかるところが魅力ですね」


「なるほど…………こちらにできるかどうかはともかくとして、新人としてはかなりためになりそうな話だね。ありがとう、とても参考になったよ。もしかするとクランの子たちの底上げに使えるかもしれない」


俺の開示した情報は、向こうが直接使えるものかと問われると微妙なラインの様子。

さすがに俺たちが仲間にしたようなリビングメイルではここまで上位の探索者になってくると実力が釣り合わないだろうからな。リビングメイル系のモンスターが同じくらいの実力のモンスターにいるとも限らないし、すぐに使えるわけではないだろう。


ただ、だからと言って全くためにならないというわけでもなさそう。

ほどほどに情報の価値は感じてくれているだろう。


「それじゃあ、こちらも対価として、ついでに先輩として色々教えようか」

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