20鬼 年季
新たに唐笠お化けの廻場が仲間に加わった。
正直最初は唐笠お化けが仲間になって何になるのかと思っていたんだが、
「ほ~れ。当ててみろっすよ~」
「グギャッ!!」
「グギャギャゥ!!」
「も~。どこに目がついてんすか?そんなところに攻撃しても何も意味ないっすよ~。もしかして、現代社会で生きてて眼精疲労とか溜まっちゃってるんすか~?」
廻場は恐ろしいほどの回避能力の高さを見せていた。
傘を開いた状態で敵の気を引き、敵が攻撃してくればそれを閉じて回避する。
そしてピョンピョンと跳びはねながらまた傘を開き敵を煽っていくことで、ずっと相手のヘイトを買い続けることができる。
「やりやすくはなったな」
「そうだね」
俺も増華も、その力は実感できているし凄い物だと思っている。
そしてこれはどうでもいい事なんだが、その動きに少しだけなれのようなものを感じるんだよな。年季の入った傘だしそれなりに年齢はいっていると思ってはいたが、もしかすると数百歳にもう届いているかもしれない。
「しかも、動けば動くほど洗練されているというか」
「動きに磨きがかかってるよね」
その実力の向上具合がとんでもない。
ただ、才能がありすぎてこれだけで実力がついているという風にも見えないんだよな。それなら最初からもっといい動きができたはずだし。
「昔色々とやってたタイプか」
「いやいや。オイラは特に何もしてきてないっすよ?人畜無害な唐笠お化けっす」
「どう考えてもそんな風な動きには見えないけど…………今気にするようなことではないけどさ」
間違いなく、ヤンチャしていたとかそういう類だろう。
その頃に経験を積んでいて、今その頃の感覚を取り戻してきている、と言った感じなのではないかと思う。
「動きの理由は置いておくとして、廻場のお陰でかなり敵の数が多くなっても対処できるようになったよな」
「そうだね。ゴブリンでも10体以上を相手にするなんて今まで考えられなかったけど、今じゃこんなに当たり前に対処できてるし」
「オイラとしてもこんな数を相手にするとは思わなかったっすよ。しかも、これまで一度も掠りすらしなかったことが驚きっす。最初の数は多くても、ボスや姉御の殲滅速度が高いっすからね」
1体妖怪が増えただけだが、かなり変わった。
あまりにも大きすぎる変わりようだ。数段階進歩できたと言って良いな。
ヘイト集めを廻場がやってくれるから、俺たちはただ敵をつぶしていくだけでいい。攻撃力はソーやチャックのお陰でかなり上がっているし、当てる事さえできれば倒せるんだ。
敵の数が多く成ればダストの動きも少し変わってきて、各敵を骨の髄までしゃぶりつくすようなことをするよりもそれぞれの美味しいところ(?)だけを狙うようになってきている。
これが更に敵の混乱を招いているし、足止めにもつながっているから廻場の回避を助けたりもしている。
まだ俺が戦う必要はあるが、それでもまだまだ余裕があることは確かだった。
「もう少し連携ができるようになったら難易度を上げても良いかもな」
「そうだねぇ。素速い相手に廻場がどこまで相手できるかを確認して、問題がないようだったらそうしてみても良いかも?」
「ちょっと早い相手程度に負けるつもりはないっす。オイラにお任せっすよ~」
まだまだ俺たちは新人だが、それでも初心者にはありえないくらいの難易度のダンジョンに潜れるようになってきている。それこそ、中級車と言ってもいいくらいの実力になっているんではないかとすら思ってしまう。
もちろん、収入もそれに合わせてかなり上がってきている。それこそ、俺たちの場合はクランハウスの近くにある人気のないダンジョンをあさったりしているからそれの効果も大きいな。
「そろそろダストは進化と化してもいい頃合いだと思うんだけどな」
「プル?」
こんなことまで思って死編む俺は、少し調子に乗ってきているのかもしれないというようにも思えた。
と言うことで、
「緊張感を失わないためにも、相性が良くないダンジョンにもいってみるか?」
「相性の良くないダンジョン?」
「どういうものっすか?」
「罠とかが多かったりするところだな。後は、植物の採取とかができるところ。俺たちは戦闘にはある程度強いけど、逆にそれ以外の面はあんまり強くないだろ?」
「そういわれると、確かに?」
一旦気を引き締めようということで、今まで挑戦してこなかったタイプのダンジョンにもいってみることに。
初心者用のものだと罠などもそこまで危険性は高くない(危険じゃないとは言ってない)から、将来の事を考えると今のうちに経験しておくことも悪くないのではないかと思う。難易度が上がって行けば、罠が戦闘とセットであるパターンのダンジョンもあるから。
とりあえず一度罠にかかれば自分の実力はそんなものかと理解することになると思うわけで、
「あっ、宝箱発見~」
「お。良いっすね!高い物が入ってると良いっすけど」
「おい!?ちょっと待…………あぁ。間に合わなかったか」
最初に入ってしばらくすると、かなり低難度のダンジョンであるにもかかわらず宝箱があった。
当然宝箱を見逃すような仲間達ではなく、止めようとしたんだがそれも間に合わずに宝箱を開いてしまって、
「「うわああぁぁぁぁ!!!????」」
「…………あまりにも罠に対して弱すぎる」




