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1鬼 ダンジョン

矢場(やば)畏醸(いかも)様。登録完了となります」


「ああ。ありがとう」


実家から追放された翌日、俺は早速ダンジョン探索者として登録を完了させた。

やっぱり未成年での登録には様々な制約があるみたいだったが、目の前で金を積んだら担当者が凄く渋い顔をしながら頷いてくれたぞ。金の力って偉大だな!


…………と最初は思ったんだけど、よくよく考えてみると効果があったのは金じゃなくてそれを入れていた袋の方だったのかもしれない。

昨日調べたところによると、そういう見た目以上にものが入るタイプのアイテムがダンジョンからも見つかるらしく、そういうのは大抵難易度が高いダンジョンから見つかるらしい。

そんでもって、そういうアイテムが売りに出されることはほとんどなく一般人で持っている人間は非常に少ないのだとか。


だからこそそれは、それだけの財力がある逆らってはいけない家の人間か、もしくはそういうアイテムをゲットできるくらい腕のある探索者の知り合いだと思われれたみたいだ。

そりゃあ渋い顔もするし頷かざるを得なくもなるよな。

今日ちょっとだけ親父には感謝したぞ。もちろん、全く以てそれで今までのマイナスが帳消しになるかと問われるとそんなことはないけど。このくらいじゃ少しも俺の気持ちに変動はないぞ。


ただ、個人的にはこうなるなら名字もごまかさずに本名を伝えればよかったかもしれないとは思ったが。

本当は「江良」が俺の名字なんだが、マズいことになった時のために「矢場」にしてたんだ…………今更変更は無理だよな。


「さて、それじゃあ早速探索をやりたいんだが」


「はい。こちらに初心者用のダンジョンをまとめておりますので好きな場所へ行っていただければ」


色々あったけどせっかく探索者になれたんだ。まずは仕事をしてみよう!

初心者でも入場が許可されているダンジョンと言うのも意外と多くて、近場で済ませることができる。何でも、弱いダンジョンは今でもかなり自然に発生してきているらしい。


ということで徒歩数分で行ける場所まで行って、近くに立っていた警備員の人に探索者であることを証明するするカードを見せて通してもらう。

ちなみに証明するカード、通称探索者カードと呼ばれる物にはダンジョンに初めて踏み入ると、


《矢場畏醸 Lv1》

種族:人間

職業:なし(選択してください)

スキル:なし


こんな表示が出るようになる。俺の場合今までダンジョンに入ったことがなかったから名前くらいしか書いていなかったんだが、これでようやく探索者としての一歩を踏み出せたことになる。

もちろんこの情報、所謂ステータスは俺が力でいじった偽装で、本当は、



《江良畏醸 Lv1》

種族:レッサーぬらりひょん

職業:なし(選択してください)

スキル:なし


となっている。

ただ、名前が本名になっていて種族がぬらりひょんになっているくらいだから特に普段は気にする必要なんて…………ん?


「レッサーぬらりひょんってなんだ?初めて聞いたんだけど!?確かに俺はぬらりひょんの中でもかなり弱い部類に入るかもしれないけど、わざわざレッサーって表記する必要はなくないか!?」


かなり文句を言いたい内容になっているな。

本当は後小一時間くらいは言いたいところだが、一旦それはストップ。出てきそうになる様々な言葉をぐっとこらえて、大事な部分の操作に入ることにする。

あんまり時間をかけ過ぎてモンスターと遭遇しても嫌だし、これは仕方のない事。


「職業はやっぱり、テイマーだよな」


やりたかったことは、職業選択だ。

こうやってステータスを手に入れると、探索者としてどういう方向性で戦っていくのかという指標となる職業が決められるんだ。

この選択次第で今後の俺の成長の仕方なんかも変わっていくし、かなり大事な要素だな。


ただ、大事な要素だからこそもうすでに俺は何をするか決めてきている。

俺は、テイマーになるんだ!

ということで、ポチッと選択して、


「…………通知とかない感じか?寂しくない?」


特に何かアナウンスが聞こえてくるなんて言うこともなく職業選択は終わる。

寂しくは感じるけどしっかり職業の選択は成功していて、


《江良畏醸 Lv1》

種族:レッサーぬらりひょん

職業:テイマー

スキル:『テイム1』『従魔強化1』


職業だけでなく、それに合わせたスキルまで獲得成功している。

これで、晴れて俺も探索者として戦って行けるわけだ。


そうして準備ができたことだし、さっそくダンジョンの奥に進んでみるとするか!

まずはモンスターと会わないことにはスキルとかもう使えないからな。


「テイマーになったことだし、できれば仲間としてやっていけそうなやつが良いんだが…………おっ、あれは!」


俺の視界の端に、半透明の物体が映る。

それはまさしく、俺が求めていた存在。しかも、昨日見た動画の中で最初に相棒するなら間違いなくこいつにするべきだとされていた、


「スライム、見~つけた」


「プルプルッ!」


「…………確かにスライムを現す擬音でプルプルは使われることはあるけど、まさか鳴き声がこれだとは思わなった」


動画で聞いた限りだと、スライムはただ強くなることを目指すなら最高の相棒らしい。テイマーで配信者をやっている人も、実力があるタイプの人は大抵スライムが一角ウサギを最初の相棒にしていたから間違いないだろう。

これで俺も、凄腕テイマーの仲間入りってわけだ。


「よしっ!これからよろしくな、スライム!」


「プルプルッ!」


俺は幸先が良いと思わず笑みを浮かべながらスライムに手を伸ばす。

そして、


「痛っ!?」


スラムから攻撃を食らった。結構痛い。

ただ、それもそのはずで、


「そうだった。まだ『テイム』してないんだった。すっかり忘れてたな」

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