10鬼 増華
なぜか滅魔士が百鬼夜行の仲間に加わって、俺と一緒にダンジョン攻略もしてくれることになりました。拍手。
ワ~、パチパチパチッ!
これで仲間も増えたことだしさらに難易度が高いところにも挑んでいけるな!
よく分からないけどありがたい!
「…………………いや、なんでだよ!?なんで滅魔士が妖怪倒さずに仲間に加わっててるんだよ!?」
「えぇ?今更そこ?」
「それはさっき説明したじゃない」
「説明されたからって納得できるか!なんで家庭崩壊の原因を恨むどころか頼ってるんだよ!?おかしいだろ!!」
「そこはほら。モベヤお姉ちゃんが私の知ってる中で料理が1番美味しかったから。あと、滅魔士だし」
「そうね。滅魔士だし、そこまで不思議ではないわよね」
「滅魔士って便利な言葉過ぎるだろ!?」
明らかに滅魔士、幌星増華は行動や思考がおかしいと思うんだが、現状モベヤも向こうの味方をしているため2対1の状況となっており俺が不利。逆に、こうして騒いでいる俺の方がおかしいみたいな雰囲気作られてるくらいだ。
ムカつくな。
ただ、そんな不満を口にするよりも先に他にも疑問を解消しておきたくて、
「というか、そもそもなんでここが分かったんだ?勘でこの場所を当てたわけでもないだろ?」
「それは、モベヤお姉ちゃんの場所を探知してきたからだよ。髪の毛とかがあれば割と簡単に探知はできるし」
「なるほど?つまり、モベヤの髪の毛を所持していた、と?」
「うん。お姉ちゃんの髪の毛だからね!」
「…………それも滅魔士だから普通なのか?」
「いや。全然そんなことないけど?」
「そんなわけないじゃない。もうちょっと考えて物は言いなさいよ」
「嘘だろ!?そこまで今の流れで言われることあるのか!?」
いつの間にか俺が馬鹿にされる流れが出来上がってしまった。いったいなぜだ。
さっきまで滅魔士だから、とかいう理由で大抵のことは解決しようとして来てたのに今回は違うのかよ!こいつら本当に面倒臭いな。
とか思ってたら、
「でも、私の髪の毛を持ってるのはおかしいわね。なんでそんな物持ってるのよ」
「だって、モベヤお姉ちゃんの髪の毛だもん」
「だもん、じゃないわよ。だもん、じゃ」
増華が髪の毛を持っていたことに関してはモベヤもおかしいと思うらしい。
なんだか増華は少し危険な香りがするよな。ちょっと闇が深そうというか…………マズいな。俺、地雷を踏む気しかしないぞ。そんなに人間の機嫌を損ねないようにしながら話をする事とか得意じゃないから勘弁してほしい。
とか思っていたらさすがに自分が不利だと考えたのか増華が強引に話を変えてきて、
「それで、お仕事って何をするのかな?できれば合法なお仕事にさせてもらいたいんだけど」
「誰が違法労働を部下に強制させるんだよ。絶対部下から不満出るし、それで百鬼夜行が作れるわけないだろ」
どうやらここに住む条件としてモベヤが出した、仕事と言うものが気になるらしい。
ということで、俺はダンジョンのことを簡単に説明し、
「あれ?それって普通に犯罪じゃない?身分証とかごまかしてるんだよね?」
「それは俺の場合な?お前はごまかす必要ないだろ。モベヤとかに身分を保証してもらえれば問題ないはずだ」
「ふぅん?ならいいけど…………あっ、あと。私の事はお前じゃなくて増華って呼んでね。じゃないと滅するから」
「ヒッ!?冗談として通じないからな!?」
恐らく本気ではないんだろうけど冗談としては言っちゃいけないレベルの事を言ってきた。
とりあえず、怖いから名前で呼ぶしかないな。
そんな風におびえながらも俺たちは交流を続けて少しずつ歩み寄り、
「じゃあ、そのダンジョン行こうよ!」
「今から?」
「うん!!」
増華がダンジョンに行きたいと言い出した。これからやっていく仕事になるわけだし、そうしたい気持ちも分かると言えばわかる。
ただ、俺としてはさっきまで戦って疲れたし、
「ダンジョンに行くなら、いったんギルドまで行って探索者として登録した方が良いんだよなぁ。頑張っても数時間はかかるぞ」
「良いよ。というか、数時間で行けるとこにあるの?」
「車に乗ればな」
「車?運転できるの?というか、できたとしてもやっぱり違法じゃない!?」
「いや、火車だから問題ない。勝手に連れてってくれる」
結構ギルドに行くのも大変なんだが、それでも行きたいらしい。
俺も滅魔士である増華が相手である以上断るにも断り切れないな。いつ消されるか分かったものではないし。
「火車か~。そういえばさっき見かけて気がする。便利でいいね。私も学校に行くのに困らなさそう」
「おう。かなりスピードも出せるしある程度の距離までなら連れてってもらえ…………ん?学校?」
「うん。学校。今は家族の諸々があるってことで公欠にしてもらってるけど、あと何日かしたらいかないといけないし…………もしかして、ダメだった?」
どうやら増華は学校に行くつもりらしい。
年齢的にはほぼ俺と変わらないみたいだから、学校に行くとなるとかなり時間をそっちにとられることになるだろう。増華はそれでダンジョンに使える時間が少なくなってしまうことを俺が受け入れないと心配しているようだが、
「行ってくれて問題ない。ただ、良ければ時間がある時に俺にも勉強教えてくれ!」




