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ドSすぎてSランクパーティーをクビになったヒーラー、幼馴染に励まされながら勇者を尻にひいていたら世界救っちゃいました  作者: 中野森


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4

 朝の宿の食堂は、すでに数組の冒険者たちで賑わっていた。焼きたてのパンとスープの香りが漂う中、ノアは一人、窓際のテーブル席に腰を下ろして待っていた。


 ほどなくして、ジークが姿を現す。きびきびとした足取りで近づくと、恭しく頭を下げる。


「おはようございます、兄貴!」


「朝から元気だな……。ゆっくり眠れたか」


「はい! ぐっすりです!」


 ジークは整然と椅子に腰掛ける。ノアはパンをかじりながら、ちらと入口を見やった。


「姉御、来ませんね……? 何かあったんでしょうか……」


「いや、いつものことだ。あいつは朝が弱い」


「えっ、そうなんですか」


 驚くジークに、ノアは肩をすくめて答えた。


 そのとき、食堂の扉がぎぃと開く。


「……おはよう……ふたりとも……ふぁぁ……」


 大きなあくびをかみ殺しながら、シエラが眠たげに現れる。髪はまだ少し乱れていて、ぼんやりとした足取りのまま近づいてきた。


「おはようございます、姉御!」


 ジークが背筋を正して声をかけるが、当の本人は「……ん」と小さく返しただけで、まだ意識は半分夢の中。


「えっと……」


 どう接すればいいのか分からず、ジークが困惑してノアを見る。


 ノアが無言で椅子を引くと、シエラがそこに腰掛けた。


「ご飯食べてたら、そのうち大丈夫になるから。気にするな」


「は、はい……」


 三人はそのまま朝食をとった。温かいスープを飲み干す頃には、シエラの目もようやく覚めてきたようだ。


「ふぅ……やっと頭が回ってきたわ」


「じゃあ改めて自己紹介といこうか」


 ノアがパン屑を払って言った。


「シエラから頼む」


「え、わたし?」


 急に話を振られて、シエラは一瞬ぎょっとしたが、咳払いをして自己紹介を始めた。


「……シエラ。冒険者ランクはS。称号は《癒し手》。職業はヒーラーよ」


「姉御、かっこいいです!」


 ジークが目を輝かせる。


 続いてノアが軽く手を挙げる。


「ノア。ランクはA。称号は特になし。職業はマジシャンだ」


 最後にジークが胸を張った。


「ジークです! 冒険者ランクB! 称号は《勇者》、職業はナイトです! 兄貴、姉御、これからよろしくお願いします!」


 ノアは眉を上げた。


「あんた、称号持ちなのかよ……」


 その言葉に、ジークはうつむき、声が小さくなる。


「あはは……実はそうなんです。最初はみんな、俺がすごいやつなんじゃないかって近づいてくるんです。でも……俺が臆病者だってわかると、手のひらを返したように散々なこと言われて……失望していなくなるんです……」


 ジークは、過去の苦い記憶を語り始める。


「称号持ちで、しかも勇者なんて立派なもの、なんで俺なんかが与えられたんでしょう……」


 シエラは彼の言葉に、過去の自分を重ねた。


「昨日ちゃんと戦えてたじゃない! もういい加減、自信もちなさい!」


 シエラが勢いよく励ます。


「はい、姉御……!」


 ジークの目が再び輝きを増した。


 その様子を見て、ノアは軽く息を吐き、話を切り替える。


「それで、これからのことだが……」


「魔王を倒すわよ!」


 シエラが食い気味に宣言する。


「落ち着け。焦るな」


 ノアが額を押さえた。


「まずはギルドにパーティー申請をしに行く。パーティーランクはよくてAだが、おそらくこの組み合わせでの実績がないからBからのスタートになるだろう。着実にクエストをこなしてSまで上がることができれば……魔王に挑んでもいいレベルに達したと判断できるだろう」


「魔王討伐、ですか」


 ジークがごくりと唾を飲み込む。


「私ね、《癒し手》の影響のせいか、魔王みたいな存在を野放しにしておきたくないのよ。一刻も早く倒さないとっていう想いが溢れてきちゃって……」


 シエラが気まずそうに続ける。


「《黄金の夢》に入るのが、魔王討伐への一番の近道って思ったんだけど……」


 遮るように、ノアが口を開いた。


「とにかく今は、俺たち三人での実績を積もう。他のパーティーと協力して魔王討伐を目指すにしても、俺たちの実力を認めてもらえなければ話にならないからな。いいな?」


「お、おす!」


 ジークが力強く答える。シエラも大きく頷いた。


 こうして三人は、正式にパーティー活動を始めるため、ギルドへ向かうことになった。

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