3
本日朝7時、夜18時更新
明日から1話ずつ更新
「あの……! 俺も、一緒に連れていってください!」
ジークは震えながらも、真っ直ぐな目でシエラを見つめた。シエラは思いがけない言葉に目を丸くする。ノアも静かに彼を見返していた。
「……えっ? 実は私たち、さっきパーティーをクビになったばかりの、はぐれ者なのよ」
「そんなの気にしません! 俺は、あなたたちと一緒に行きたいんです!」
ジークの声には、今日の戦闘で初めて感じた高揚感がこもっていた。恐怖に打ち勝ち、魔獣を倒した瞬間の達成感。そして、それを可能にしてくれたシエラの言葉。
(俺は、この人の隣で、もっと強くなりたい……!)
シエラはしばらく黙って、彼の目をじっと見つめた。その瞳には、かつての仲間たちが抱いていた恐怖や苛立ちとは違う、まっすぐな輝きがあった。
その輝きは、シエラの心を温めると同時に、過去の痛みを呼び起こした。
(――もう耐えられないんだよ、お前のスパルタが!)
(――身体が回復しても、心がついていかないんだ!)
次々と浴びされた糾弾を思い出し、シエラは一瞬、顔を曇らせた。
誰に何を言われようが、ヒーラーの在り方を変えるつもりはなかった。
彼もまた、いずれ自分を拒絶するかもしれない。そう思うと、即座に頷くことができなかった。
「正直、シエラのおもりだけで精いっぱいなんだが……」
沈黙を破るようにノアが呟く。
「え、ちょっと、なにそれ! ひどい!」
ノアの軽口に、無意識のうちに強張っていたシエラの顔が緩む。
ジークは口ごもりながらも、必死に続ける。
「どうかお願いします! 実は俺も……パーティークビになったとこなんです。前衛なのに、敵を前にすると足がすくんで動けなくなっちゃって……でも、さっき初めて最後まで戦えました。姉御の言葉のおかげです!」
「……姉御!?」
シエラは自分のことを指していると気づき、頬をわずかに赤らめた。
ジークの言葉は、自分のやり方が間違いではなかったという確信を、彼女の心に灯してくれた。
「ねぇ、ノア。良いじゃない。認めてあげようよ……」
「お願いします!」
ジークは力強く頭を下げた。
ノアは小さく皮肉めいた笑みを漏らす。
「……ふっ。どうやら、シエラのスパルタにも、救われる人間はいるらしいな」
その言葉に、シエラは少し照れたように顔を背けながら言った。
「もう、からかわないで!仲間は多いほうが良いでしょう?」
「はぁ。わかったよ。前衛は必要だしな。その代わり、しっかり働いてもらうからな」
ノアはついに観念し、ジークの加入を認める。
「もちろんです、兄貴!」
「俺にもそのノリなのかよ……」
呆れたように肩をすくめているが、ノアはどこか楽しそうだった。
新たなパーティーの始まり。
少し間を置き、シエラはふっと顔を上げた。
「私たち正式に三人組になるわけだし……パーティー名、決めない?」
ジークは目を輝かせ、自然と笑みがこぼれた。
「良いですね! とびっきりかっこいいやつ決めましょう!」
ノアも微かに肩をすくめながら呟く。
「で、こういうのは言い出しっぺから案を出すもんだろ」
シエラは神妙な面持ちで口にした。
「うーん……《白薔薇の聖域》」
「却下だ。堂々とパクるな」
ノエが即答した。
シエラはまだ、元パーティーメンバーに言われたことを気にしているらしい。
「じゃあ、《地獄の宴》」
ノアは首を振る。
「怖いわ。誰も近寄ってこないだろ」
シエラはむくれたように唇を尖らせた。「むー」と小さくうなる彼女の姿に、ノアはこっそりと笑いをこぼす。
こんな風に冗談を言い合えるのは、久しぶりだった。
しばらく沈黙が流れ、森の風が三人の間を静かに撫でた。
ジークは小さくつぶやいた。
「……《栄光の道標》」
ノアは腕を組み、静かに頷く。
「まぁ、悪くはないな」
シエラは笑みを浮かべ、決意を込めて言った。
「《栄光の道標》に、決定!」
近くの街を目指し、三人は揃って歩き出す。その足取りに、もう迷いはなかった。
木漏れ日の中、落ち葉を踏む音が小さく響く。
ジークの胸には、昨日までとは違う誇らしい感覚が芽生えていた。
(俺はもう、逃げたりしない……!)
新たな始まりに、シエラは心を躍らせていた。
パーティーをクビになった時、あんなに落ち込んでいた気持ちは、今や見る影もない。
ノアは、久しぶりに心の底から楽しんでいるシエラを見て、満足げに微笑む。
三人それぞれの胸に、これから始まる日々への期待と決意が、そっと芽生えていた。




