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ドSすぎてSランクパーティーをクビになったヒーラー、幼馴染に励まされながら勇者を尻にひいていたら世界救っちゃいました  作者: 中野森


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本日朝7時、夜18時更新

明日から1話ずつ更新

「あの……! 俺も、一緒に連れていってください!」


 ジークは震えながらも、真っ直ぐな目でシエラを見つめた。シエラは思いがけない言葉に目を丸くする。ノアも静かに彼を見返していた。


「……えっ? 実は私たち、さっきパーティーをクビになったばかりの、はぐれ者なのよ」


「そんなの気にしません! 俺は、あなたたちと一緒に行きたいんです!」


 ジークの声には、今日の戦闘で初めて感じた高揚感がこもっていた。恐怖に打ち勝ち、魔獣を倒した瞬間の達成感。そして、それを可能にしてくれたシエラの言葉。


(俺は、この人の隣で、もっと強くなりたい……!)


 シエラはしばらく黙って、彼の目をじっと見つめた。その瞳には、かつての仲間たちが抱いていた恐怖や苛立ちとは違う、まっすぐな輝きがあった。

 その輝きは、シエラの心を温めると同時に、過去の痛みを呼び起こした。


(――もう耐えられないんだよ、お前のスパルタが!)

(――身体が回復しても、心がついていかないんだ!)


 次々と浴びされた糾弾を思い出し、シエラは一瞬、顔を曇らせた。

 誰に何を言われようが、ヒーラーの在り方を変えるつもりはなかった。

 彼もまた、いずれ自分を拒絶するかもしれない。そう思うと、即座に頷くことができなかった。


「正直、シエラのおもりだけで精いっぱいなんだが……」


 沈黙を破るようにノアが呟く。


「え、ちょっと、なにそれ! ひどい!」


 ノアの軽口に、無意識のうちに強張っていたシエラの顔が緩む。


 ジークは口ごもりながらも、必死に続ける。


「どうかお願いします! 実は俺も……パーティークビになったとこなんです。前衛なのに、敵を前にすると足がすくんで動けなくなっちゃって……でも、さっき初めて最後まで戦えました。姉御の言葉のおかげです!」


「……姉御!?」


 シエラは自分のことを指していると気づき、頬をわずかに赤らめた。

 ジークの言葉は、自分のやり方が間違いではなかったという確信を、彼女の心に灯してくれた。


「ねぇ、ノア。良いじゃない。認めてあげようよ……」


「お願いします!」


 ジークは力強く頭を下げた。


 ノアは小さく皮肉めいた笑みを漏らす。


「……ふっ。どうやら、シエラのスパルタにも、救われる人間はいるらしいな」


 その言葉に、シエラは少し照れたように顔を背けながら言った。


「もう、からかわないで!仲間は多いほうが良いでしょう?」


「はぁ。わかったよ。前衛は必要だしな。その代わり、しっかり働いてもらうからな」


 ノアはついに観念し、ジークの加入を認める。


「もちろんです、兄貴!」


「俺にもそのノリなのかよ……」


 呆れたように肩をすくめているが、ノアはどこか楽しそうだった。


 新たなパーティーの始まり。

 少し間を置き、シエラはふっと顔を上げた。


「私たち正式に三人組になるわけだし……パーティー名、決めない?」


 ジークは目を輝かせ、自然と笑みがこぼれた。


「良いですね! とびっきりかっこいいやつ決めましょう!」


 ノアも微かに肩をすくめながら呟く。


「で、こういうのは言い出しっぺから案を出すもんだろ」


 シエラは神妙な面持ちで口にした。


「うーん……《白薔薇の聖域》」


「却下だ。堂々とパクるな」


 ノエが即答した。


 シエラはまだ、元パーティーメンバーに言われたことを気にしているらしい。


「じゃあ、《地獄の宴》」


 ノアは首を振る。


「怖いわ。誰も近寄ってこないだろ」


 シエラはむくれたように唇を尖らせた。「むー」と小さくうなる彼女の姿に、ノアはこっそりと笑いをこぼす。

 こんな風に冗談を言い合えるのは、久しぶりだった。


 しばらく沈黙が流れ、森の風が三人の間を静かに撫でた。


 ジークは小さくつぶやいた。


「……《栄光の道標》」


 ノアは腕を組み、静かに頷く。


「まぁ、悪くはないな」


 シエラは笑みを浮かべ、決意を込めて言った。


「《栄光の道標》に、決定!」


 近くの街を目指し、三人は揃って歩き出す。その足取りに、もう迷いはなかった。

 木漏れ日の中、落ち葉を踏む音が小さく響く。


 ジークの胸には、昨日までとは違う誇らしい感覚が芽生えていた。


(俺はもう、逃げたりしない……!)



 新たな始まりに、シエラは心を躍らせていた。

 パーティーをクビになった時、あんなに落ち込んでいた気持ちは、今や見る影もない。


 ノアは、久しぶりに心の底から楽しんでいるシエラを見て、満足げに微笑む。


 三人それぞれの胸に、これから始まる日々への期待と決意が、そっと芽生えていた。

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