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ドSすぎてSランクパーティーをクビになったヒーラー、幼馴染に励まされながら勇者を尻にひいていたら世界救っちゃいました  作者: 中野森


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本日朝・昼・晩と3話(最終話まで)更新予定です!

「何が『全員揃って出発しよう!』だ、冗談じゃねえ」


 《黄金の夢》のリーダー、ギルフォードは苛立ちを露わにしながら、足早に森を突き進んでいた。

 枝葉を荒々しくかき分ける音が、彼の焦燥を物語っている。後ろに続く彼の仲間たちも顔を見合わせ、不安げに黙り込んでいた。


「俺たちだけで行っていいんですか? ギルド長が“必ず三パーティーで行け”って念押ししてましたよね」


「そうですよ、国からの命令だって。無視したらどうなるか……」


 弱々しい声が飛び交う。だが、ギルフォードは振り返りもせず吐き捨てた。


「そんなの、魔王を倒せばお咎めなしだ」


「……」


 仲間たちは言葉を失った。正論のように聞こえるが、それが虚勢にすぎないことは誰もが感じ取っていた。だが、指摘する勇気もなかった。


 苛立ちを募らせたギルフォードは、苛烈な声で怒鳴り散らす。


「俺たちは誰だ! この国一番のパーティー《黄金の夢》だぞ! お前らがそんなんだから最近なめられてるんだろうが!」


 その言葉に、仲間たちはさらに俯いた。確かに、冒険者の間で《黄金の夢》は「看板倒れ」と噂され始めているのだ。

 原因は、ここ最近は目立った功績を上げられていないことにある。

 その事実を口にすればリーダーの怒りを買うのは明らかで、誰も真実を指摘できなかった。


 やがて木々が途切れ、視界が開ける。そこにそびえ立っていたのは、漆黒の城――魔王城だった。


 空はどんよりと濁り、雲は渦を巻き、大地はひび割れ草木すら枯れている。その中心で、黒鉄のような城が異様な存在感を放っていた。側近の根城と比べても桁違いの禍々しさに、《黄金の夢》の面々は思わず足を止める。


「リーダー……ほんとに、俺たちだけで大丈夫なんですか」


 声を震わせるながら発せられた問いに、別の者もすがるように続く。


「他のやつらを待ったほうが……」


「何フヌけたこと言ってんだ!」


 ギルフォードは怒鳴り返した。


「楽勝に決まってるだろ!」


 その声は、もはや自分自身に言い聞かせているかのようだった。彼は顔を歪めながら、剣の柄を握りしめる。


「行くぞ!」


 ギルフォードの叱咤に押され、彼の仲間たちは重い足を動かした。

 そして――。


 分厚い扉を押し開けた瞬間、広間に吹き荒れたのは暗黒の気配。黒い瘴気が渦巻き、視界を覆う。その中心に、悠然と座す影があった。


「……!」


 影が立ち上がる。闇そのものが人の形を成したかのような、圧倒的な存在感。紅玉のようにぎらつく瞳が、怯える彼らを射抜いた。


「そんな少人数で私を倒せると思ったのか? 随分と馬鹿にしてくれたものだな」


 魔王――その声は冷ややかで、広間の壁を震わせた。威圧感だけで心臓を握り潰されそうになる。


 ギルフォードは足を震わせながらも、どうにか声を絞り出した。


「……まずは、左目だ!」


 作戦会議でノアが口にしていた箇所だ。

 ギルフォードは必死に叫び、一斉攻撃を指示する。《黄金の夢》のメンバーたちは剣を振るい、魔法を放った。


 しかし――。


 刃はすべてかわされ、火球は闇に飲まれた。魔王は余裕の笑みを浮かべたまま、紙一重で身を翻し、鋭い爪で反撃を繰り出す。


「ぐああっ!」


 一人、また一人と吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 詠唱された雷撃は片手で掴まれ、逆に放たれて魔法使いを薙いだ。


「やっぱり……俺たちだけじゃ無理だったんだ……!」


 絶望に打ちひしがれる声が広間に響く。


「バカヤロー! 弱気になるな!」


 ギルフォードは叫んだが、その声も恐怖に震えていた。魔王の容赦ない攻撃が続き、次々と地に伏していく。


「うわあああ……!」


 絶叫が戦場にこだました。


「ふん、もう終わりか。人間とは実に脆いものだ」


 魔王が冷笑する。倒れ伏した人々は、体を動かそうとしても動かない。


「ちくしょう……こんなところで……」


 魔王の前では、あまりにも無力だった。


「闇の業火に焼かれろ」


 魔王の手から迸った黒炎が、波のように広間を覆った。誰もが死を覚悟した瞬間――。


「うああああああ……あれ……熱く、ない……?」


 熱い痛みの代わりに、全身を温かな光が包み込んだ。苦悶に歪んでいた顔に、驚きと安堵の色が浮かぶ。


「貴様ら、いつの間に!」


 魔王の声が、初めて動揺を帯びた。


「……間に、合った……」


 息を切らしながら駆け込んできたのは、シエラだった。彼女の杖から放たれた癒しの光が、黒炎からの致命傷をたちまち治し、死の淵から引き戻していた。


「シエラ! 無事か!」


「ノア……!」


 ノアの声にシエラが振り向くと、その後ろには《星の盟約》と《栄光の道標》のメンバーたちが駆け込んできていた。


「姉御、足早すぎですって……」


 ほっとした表情のジークがいる。


「ヒーラーが真っ先に飛び出すなって言ってるだろ!」


「ごめん……!」


「反省は後だ! みんな、構えろ!」


 レインの一声が広間に響く。新たな戦いの火蓋が、切って落とされた。

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