12
酒場での祝勝会から数日後。
ギルドの広場に、《星の盟約》《栄光の道標》《黄金の夢》の三パーティーが集められた。広場の中央には、いかにも厳格そうな顔をしたギルド長が立っている。
「知の将 《セリオネ》と武の将 《バロッグ》、二つの強力な側近を討伐した今こそ、魔王城に攻め込む最大の好機だ」
ギルド長が声を張り上げる。その言葉に、広場に集まった面々の表情が引き締まる。
「よって、この三パーティー合同での魔王討伐を命じる」
「お待ちください!」
ギルド長が言葉を終える前に、《黄金の夢》のリーダー、ギルフォードが声を上げた。
「俺たちだけで十分です! あんなザコどもと一緒になんかやってられませんよ!」
ギルフォードの言葉に、周囲からどよめきが起こる。彼は先日の祝勝会にあらわれた時と同じく、顔色が悪く、その声はひどく上ずっていた。
「それは許さん。これは国からの正式な命令だ。絶対に三パーティーで討伐にあたるように。わかったな」
ギルド長は釘を刺すように言い放った。
「この場は引き続き作戦会議に使ってくれ。魔王に関わる文献を国中から集めておいたから好きに見るがよい」
ギルド長の視線の先には山のように積まれた書物があった。
今一度集まった面々を見渡した後、ギルド長は広場を後にした。
ギルフォードは苛立ちを隠せない様子で、他のパーティーメンバーを睨みつける。
「いいか。先鋒は俺たちがやる。お前たちは、ただ後ろから指をくわえて見てればいい」
彼の言葉には、連携をとろうという意思など微塵も感じられない。そんな態度に、ノアが冷静に問いかける。
「しっかり作戦を練ったほうがいい。何をそんなに焦っている?」
「この前から様子が変よ。そんな性格じゃなかったじゃない」
シエラが心配そうに続けると、ギルフォードは激昂した。
「なんでお前たちなんかに心配されなきゃいけないんだ!俺たちはこの国一番のパーティー《黄金の夢》なんだぞ!」
「ギルフォード殿、落ち着いてくれ。今は仲間割れをしている場合ではない」
レインが間に入って場をなだめる。
ノアは静かに作戦図を広げ始めた。しかし、ギルフォードは作戦を練るどころか、仲間たちに当たり散らし続けていた。
「左目が厄介だな……だがそれを封じさえできれば……」
古びた書物を目にしながらノアが呟く。
「左目?」
隣にいたシエラがその声を拾い、聞き返した。
「あぁ、万物を予測する厄介な力を持ってるらしい」
「兄貴、俺がやります!」
ジークが名乗り出る。
「いや、ジークじゃだめだ」
「なんでですか!俺、やってみせます!信じてください!」
「そうじゃない、ジークには別の役割を考えている」
予想外の言葉にジークは首を傾けた。
「ジークの称号”勇者”は魔王に対する効果があるみたいなんだ。だから、魔王を討つ役を任せる。左目封じとの兼任は不可能だ」
「俺が魔王を……」
ジークはごくりと唾をのんだ。
「他に腕が立つものといったらギルフォード、だよね……」
シエラが気まずそうに言う。
「さっきから聞いてりゃなんだ、そんなに仲間に手柄をあげたいか? 俺が魔王を討つ。そいつが左目を封じる役をやれよ」
吐き捨てるようにギルフォードがいった。
「勘違いするな。”勇者”が適任だから任せるのであって仲間の手柄がどうとかじゃない」
ノアが冷静に反論する。
「うるせぇなぁ。そっちは最近Sランクなったばかりの新米だろう、そんなやつに任せられるかよ」
ギルフォードの態度は頑なだった。
「できるんですか?」
黙って聞いていたジークが静かに言葉を発した。
「……あ?」
ギルフォードが不愉快そうに聞き返す。
「あなたに魔王が討てるのかときいてるんです」
「そんなのできるにきまってるだろ!」
「……わかりました。では俺が左目を封じる役を引き受けます」
ジークは真剣な眼差しでノアを見つめる。
「兄貴、彼の言葉を信じましょう」
ジークの想いを受け取ったノアは、改めて問う。
「……ギルフォード、失敗は許されない。本当にやれるんだな」
「だから、そういってるだろ」
「なんとかまとまったな。では他のものは二人の邪魔が入らないよう、徹底的に援護を」
レインの言葉に皆が頷くのを見て、シエラは今日一番の声を張り上げた。
「負傷者はすぐに治してあげるから、安心して突っ込みなさい!」
「姉御……女神です!」
いつものジークらしい発言で、場は和やかになった。
「じゃあ明日の朝、全員揃って出発しよう!」
レインが笑顔で締め、作戦会議は無事終了する。
しかし翌朝――集合場所に《黄金の夢》の姿はなかった。
お読みくださった方、ありがとうございます。
残り3話で最終話となります。明日朝昼晩と最後まで更新できたらなと思ってます!
最後までお付き合いいただけると嬉しいです(>ㅅ<)




