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新作始めました!!!!!!
宜しくお願い致します~(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコリ
「は? クビ?」
血と土の匂いが立ち込める森で、シエラは信じられないという表情で立ち尽くした。
――たった今、敵を打ち倒したばかりだというのに。
魔物との死闘を制し、ようやく訪れた安堵の時間。みんなで勝利を喜びあうところのはずが、目の前にいるのは、苛立ちと疲労を滲ませたパーティメンバーだった。
「だから! もう耐えられないんだよ、お前のスパルタが!」
パーティメンバーの一人が、魔物の残骸に剣を突き刺し、声を震わせて叫ぶ。その声には、戦闘の疲労をはるかに超える苛立ちが見て取れた。
「いくら身体が回復しても、心がついていかないんだ! ヒーラーはただ身体を治せばいいってわけじゃないだろ!」
溢れ出した不満は止まらない。他のメンバーも待っていましたと言わんばかりに口を開く。
「俺たちは、身も心も癒されたいんだ! なのにお前ときたら……」
「あぁ、俺も《白百合の聖域》のサラちゃんに癒されてぇ〜〜」
「バカ、あそこは男子禁制だろ! でもわかる……ヒーラーってのはああじゃなきゃなぁ」
身体が治っても心がついてこない。そんなことは百も承知だ。だからこそ、回復魔法を使ったあとはいつも、「大丈夫、もう死ぬ恐れはなくなった」と鼓舞し、再び動き出せるように背中を押してきた。
時には厳しく、時には非情に映るやり方――だがそれこそが、彼女なりの「癒し」であり、それがシエラなりのヒーラーとしての在り方だった。
その上、今日の対戦相手はノアの見立てで苦戦を強いられるだろうと言われていた。
自然治癒能力が高く、時間をかければかけるほど勝つのが難しくなるとも。
だからこそ、彼女はいつも以上に厳しく仲間を叱咤した。
腕が切り落とされた仲間も、毒で意識が朦朧としていた仲間も、回復魔法で完璧に治したあと、休む暇を与えず再び戦闘へと送り出す――。
「大丈夫、まだまだ戦えるわ!」
そうして無事勝利をもぎとった今、なぜこんなことを言われなければならないのか――。
「とにかく、俺たちは、もうお前についていけない」
リーダーのギルフォードが冷たい目でシエラを見下ろす。その顔には疲労の色が滲んでいた。
「あっそう!勝手にすれば!後で泣きついてきても、もう知らないから」
シエラは、泣き出しそうになるのを必死に堪えて言った。ここで泣けば、今までの自分を否定することになる気がしたからだ。
「ノア、お前がちゃんと手綱をにぎっておかないからシエラが暴走するんだ。連帯責任で、お前もクビだ。……まぁ、お前はそもそもAランクだしな」
「わかってるよ」
ノアは深く溜息をつき、シエラに手を差し伸べた。その手は男性にしては少し小さいけれど、温かく、頼りになる存在感があった。
「行こう、どうやらもう俺たちの居場所はここにはないらしい」
ノアに促され、二人は人通りの少ない森の道へと入っていく。森の薄暗い空気が、行く当てのない自分たちの今の状況をそのまま表しているようだった。
「どうしてこうなっちゃったんだろ……」
シエラの震える声が響く。
「お前の才能は本物だよ」
そう言って、ノアはシエラの手を握る力をそっと強めた。
「俺の助言を守ろうと、頑張りすぎただけだ。お前は何も悪くない」
「ノアが優しい……今日は嵐かな?」
堪えていた涙が流れ落ち、ごまかすように言った。
「お前なぁ……」
どれくらい歩いただろうか。森の奥から、何かが争う物音が聞こえてくる。魔物のうめき声、そして、絶望に満ちた男の悲鳴が混じり合っていた。
――もう、だめだぁ……
その声を耳にした瞬間、シエラの心臓が跳ねた。
シエラは、気づけば音のする方へ駆け出そうとする。
「待て、シエラ!何をするつもりだ!?」
ノアが必死に手を掴む。
「放っておけないの!」
シエラは視線を鋭くし、森の奥を睨む。その目に、先ほどの涙の跡はもうなかった。
「おい!冷静になれ!今、俺たちには前衛がいないんだぞ!無茶だ、シエラ!」




