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12話 黄金の果実


 神魔刀によって両断したキョジンは、だくだくと臭い体液を垂れ流し、内臓を露出させた。おそらくこの状態から再生することはないだろう。俺の勝利だ。


 改めて他の二体はどうなったかと見回せば、アルマとエレノアによって肉体の殆どが消し飛んでいるような状態だった。


 神話から出て来たような怪物三体を難なく倒した事により、静かだった砦から大きな歓声が上がっていく。


 まったく調子の良いことで……というのは酷かもしれないが、こうまで契約外の仕事をさせられては愚痴の一つも言いたくはなる。


 しかも、キョジンの死骸なんて、まずはお目に掛かれない代物で、クロモリ防衛局としてはこの死骸から巨万の富を得る事ができるだろう。


 おっと、そういえば俺もこのキョジンの死骸の一部には用があるんだった。砦から兵たちが出てくる前に一仕事を終えないと。


 俺は急いで切り落としたキョジンの頭部分があるところへ移動した。アレが在るかどうかは分からないが、もしあったとしたらこの旅の最終目的の一つを得る事になる。


 果たしてキョジンの頭に生えていた木には、小さいながらもリンゴに似た『黄金の果実』があった。


 内心の大きな喜びを隠しつつ、早急に黄金の果実を回収する。


 キョジンの遺骸なんぞ幾らでもくれてやるが、こればかりはクロモリ防衛局に渡す訳にはいかない。なぜなら、一緒に旅をするアルマの『魔獣化』を抑える為に絶対に必要なモノなのだから。



---



 この世に魔法使いは女性……『魔女』しかおらず、男性の魔法使いは皆無である。なぜか?――それは魔法の行使する器官が男性には無く、女性にしかない事からくる。


 魔女とは、■■が変質し、生んだ物質をエネルギーに変えられる者をいうのだ。


 そして魔女とはよく言ったもので、魔法を使い続ければ変質は進み、いずれは全身が魔に蝕まれ……魔獣と化す。魔獣と化した魔女はまさに災厄である。正気を失い、見境なく魔法を使って破壊と死をもたらす存在となる。


 通常はそうならない為に、薬を使って魔獣化を抑えているが、長年魔女を務めた者はこの薬が効かなくなり、魔獣化が進むことになる。


 現状のアルマはその第一段階『魔人』の状態にあり、魔法は触媒なしに使えるが、使うたびに身体のどこかが変質する。第一段階は有難いことに時間が経過すれば元の姿に復元するが、先ほどのような大魔法を連続で使えば不可逆な変化が生じ、魔獣化が進行する。


 この不可逆な変化が生じた者が第二段階に当たり、第三段階は精神の汚染が始まった者を言う。そして第四段階は完全な魔獣化だ。


 第四段階、いや第三段階まで魔獣化が進行した者は、問答無用で魔女の仲間に殺される運命にある。


 だから魔女であるアルマとその騎士だった俺は、アルマに魔獣化の傾向が出た時、手遅れにならないうちに魔獣化を治す術を探す旅に出た。


 長い放浪の果て、魔獣の森に生えるという『銀色の草花』、大魔獣キョジンが持つという『黄金の果実』、そしてドラゴンが住む近くにあるという『虹色の枝』に魔獣化の変質を治すという効能があると知り、ずっとそれを求めて来たのだ。


 全くの偶然とはいえ、その成果の一つが今、この手の中にある。感無量とはまさにこの事を言うのだろう。


 これでようやく魔女の騎士という本来の役割に戻れるし、この手でアルマを殺すという責務からも解放される。


 早く、この『黄金の果実』をアルマに食べて貰わなければ!


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