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10話 総力戦


 今日は空に白い満月が浮かんでおり、満月時は魔獣が最も活性化する日である。


 他の日と比べ、森から出て来る魔獣の数が半端なく多いので、先日のように囮を使えば問答無用で飲み込まれてしまう。よって、この城塞を盾に使い、正規兵と共にとにかく矢や石を降らせて魔獣の数を減らす&砦を守るというのが本日のミッションとなる。


 既に正規兵に加えて『天懲組』をはじめとする傭兵たちが手にした弓矢でもってひっきりなしに魔獣に射掛けており、そこへアルマとエレノアの魔法爆撃が加わって凄まじいことになっていた。


 俺達を喰らわんと雲霞の如く押し寄せる魔獣達が、放った投石や弓矢で数を減らしていき、同じく放たれた魔法の火の玉が炸裂して魔獣を蹂躙する。


 それでもどんどんと魔獣が森から出て来るのは恐怖の一言だ。


 いわば今日は砦の命運をかけた総力戦。そんな日にアルマを追ってエレノアが来てくれていたのは幸運だったと言うべきか。



「いえ、もともと今日と言う日にワタクシが参戦することは予定通りですのよ。近年は満月ともなると溢れるほど魔獣が出て来て正規兵だけでは手が回らないという事態になっております。貴方達、傭兵を可能な限り集めたのもこの事態を予測しての事です」

「なるほどな、やけに報酬がよいと思ったらそういうことか。こんな状態じゃ逃げられないし、死力を尽くして防衛するしかないってワケだ」



 うまい話の裏には何かがある。それを見抜けなかった俺達が悪いんだが、その代償を命という事にするわけにはいかない。文字通り命を張ってこの砦を防衛しなければ。



「えれえ所に来ちまったなコンチクショウ! おおい、姐さん、昨日みたいな大爆発で連中をぶっ飛ばせないか? このままじゃ押し切られるぜ!?」

「了解了解……アレを使うのにはちょっとした溜めが必要だから、時間稼ぎヨロシクね! ねえ、エレノア、アンタもアノ薬を持って来てんでしょ? だったら私と合わせてアレをやりなさいな、この際、数を競うとかどうでもいいでしょ?」

「アナタに指示される謂れはありませんが、いいでしょう。この砦を破壊されたら元も子もありませんからね。シグルズさん、ワタクシ達の護衛、しっかりお願いしますわ!」

「了解だ。お前たちの身は絶対に守るから、戦術級魔法、よろしく頼むぜ」



 昨日のような大魔法を使うために瞑想に入った二人に代わり、とにかく矢を連続で降らせる。


 砦から森の裾までは魔獣で埋め尽くされているような状態だから適当に何を放っても当たるような状況だ。


 そんなこんなで必死に時間を稼いでいると、二人の魔法使いから戦術級魔法が放たれた。



「水のエレノアが最終奥義――絶対零度エレメンタルゼロ!」

「炎のアルマが決戦魔法――無限炎獄インフィニティヘヴン!」


 

 二人の掌から放たれた白銀の水箭と、黄金の火箭が絡み合い、ある地点で完全融合するや凄まじい爆発を引き起こした。


 鼓膜がやぶれたかと思うほどの爆音、壁に叩きつけれるかの衝撃波、そして失明を疑うほどの光量が俺達を襲う。


 それが晴れると神話に出てくるような巨大な積乱雲が発生しており、その爆心地には巨大なクレーターが出来ていた。


 そんな破壊魔法の爆心地にいた魔獣達は堪ったものではないだろう。その場に居たアギトやゲキドはほとんどが蒸発し、生き残った魔獣もほとんどが半壊して瀕死の状態となっていた。


 しばらくは状況を飲み込めずにいた正規兵や傭兵も、その光景を目の当たりにして歓声を上げて行き、最後には怒号のようなものになって行った。



 いや、歓声を上げたくなる気持ちは分かるんだが、アレ、大丈夫なんだろうか? 結構な範囲で魔獣の森を削っちまったんだけど……。


 俺が冷や汗を垂らしながら魔法使い二人の方を見ると、同じく冷や汗をかいて誤魔化したように笑う二人が在った。 



「は、はは。どうよ、私たちエレメントの切り札の一つは? ちょっと森も削っちゃったけど許容範囲でしょ。アレくらいじゃドラゴンは出て来ないって……多分」

「そうですわね。些細な失態よりは戦況を覆したことを褒めて頂きたいですわ」

「そりゃまあ文句をいう筋合いは何処にもないけどさ……でもあれだけの範囲を削っちまったら、大型魔獣くらいは出て来るかも…………ああ、やっぱ出て来たわ」



 味方から上がっていた歓声が急激に萎んでいく。それもそのはず、魔獣の森の奥からは全長30メートルはあるだろう、巨大なヒト型の魔獣が出現していた。


 そのずんぐりむっくりした体には、至る所に口が付いており、その複数の口からは呪詛を思わせるしゃがれた咆哮を垂れ流している。


 そは大魔獣――『キョジン』


 大きく森を傷つけられた時に出現すると言われる魔獣の森の巨大な守護者が、なんと3体も出て来たのだ。


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