第Ⅰ話 始まりの果実
「その実を食べてはいけないよ」
「どうしてですか、お父様」
「その実は、沢山の不幸を食べた者に与えてしまうんだ」
「でも、こんなに綺麗な赤いリンゴなのに」
「赤くはないよ。よく見てごらん。ほら、黒いだろう?」
「いいえ、お父様。このリンゴは赤くてよく熟した実です」
「そんなに食べたければ勝手にしろ。何があっても私は知らぬぞ?」
「…分かりましたお父様。私はこの実を口にはいたしません」
「それでよいのだ。私の可愛いヒイロ…」
俺はその、黒い林檎と呼ばれた果実を、
近くの泉へ投げ捨てた。
「さぁ家へ帰ろう。お母様が待っているぞ」
「はい、お父様」
◆◆◆◆◆◆
「ん…」
ここは暗い一室。
全体的に白い壁で囲まれている、古いアパート。
「…なんだってあんな昔のことを…」
俺は昔の夢を見ていたようだ。
そのときノックが聞こえた。
「…どうぞ」
勢いよく開いた扉から赤い髪の女が入ってきた。
「なんだ、ロゼッタか」
「なんだとはなんだ!せっかく遅刻寸前のお寝坊さんを、このロゼッタ様が起しに来てやったのに…」
「ん?遅刻だって?」
「そ」
俺は寝癖の付いた頭をかく。
「いつものことだろ」
「いつも遅刻してるんじゃ話しにならないでしょ!?」
「先生には適当に言っといて。俺は二時間目からでるから」
そういって俺はまた布団を被り寝床に付く。
彼女はロゼッタ=ヌーン。
俺と同じアパートの住人。
「~~~、とにかく、行くよ!!」
そういってロゼッタは俺から布団を無理矢理はがす。
「あ~もう分かったから!外に出て、待ってろ!!」
バタンと扉を閉める。
俺たちの通っている学校は魔法や武術を学ぶ、
謂わば、戦闘員養成所のようなところだ。
俺は青いブレザーを白いシャツの上に羽織り、
黒いズボンを履く。
白い靴下に茶色い靴を履き、
ブレザーの襟にAのバッチを付け、
そのまま洗面所へ直行。
顔を洗い、
寝癖の付いた髪を濡らし、整える。
「早くしてよ~、あと五分で遅刻~!」
ロゼッタの叫びも無視して、鞄に荷物を詰め込む。
「待たせた」
「ほんとだよ!!」
ロゼッタはムッス~と頬を膨らませ俺を睨む。
う~ん、普通にしてれば可愛いのだけれど…
まざそれは無視の方向で。
「さ、行こうか。ロゼッタ」
「うんっ!」
読んでくださりありがとうございました!!
夏騎の第一作目でございます♪
これから、主人公、ヒイロの
熱い(むしろ蒸し暑い)青春や、
戦いが待っています!!
どうぞ続きも。