花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第12話】
二人は抱き合いながら寝ていた。
先に目を覚ましたのは、花邑杏子。
「もう、絶対に離れてやんないからーー」
そう言うと、再び布団に潜り込む。
十分後ーー
目を覚ました義範が、頭を抱えている・・・
「やっちまった・・・」
彼は暫しの間、落ち込む。
「まあ、まだ一線を越えたわけじゃなしーー」
外では雨が舞っている。
東京の雨は、優しくない。ざーっと降ってはすぐ止んで、地面もすぐに乾く。でも九州はもっとひどい。いつまでも降っている。
しかし、止んだあとの空気は清々しい。これが東京との違い。
(俺は、南波澄香ちゃんとキスしたいんじゃなかったのか?)
義範が起き出した。するとーー
「やぁだー、まだ寝るのぉ」
花邑杏子がパジャマを引っ張って、布団に引き摺り込もうとする。義範は諦めて、布団の中に潜り込むーー
いつの間にか、時間は11時を過ぎた。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
「はあーい!」
花邑杏子がガバッと起き出し、走って玄関へーー
何やら、大きな荷物が二つ。
彼女は乱暴に蹴飛ばしながら、部屋へと運んでいく。
「へへへーん」
腕を組んで自慢気にしている彼女は、満面の笑みを浮かべている。
「これが、何だか分かるか」
義範は怪訝な表情をしながら言った。
「まさか・・・これがプレゼント?」
「当たりぃ!」
花邑杏子は満足そうだ。
「さーて、開けるぞぉーー」
そう言うと、何処からかカッターを取り出し、ザクザクと段ボールを切り刻んでいく。義範は中を覗き込むが、彼女にカッターを突き付けられた!
「まだ見ないで!」
いったい、何の荷物だよ。
彼女は梱包された紙袋を、乱暴に破った。
ベリベリベリベリーー
中に入っていたのは・・・
「じゃーん!ーーおっと、順番に見せるから、焦らないで♪」
もったいぶって。何を買ったんだ?
「まずはこれ」
特攻服だった。しかし、これでは終わらない・・・
「何々ーー『例えこの身が焼かれても我赤坂義範を愛し続ける』、『二人の愛は永遠であれ』、『我より赤坂義範を愛す者なし』・・・」
「もうひとつあるぞ」
義範用の特攻服。しかし、これでは終わらない・・・
「えーっとーー『我花邑杏子を一生愛し続ける』、『誰よりも花邑杏子を愛してる』、『好きなんだ花邑杏子』・・・」
「もおーっ!照れるぅ!」
この、何の捻りもない文言は、花邑杏子の発案か?
「あんたなら、私を抱きながらこう言うと思ったの」
言わないよ?
「これは、私たちのパジャマでした。では次ーー」
今度はTシャツだった。
正面に花邑杏子の写真が。その下には「愛してる。杏子」。これが十枚。
次は、花邑杏子のキス顔。その下には「義範、ちゅー」。これが五枚。
次ーー花邑杏子の怒った顔。その下には「義範、浮気はダメだぞ」これが五枚・・・
センスが・・・欠片もないじゃん!
「毎日、これ着て仕事にいくんだぞ。最後はーー」
なんと、抱き枕だった。
「スゲえ!テンピュールだ!あ・・・」
抱き枕には・・・水着姿の花邑杏子が印刷されていた。
「一番、頑張ったんだぞ。感謝しながら抱いて寝ろし」
東雲うみの方が良かったとは、口が裂けても言えない・・・
「なんか、照れくさいなーー」
義範は、精一杯の嘘を言った。
花邑杏子は嬉しそうにしていた。
「私がいないときは、これを抱いて寝ろし」
欲を言えばーー東雲うみがテンピュールである方が良かった・・・
「以上です。拍手は?」
義範は、形だけの拍手をした。
「よろしい。あーー大徳エンジニアリングの入社式に、この特攻服を着ていけ」
嫌に決まってんだろう!?
義範はーー
「此の思いは、二人だけのひ・み・つ・にしよう」と言い、形だけのキスを彼女にした。
花邑杏子はーー
「分かった。二人だけのひ・み・つ・な。うふっ」
心底からデレデレしていた。