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Faker  作者: Joker
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1章 6話-本気の彼女-

話だけでも、と彼女の部隊の控室へ訪れる諒。

そこに桧璃は不在で速水玲というオペレーターの姿が。

待っていると桧璃が現れる。

戦場とは別の顔の彼女に驚きつつも話をすることに。

そんな中、桧璃は諒に模擬戦という名の再戦を提案する。

 彼女と向かい合って会話をすることになるなんて思いもしなかった。相手はSSラウンダーで最強のラウンダーと呼ばれる猛者だ。

玲:「と、言うワケで草壁くんはまだウチに入ってくれるとは断言していないのでした。」

まるで他人事のようにオペレーターの彼女はおどけてみせる。先程の事情を仲里先輩にかいつまんで説明していた。しかし、仲里先輩の態度はあっさりとしていた。

桧璃:「別に強制するつもりはないし、城咲後輩がべったりだからね。私だって人の恋路を邪魔するほど嫌な女じゃないし。」

仲里先輩はそう言いつつ、軽く手を振った。恋路?

桧璃:「……まさか、気づいてなかったの?どれだけ鈍感なのよ、あなた。」

呆れた顔で此方を見つめられる。そうか、それであの態度か。仲里先輩に言われるまで全く気づかなかった。やはり、藤田隊は俺が居るべき場所じゃ無い。藤田と城咲の仲を考えて行動し、彼女をチームに定着させようとしていたのにこの有様だとは……これじゃ、本末転倒じゃないか。

桧璃:「そう、城咲の片想いか……。」

此方の顔を見て彼女は珍しく失敗したような顔をしていた。どうやら城咲の気持ちに俺が気づいている体で話してしまったからだろう。

玲:「うーん、チーム内で恋愛とは……青春だね。」

オペレーターの彼女はうんうんと頷いている。女の子ってこういう話、好きだよな……。

桧璃:「まぁ、それはそれとして……諒は私が気になると。」

冗談めかして言っているがその通りだ。恋愛云々は良くわからない。綺麗な人だと思う。でも、それを省いたとしても自分が彼女に惹かれていることは確かだった。彼女の何処に惹かれているのかはわからない。なんとなくだけど彼女と一緒に居るべきだと感じている。

桧璃:「じゃ、つき合う?……シミュレーター。」

玲:「戦闘訓練じゃないの、なんで無駄に照れているのよ。」

見事に息の合ったコンビネーションだ。漫才かのような華麗なやり取り。しかし……彼女の常人では無い強さが気にならないと言えば嘘になる。

諒:「……シミュレーター、つき合ってもらっても構いませんか?」

玲:「嘘、この2人ってホントに似た者同士?」

速水さんは呆れたようにため息を吐いていた。でも、せっかくの機会だ。この間の戦闘の続きを誰にも邪魔されることなく本気で……少なからず期待はしていた。彼女なら俺と手合わせをしてくれるのではないかと。

桧璃:「あなたってもの好き?まぁ、いいけど……最初からそのつもりで此処に来たってことはわかっていたから……それじゃ、始めましょうか?」

彼女は立ち上がるとシミュレーター室へ入った。控室に専用のシミュレータールームがある部屋を彼女の控室以外では見たことがない。それほど彼女の待遇は良いのだろう。

玲:「もう……勝手に話、進めちゃうんだから。それじゃ始めるよ、2人とも。」

彼女は既にエーテルボディとスーツの姿になっていた。やはり……戦闘の時はいつもの表情になっている。さっきまでのおどけた態度とは違って全くの別人のようだ。

桧璃:「実戦形式で、1本勝負でいいわよね?その方があなたも燃えるでしょ?」

彼女は大鎌を取り出すと軽々と振り回した。

諒:「構いませんよ。」

彼女の方を再び見つめる。相変わらず俺が斬った髪は元に戻していない。

玲:「桧璃、諒くんのこと気に入っているから髪型これで良いんだって。」

思わずまじまじと彼女の方を見ていたので速水さんが気づいたようで気になったことを答えてくれた。

桧璃:「えぇ、キズモノにされたから。あなたに責任、とってもらおうと思って。」

大鎌を此方に向けて不敵に笑う。

玲:「エーテルボディだから簡単に元に戻せるのにね、変にプライド高いんだから。」

桧璃:「うるさい、さっさとカウント始めなさい。」

彼女がカウントダウンを始める。

玲:「はじめ!」

カウントが終了して彼女が此方に襲い掛かってくる。大丈夫だ……落ち着いて対応すれば?そう思ったが現実は此方が考えている以上に厳しいものだった。

諒:「……!」

視界がぐらりとゆっくり崩れ落ちる。刃を受け止めようとした瞬間、急激に大鎌がくるりと反転した。ブラフだったのか……!呆気なく床に崩れ去る。警告がエーテルスーツより発せられる。上半身と下半身を真二つにされたのだ。呆気なく天井を見上げる。

桧璃:「どう……降参?」

気づけば天上ではなく真上に彼女の整った顔があった。つんつんと額を突かれる。訓練用のエーテルボディだから身体は自然と元通りに戻っている。いつの間にか彼女が此方の身体に跨り満足気な表情を浮かべている。

桧璃:「私の髪を斬ったことは、これで水に流してあげようではないか。」

まるで憑き物でもとれたかのように彼女は晴れやかに笑う。その表情にドキッとしてしまう。女の子らしい身体の感触と柔らかな表情に戸惑ってしまう。

玲:「ちょっと、桧璃!シミュレータールームでイチャつかないの!」

桧璃:「別にイチャついてないでしょ?ナマイキだけど可愛い後輩にどっちが上の立場か教えてあげているの。こういうことも教えてあげないと社会に出てから大変なのよ?」

見惚れてしまっていた。こんなに強いのに……彼女はなんら普通の女の子と変わらない。とても不思議な気持ち。なんと言って良いかわからない。

桧璃:「……また来なさい、何度でもつき合ってあげるから。」

そう言うと彼女はすっと立ち上がった。そしてそれ以上は何も言わずに此方に手を差し出してくる。彼女はその日、それから一言もスカウトの件は口にしなかった。此方の意思を尊重するということだろう。意外と気配りも出来る人らしい。

玲:「流石に後輩にセクハラはダメでしょ?」

桧璃:「セクハラなんてしてないでしょうが、何が気に食わないのよ?」

玲:「もう少し、自分のルックスを自覚しなさいって言っているの!」

桧璃:「はぁ?今は私の容姿は関係ないでしょ?」

仲が良いのか悪いのか良くわからない。2人ともいがみ合っている。俺は苦笑しながらもその場を去るのだった……。

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