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Faker  作者: Joker
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1章 5話-素顔-

再び本部で桧璃と再会する。

そこで桧璃からとんでもないことを提案される。

自分の部隊へ入らないかとスカウトされることに。

その差し出された手を諒は……。

 差し出された手をじっと見つめる。ずっと感じていた。自分の居場所はあの場所じゃないと。あの場所には城咲が居て藤田が居て……俺はただのお荷物だった。城咲と藤田の仲が上手くいくように遠慮して、ただの戦力増強の駒だった。別にそれが悪い訳じゃない。必要とされている実感がして悪い気分じゃなかった。だから自分に与えられた役割を一生懸命にこなした。仲里先輩は俺が手を抜いていることを指摘した。本気で戦えと言った。物事の本質を見抜く才能があるのだろう。彼女は上手く此方の力を引き出し、此方を上手く手玉にとった。それがあの戦闘の結果だ。彼女には……何が見えているのだろう。あれほどの力を持っておきながら自由気ままに生きている。そんな彼女を羨ましく思った。思わず差し出された彼女の手に自分の手を……。

由佳:「ちょ、ちょっと待ってください!それは、ウチの諒くんを引き抜くってことですか?」

差し出された手を求めようとしたところで仲里先輩と俺の間に城咲が割って入る。

桧璃:「えぇ。私、こんな感じだからチームを組めるパートナーが居ないの。でも、彼なら私と組めるかもしれないと思って。」

由佳:「でも、諒くんは……私たちにとって必要なエースです!」

桧璃:「だけど、本人はそう思っているかしら?」

城咲が此方の方を不安げに見つめる。何か彼女に反論して欲しいというような表情だ。すまない……俺は、あの場所が自分の居場所だとは思えない。俺はただの余所者で君たちを守る役割しか果たせていないのだから……。

由佳:「……。」

どうして君がそんな表情をするのだ。まるで捨てられそうな子犬のような顔をする彼女。彼女は存分にあの部隊で俺が居なくともやっていけるだろう。他の部隊に引き抜かれたとしても彼女ほどの逸材ならちゃんと守ってくれる部隊だってある筈。

桧璃:「まぁ、あなたが私の部隊に入るなら髪を斬ったことはお咎め無しにしてあげる。」

ふふん、と自慢げに腕を組む仲里先輩。意外と……お茶目なところがあるのかもしれない。

隊員たち:「おいおい……揉めているぜ。」

隊員たち:「Cラウンダーを仲里先輩とあの城咲が取り合っているらしい!」

騒がしくなってきてしまった。

由佳:「……いくら仲里先輩でも……彼は渡せません!」

啖呵を切ると周囲が更に騒がしくなる。彼女は俺の袖をぐいっと掴むと此方を引き摺るようにしてその場から去ろうとする。

桧璃:「城咲、わかっているでしょ?その部隊に彼を置いていても良い結果は望めない。それに決めるのはあなたじゃない、彼自身よ。」

城咲は彼女の言葉を聞いて動揺している。歩みを止めて此方をじっと見つめる。

桧璃:「諒、別にすぐに答えは望んでいない。その気があるのなら私はいつでも歓迎する。あなたは私と同類だから……自分でもわかっているでしょ?」

彼女は此方に向けて不敵な笑みを浮かべると先にこの場を去って行ってしまった。存外に袖に力を感じる。物凄い力でぎゅっと城咲が俺を掴んで離さなかった。何事かと騒々しくなってくるその場から逃げ出すように俺は彼女とそこから離れようとする。

諒:「……帰ろうか?」

帰宅途中、公園に寄って彼女を落ち着かせようとする。

由佳:「……仲里先輩と仲良いんだね、知らなかった。」

切なそうに笑う彼女。スカウトか……考えたことも無かった。

諒:「任務で一度会っただけだけど?」

由佳:「ううん。私以外で仲里先輩があんなに人と会話するところ、初めて見た。」

と、言うか……他は怖くて話しかけられないということではないのか?

由佳:「ねぇ、諒くんは……。」

言いかけようとして彼女は口を閉ざす。何を聞こうとしているのかはなんとなくわかる。此方の口から出す前に彼女は俺の答えを拒絶する。

由佳:「ごめん、なんでもない……。」

そう言うと彼女は再び黙ってしまった。微妙な雰囲気のまま別れる。家に帰ってからもどことなく居心地が悪い。思い浮かぶのは2人の少女の顔だ。

由佳:『でも、諒くんは……私たちにとって必要なエースです!』

桧璃:『あなたは私と同類だから……自分でもわかっているでしょ?』

城咲には恩がある。俺に丁寧にエーテルウエポンの扱い方から基本戦術までを教えてくれた。今、こうやってCラウンダーになって部隊で戦えているのは彼女のおかげだ。そしてそれとは反対に敵対していた彼女のことを思い出す。私と同類……どういう意味だ?俺は先輩ほど強くもなければ経験が豊かな訳でも無い。でも……俺はどうしても仲里先輩が気になってしまっている。あの人について行けば何か変わるだろうか?何かがわかるだろうか?期待している自分が居た。話……だけでも。そう思って翌日、仲里先輩の控室にまでやってきてしまっていた。

玲:「おかえり……ってあれ?お客さんか。」

中に居たのはいつも彼女と遣り取りをしていたオペレーターの女の子だった。

玲:「あれ、草壁くんじゃない?桧璃、意外と手が速いのね。」

うんうんと頷く。待て、このまま誤解されては気まずい。俺は彼女にちゃんと理由を説明することにした。

玲:「なるほど、話を聞きに来た……と。ごめんね、今桧璃は会議中。もうすぐ戻ってくると思うけど……待つ?」

帰ろうかな、と思ったが無駄足になってしまう。もう少しで帰ってくるのなら待とうか。席に座って数分経つと、本当にすぐに彼女が控室にやってきた。

桧璃:「ただいま、いやぁ……今日の会議は面倒だったわ。」

そこにはいつもの姿からは想像出来ない彼女の姿があった。

玲:「お帰り、お客さん来ているわよ。」

桧璃:「……客?」

彼女はじっと此方を見つめる。

桧璃:「なるほど……決心がついたのかな、私の可愛い後輩くん?」

手をワキワキとさせて迫ってくる仲里先輩……別人じゃないよな?

玲:「あぁ、気にしないで……桧璃の素、こっちだから。いつも立派な外面、いや死神面?構えているだけで、本当はこんな感じのテキトー女だから。」

桧璃:「適当に息抜きしないと窒息するでしょ。それと勝手に人を死神扱いしないでくれる?イメージダウン過ぎてもうウンザリなんですけど。」

確かにイメージと違うがこの際言及はしないでおく。戦闘の時は本当に死神みたいな感じだったから。脚を組みながら椅子に座るその姿は普通の女の子に見えた。

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