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Faker  作者: Joker
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1章 4話-差し出された手-

徐々に居心地が悪くなっていく藤田隊。

これも仲里桧璃に興味を持ってしまったからだろうか。

自分の居場所が此処では無いと感じ始める諒。

一方、桧璃も諒に特別な何かを感じとっていた。

いつも私たちは戦場のど真ん中だ。別に私はオペレーターという役職上彼女のように常に危険と隣り合わせということは無い。しかし……この間のアトラス製薬事件絡みといい、何か不穏なことに巻き込まれているような気がして気が気じゃない。

玲:「ねぇ……桧璃、1つ聞いて良い?」

桧璃:「何?」

作戦前にエーテルボディとスーツ完備の彼女に聞いてみる。相変わらず外見は信じられないほどの美少女だというのに……あんな戦い方をする娘だとはとても思えない。

玲:「本当に髪、戻さなくて良いの?エーテルボディだからすぐに修復出来るよ?」

エーテルボディは優れものだ。自分なりに外見を調整することも出来るし、髪型だって生身の身体とは違うようにアレンジも出来る。それなのに彼女はアトラス製薬事件の際に彼に斬られた髪を直そうとしなかった。どういうことなのか少しだけ気になる。

桧璃:「別に良い、この方が戦いやすいじゃない。」

現実の彼女のヘアースタイルはロングヘアで、綺麗なサラサラの暗めの茶髪をなびかせて歩いている。その髪色は生まれ持ったものらしい。彼女と街中を一緒に歩いていると、そのスタイルとルックスの良さから何度も男性に振り向かれたこともある。“死神”と怖れられていることを知らずに彼らは彼女のことをまるで女神か天使を見るかのように見つめていた。

玲:「ひょっとして……彼に興味を持ったの?」

桧璃:「まぁ、興味は沸くでしょ。Cラウンダー詐欺だもの。」

確かに彼は普通と違った。あれだけ彼女と渡り合えたSラウンダーすら私は見たことが無い。ましてやCラウンダーであそこまで戦えるとなると本当に実力は彼女と近しいものがあるのかもしれない。終始、桧璃が圧倒していたことに違いは無い。だけど……彼女はSラウンダーですらたったの数秒で膝をつかせる異常な強さを誇る。手加減していたとしてもCラウンダーがあそこまで粘れることはない。彼女の結っていた髪を斬り落とすなんて芸当をしてみせたラウンダーは未だに彼1人だった。

桧璃:「草壁諒……ふふ、なかなか面白い後輩くん。」

彼女は斬られた後ろ髪の部分を気にするように触った。

桧璃:「女に髪を切らせる悪い男には……責任をとって貰わないとね。」

ゾクっとするような不敵な笑みを浮かべる桧璃。その表情は同性から見た私からでも色っぽくもあり、おそろしい悪魔のような表情にも見えた。なんとなくだけど彼女は彼に複雑な感情を抱いているように思える。

桧璃:「さて、さっさと仕事を済ませるわ。」

彼女はいつものように戦場へ舞い降りる。まるで生命を刈り取る死神のように……。


 隊の行く末というか……俺たちの関係はどうなのだろう。この間の城咲の言葉がずっと頭の片隅に引っかかって離れない。城咲は藤田のことを特に気にしていないのだろうか。今日も食堂で4人一緒に食事をとる。オペレーターの宮辻綾子。彼女は藤田に気があるみたいだけど……肝心の城咲はそうはいかないみたいだ。

由佳:「ねぇ、諒くん。昼が終わったら訓練に行かない?試してみたいことがあるの。」

俺は……この場に居場所があるのだろうか。

柊一:「城咲、あまり根を詰め過ぎないように。最近、訓練ばかりじゃないか。」

由佳:「わかっているってば。でも鉄は熱いうちに打てとよく言うでしょ?」

昼食を終えると彼女は此方の背中を押して、催促してきた。

由佳:「ほら、諒くん。行こう!」

まるで駄々をこねる少女のように彼女は此方を強制的に連れ出した。その屈託の無い笑顔が彼女の魅力なのだろう。模擬戦を行える訓練場までやってくるとそこには意外な人物の姿があった。仲里桧璃、あの人の姿だ。

桧璃:「……。」

Sラウンダーの模擬戦をつまらないものを見るように冷たい視線で見つめている。あれだけの戦闘能力を有している彼女だ。Sラウンダーの戦闘を見てもあまり感激などはしないのだろう。目の前の戦闘はかなりハイレベルのものだ。しかし、彼女の心は揺れ動かないようだ。そんな彼女の姿を見て、城咲が彼女に向って駆けていく。

由佳:「仲里先輩!」

桧璃:「あぁ、城咲。」

知り合いだったのだろうか。彼女と仲里先輩は仲良さそうに会話していた。まさか、城咲と仲里先輩がこんな間柄だったとは思いもしなかった。

由佳:「あ、ウチのエースを紹介します。諒くんこっち!」

なんてことを……彼女と顔を合わせるのはなんとなく居心地が悪い。最近あんな出来事があったばかりだから。

由佳:「エースの草壁諒くん、もう知っていると思うけど仲里桧璃先輩。私の学校の先輩でもあるの。」

そんなこと初耳だ……確かに聞いてなかったから口にしなかっただけかもしれないが。

桧璃:「どうやら……不思議な縁でもあるのかしら、私たち?」

Sラウンダーの模擬戦を見ていた彼女は此方にしっかりと視線を向ける。なんとなく雰囲気が違うと思ったら彼女は後ろで結っていた髪を未だ修復していなかった。直そうと思えばエーテルボディだ、修復は難しいものではない。

桧璃:「そうか……藤田隊、私としたことが気づかなかった。」

由佳:「……あれ?諒くん仲里先輩と知り合いだったの?」

知り合いというより……一方的に目をつけられていると言った方が正しいのだろうか?

桧璃:「えぇ、殺し合いをした仲くらいには。」

彼女の視線が何を語っているのかはわからない。ただ、俺はじっと彼女の瞳を見つめた。なんとなくだけど目が離せなかった。

由佳:「……?」

不思議そうな心配そうな目線を此方に送る城咲。

桧璃:「諒、あなたの居場所はそこじゃない。」

急に名前を呼ばれて俺は戸惑った。何故だろう……俺は……以前からこの人を知っている?まるで砂嵐の中に映像がちょっとだけ映し出されたような感覚。俺はこの人のことを気になりかけてきている。いや……彼女と一緒に居れば或いは……。

桧璃:「私と一緒に来なさい、あなたは……私と同じ“力”を持つ者。」

彼女がすっと此方に手を差し伸べてくる。その手を俺は……。


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