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Faker  作者: Joker
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0章 0.1話-死神の少女と謎の少年-

 この場が騒然となる。たった2体のレプリカントに対してあの“仲里”を投入する?正気の沙汰だとは思えない。

隊員:「全員、このまま待機……死神が通るぞ……。」

“死神”それは“仲里桧璃(なかさとかいり)”を意味している。彼女はガーディアンフォースの中でも特別な存在だ。たった1人、兵器として戦場に投入される。戦闘車輌の後ろからゆっくりと彼女は現れた。思わず息を呑む。美しいとても整った顔立ちに、髪は暗めの茶色。ショートヘアかと思ったが後ろで髪を結っている。その一本の長い髪の束が風に揺れる。美少女というような風貌……彼女が本当にあの仲里なのだろうか。

桧璃:「ご苦労様……後は私がやるわ。」

隊服、黒と赤を基調としたエーテルスーツも風で揺れる。そのスーツの胸元を見て驚愕した。信じられない数の勲章がスーツに飾られている。昔、Sラウンダーの人間を全員降格させたという伝説のSラウンダー。今はSSラウンダーという特別な扱いを受けている。

桧璃:「全員下がりなさい、死にたくなければね。」

その一言と、共に建物を崩しながらバケモノが現れる。

オペレーター:「桧璃、敵は2体。」

桧璃:「それじゃ、3分ね。1体1分、探すのに1分。」

刹那、何が起こったのか解らなかった。目の前の敵が……レプリカントが真二つに斬り裂かれていたから。目に見えなかった……。

オペレーター:「……今の10秒だけど?」

手には大鎌。いつの間にあんな得物を取り出していたのか。

桧璃:「予想より歯ごたえがなかったみたい。」

笑っているのか?俺たちが恐怖ですくんで足も動かせない状態で?一瞬で目の前の敵の生命を刈り取る。あの大鎌が物語っている。間違いない……彼女は……。

柊一:「……死神。」

そう呼ぶにふさわしい。彼女は不敵な笑みを浮かべて上空へと跳び上がる。なんという身のこなしだ。エーテルボディを使っているとはいえ、人間とは思えない程の跳躍力。

桧璃:「玲、次。さっさと行くわよ。」

面倒くさそうに彼女はビルの屋上へ跳びうつる。そして屋上から屋上へと伝い、あっという間に姿を消す。


 まったく、面倒なことを押しつけられたものだ。どうして私がこんな雑魚の処理をしなければいけないのだ。この程度Aラウンダーでも簡単に対処出来る筈だ。

桧璃:「何か知られちゃいけない物があるとか?」

私はSSラウンダー。最強のラウンダーと呼ばれている。何が最強なのかは良くわからない。ただ相手を倒すことに長けていた。それだけ、この力のせいで同性からも異性からも年上からも年下からも……あらゆる人間から恐怖の対象とされた。私のことを死神と呼ぶ者すら現れた。さっきもそうだ、Cラウンダーが私の戦い方を見て死神と言っていた。

桧璃:「死神だってさ……笑える。」

オペレーターの怜に笑いかける。彼女は唯一私を友人として、パートナーとして扱ってくれた数少ない人間だ。

玲:「桧璃、強いからね。」

桧璃:「そう?」

私は狙いを定めて屋根を突き破り、屋内へと侵入する。そこには……私と同じくらいの歳の男の子とレプリカントが対峙していた。戦う気もなければ何処か茫然とレプリカントを眺めている。どうしてか私はその光景を見て不思議な感覚にとらわれた。既視感というか……なんというか。説明し難い。男の子が此方に気づいて視線だけを私に向ける。随分と冷静な表情。

桧璃:「伏せて。」

彼は咄嗟に私の言葉に合わせて身体を伏せる。よし、良い子。私は壁を蹴り上げて思いきり大鎌を振るった。横一閃、綺麗にレプリカントの上半身と下半身が分かれる。彼は起き上がるとズボンの埃を叩いて落とした。

桧璃:「大丈夫、怪我は無い?」

不思議な目……アレを前にして随分と余裕があるものだ。あのCラウンダーにも見習わせてあげたいくらい。こんなことなんて珍しいけど、私はその少年に少しだけ興味がわいた。

???:「大丈夫です、ありがとうございました。」

へぇ……意外と肝が据わっている。この子は戦闘向きかな。

桧璃:「ここで待っていて、迎えを遣わすから。」

私はオペレーターの玲に連絡をとると救援をこの地点へと呼んだ。これでCラウンダーの隊員がこの子を迎えにくるだろう。私の任務は終わりだ。さっさと切り上げよう。

桧璃:「任務完了よ、引き上げるわ。」

引き上げ間際に再び彼と視線が合う。不思議な気持ちになる。感情が読めない。今までに会ったことが無いタイプの人間だ。思わず私は彼の方にしっかりと向き直り視線を交わす。

桧璃:「……。」

???:「……?」

彼を見つめると不思議そうに彼も此方を見つめる。彼からは不思議と他の人間と違って私を畏怖するような視線を感じない。いや、レプリカントを前にしてあの余裕……何か不思議な感じがする。まさか……今回私が出撃になった理由は彼?

桧璃:「あなた……。」

私が彼に問いただそうとした瞬間、此処へCラウンダーが到着した。先程、私を死神扱いしていたCラウンダーの男か。まぁ、いい。私はただ任務を遂行するだけだ。

桧璃:「……さよなら、せいぜい生命は大事にすることね。」

何故、彼に挨拶をしたのだろう。自然と身体が反応するように彼に話しかけていた自分に驚いた。あまり他人と関わらろうとしない私が?まぁ、いい……どうせ、彼とはここでお別れ。助けてあげたんだからせいぜい長生きしなさいよ。そう心の中で彼に呟き、私は割れていた窓から地上へと跳び下りた。


 俺は彼女の姿を目で追った。恐ろしいほどの戦闘能力。あれが同じ人間だと言うのか?目の前の彼は彼女に何も感じなかったのだろうか。その真意はわからないが、彼女の方をじっと見つめていた。

柊一:「君、大丈夫かい?」

???:「はい、彼女が助けてくれましたから。」

落ち着き払ったその態度に驚く。彼女がレプリカントを始末したあの光景を見てもなんとも思わなかったのだろうか。とりあえず此処から彼を連れ出そう。そう思った時だった。レプリカントの死体が動き出した。

柊一:「君、下がれ!」

どうしてだ?たった今斬られたレプリカントは彼を見つめて起き上がる。対して彼はレプリカントをじっと見つめている。マズい……このままじゃ!彼の前に立って自分を奮い立たせる。彼女のようには出来ないけど……俺も隊員としての務めを果たす!

柊一:「うぉおおお!」

これが初の実戦だ、身体が震える。恐怖で竦む。まるで触手のようなモノが割れたレプリカントの身体の中から蠢き、踊り出す。それらに斬りかかった俺は簡単に弾き飛ばされてしまった。エーテルウエポンを手放してしまい端末が床へ転がり落ちる。

柊一:「君、逃げろぉおお!」

今の一撃で情けない……身体が動かない。端末は滑って彼の足元にコツンと当たる。彼はそれを拾い上げると不思議そうにそれを眺めていた。刹那、物凄い勢いでレプリカントの身体が変形した。死神……さっきの彼女が戻ってきたのか?いや、違う……!彼が俺のエーテルウエポンを使用してレプリカントに強烈な一撃を放っていた。

柊一:「なんて……強さ……だ!」

重力という理を無視したその動きはまるであの彼女を彷彿とさせた。あんなバケモノのような才能を持った人間がこの世に2人?衝撃のような音が2、3度響き渡る。目で追えない速さで彼がレプリカントに攻撃を叩き込んだのだ。レプリカントは今度こそ機能停止する。再び彼は敵の前に立ち、そんなレプリカントをじっと見つめている。何者だ……彼は一体?



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― 新着の感想 ―
[一言]  地底人? エーテル? レプリカント(複製体)? 超面白そうなんですけど この話、'前書き' 部分が小説として読みたかった。 (地底人はレプリカントが来てから出てきたのか、とか)
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