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覚醒奴隷のニューワールド   作者: chaos シスルル
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5幕 帝国ノ侵攻

◇自由連邦 州都オリンピアス


「急報!中央都市フロンティス陥落!」


「そうか、想定はしていたが、思ったよりも早かったな。ほかに何か報告することは?」


「中央都市フロンティスから無事撤退できた兵からの報告です。魔物の件ですが、見た目は蜘蛛のような魔物で、1匹で1小隊を壊滅させるほどの戦力ということです。」


「蜘蛛のような魔物か…」


「父上、何かお心当たりでも?」


「亡くなった父が150年前に現れた、蜘蛛のような魔物についての逸話をよく私に教えてくれたような気がするのだが、忘れてしまった」


「では魔物には注意が必要ということですね。」


「ああ、それから軍の配置も各将に通達しなければならぬ。帝国軍はもう州都に迫っているようだ。」


「私の配置はどこになりますか、できれば正門で活躍したいのですが、父上」


「お前には正門、フグレットには裏門。エレンティア殿は義勇兵を鍛えながら遊撃をお願いするとしよう」


「了解です。父上」


「それから前から思っていたのだが、軍では元帥と呼ぶように」


「はい、父上」


「元帥だ」



「はあ、はあっ、はあ」

「だいぶ参ってるな、じゃあもう1000回素振り追加」

「そ、そんな」

俺が姉さんに抗議の声を上げようとしたその時。


城の壁が崩れる()()が響く。


「姉さん、帝国軍だ。なんで…」

「確かに早すぎる。軍は何してるんだ?」

「早く逃げよう姉さん。」

「ちょっと待て、何だあれは…」


そこにあったものは()()頭から豪快に喰らう蜘蛛の姿だった。

運悪く壁の近くにいた人は皆蜘蛛に喰われた。

あたりに死臭が漂う。

少なくとも7匹は居る。

蜘蛛と目が合った。

心臓が跳ね上がる。

頭が真っ白になる。


「Guoooo!」

蜘蛛がこちらに突進してくる。

あまりの恐怖に呆然とつっ立ている僕の手を取って姉さんは走り出す。


「逃げるぞ、アオイ」


「Guoooo!!!!!!!!!!!!」


後ろから蜘蛛が這いつくばるように追ってくる。


「チッ!」


前にもデカい図体をした蜘蛛が立ちはだかっている。


「姉さん!前ッ」


「アオイ、このまま走り抜けろ!」


「このまま?だって目の前に蜘蛛が…」


「高等術【闇炎(ダークフレイム)】」


姉さんの魔剣が暗い炎をまとう。


「はあああああっっっっ!!!!!」


跳躍した姉さんが蜘蛛の胴体を切り裂き、蜘蛛が一瞬で灰になる。


これが高等魔術の力か…


「す、すごい…」

「アオイ、速く!」

前を見ると、姉さんがまた蜘蛛に攻撃されていた。


「高等術【闇繭(ダークケージィング)】」


集まっていた3匹が粉砕される。


そのすきに僕はやつらのいない外の門へ急ぐ。


うまく蜘蛛から逃げたかのように見えたそのとき、


上空から巨大なやつが落ちてきた。


脚には凹凸のあるとげが何本もついており大量の目が胴体に付いている。

口から牙を出してこちらを威嚇している。


どうやら、逃げられなさそうだ。

そう思ったとき自然と腕が剣に触れていた。


姉さんに買ってもらった剣を抜き、構える。

初めての戦闘だからもちろん恐い。

剣を持つ腕が小刻みに震える。


だけど…


立ち止まってはいられないから


両足を踏み、目の前の蜘蛛に剣を突き出す。


蜘蛛の肉をえぐる感覚がそこには確かにあった。


だが、蜘蛛の勢いは一切衰えなかった。

蜘蛛は僕を腕で振り払い、嘲笑うかのように、剣を粉砕する。


終わった…、なにこいつ。強すぎでしょ。


姉さんはこちらに気づいたようだけれど、むこうは蜘蛛であふれているから多分間に合わないだろう。


死に直面して意外と僕は冷静だった。

奴隷生活に慣れていたからかもしれない。





死を覚悟したそのとき、真横から一本の矢が飛来する。

胴体を通り抜けた矢は蜘蛛の足を粉砕する。


(なんだ?助かったのか?)


「第一の矢【雷針】」


横を向くと、金髪のひ弱な男が矢をもってたたずんでいた。






******************************



「君はいったい誰?自由連邦側の人間?なぜ僕を助けたの?」


「質問は3つだな。まず俺はファリダリット。元帝国軍人だ、ファリと呼んでくれ。帝国で戦略部門を担当していた戦略家でもある。だが俺はもうあんな、クソみたいな国にはつかえたくない。だから、自由連邦に亡命してる。助けた理由は帝国を滅ぼすためにお前たちが必要だからだ。」


「なるほど」


「そちらの質問には答えた。次はこちらの問いに答えてもらおう。あの女は何者だ?普通高等魔術をあんなに連発できる人間はいない。人間かどうか疑わしいくらいだ。」


姉さんは向こうの敵を片付けて、こちらに来ていた。


「人間のネリスだ。それからこちらがアオイ。私の弟だ。以上」


「いや()()()()()()!なんでそんな体力あんの?っていう問いにまだ答えてないんだが」


「それで部下になれってことか?弟を助けてくれたことには礼を言うがそれはお断りだ」


「別に部下になれ、という気はない。ただついていくだけだ。」


「どうするアオイ?まくか?」


「僕を助けてくれたし、仲間は多いほうがいいよ」


「アオイがそういうなら、仕方ないな」



「一応言っておくが、おそらくあれは帝国軍の先行隊に過ぎない。本軍が来るのはこれからだ。早く脱出したほうがいい。」

「もとからそのつもりだよ、ファリ」


「おい、アオイ。その男を信用しすぎないほうがいいぞ。」


「でも。一応これからは仲間として行動するんだし」


「アオイ、ほんとにお前お人よしだよな」


「俺もそう思うな」


「いや、お前が言うな」

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