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出口
気づけば住宅街の真ん中に一人、立っていた。その手に傘はなかったが、灰が肌に張り付いていた。
空を見上げる。目に雨粒が入った。痛みに涙が溢れた。
彼からの受け入れがたい言葉が、私の決意を揺らがせた。
*
数年が経った。
書店にあの街のガイドブックが並ぶことは、もう、ない。街が消えてしまったのだ。
私は彼の最後に立ち会うことができなかった。
片手に傘を、片手に花を持ち、私は霊園に向かう。それは初めてのことだった。
静かに手を合わせた後、私は新たな決意を彼に伝える。
帰り道、畦道の中、私は傘をたたむ。湿った空気を肺いっぱいに吸い込み、その雨を一身に浴びる。
彼の最後の言葉を噛みしめ、私は私に誓う。
私は、生きる。
だから、さよなら。私のためのワンダーランド。