男の人
死の山と言われた山の頂上、そこは「死」という言葉が全く出ないぐらい綺麗な場所だった。でも今は「死」という言葉がピッタリと私に張り付いている。
「どうした?早く案内しろ。」
会って間もない、人かどうかも分からないこの男は私にそう言ってくる。
でも今は考えてる時間はない。
「私が先に行くので勝手に着いてきてください!」
「ちょ…待ちな!」
今は先輩の制止も聞かずただひたすらに走った。
でも走っても走っても村は見えてこない。それどころかここが何処かも分からなくなる。
「おい、何処へ向かっている。」
これだけ走って息も切らさずに私にそう問いかける。
「麓の…村、です。」
疲れても声を振り絞って伝えた。
登った時は時間はかからなかったのに、何故か今はその倍の時間かかっても村に着かない。
「これは、結界だな。おい1度止まれ。」
「え、何言ってるんですか。早く行かないと間に合わないかも」
どんどん不安が募る、こんな所で止まってる暇はないのに……
この人はもう走る気は無いんだろう、そう思い自分だけでもまた走り出そうとすると、腕を捕まれ止められる。
「アズサ!あんたすごい顔だよ!?1回落ち着きな。」
「今のそいつに何を言っても無駄だ、恐らく結界を張ったやつに操られてる。」
「は?あんた何言って、」
スゥの言葉はそれ以上出てくることはなかった。なぜなら目の前の自分の後輩の首を掴んでいる人ではない何者かを見てしまったからだ。
それはさっきの村にいたおじいさんの顔をしていたが首からしたが全くの別物だった。
「ひぃ!?」
「やはりお前か、その様子だとその小娘はお前と相性がいいらしいな。」
「ガカ、?人間、イヤ、オ前も…」
「ひゃあ!!何ですかこれ!?」
アズサが正常に戻ったらしく自分にピッタリとくっついている何者かを認識し、悲鳴をあげた。
「そいつは下級の悪魔だ、恐らくその麓の村というのも本当かどうか怪しいな。」
「邪魔ヲ、するなよ。」
「それは出来んな、お前が俺のものを盗まなかったら話しは別だったがな」
そういって男は拳を構える。武器もないようだった、
「あんた何してんだい!?下級って言っても悪魔なんだったら魔力を持ってるやつか武器でない限り倒せないよ!」
スゥが忠告するが男は構えをとかない。
ゆっくりと拳を引き、息を吸って吐くと同時に前に突き出した。
「グガ?何をしている。」
悪魔は首をかしげ笑っているようだった。
ずっと首を掴まれているアズサはいつ死ぬか分からない恐怖に震えていた。が、
「すまんな、もうすぐ来る。」
言葉の意味がわからなかったが、その意味がわかるのは案外早かった。
次の瞬間に私のすぐ横を衝撃波が走ったのだ。私には当たらずに悪魔だけに当てて私から引き剥がした。
「アズサ、今だよこっち来な!」
「グカガ?何が起きた?」
悪魔の質問を無視して男は歩みを進め悪魔の目の前で止まってこういった。
「石の場所は聞かん、どうけ取り込んでいるだろうからな。取り出すのも面倒だから殺す事にする」
男はそう言って左手で悪魔の頭をつかみ持ち上げ
る。悪魔が何か言っていたがよく聞こえなかった。
持ち上げてしばらくすると男が右手で悪魔の胸の当たりを貫いた。
「#/.-|!*‼???‼」
悪魔の悲鳴のようなものが響いたと思ったら塵となって消えていった。
「そこのお前たち、もう下山出来るはずだ。早く帰れ。」
そう言って、立ち去ろうとする男に先輩が言った。
「待ちな、助けて貰ったから何もしないけどねあんた何もんだい?」
質問には何も答えない。沈黙が続いた。そのまま去ろうとしたから私も聞いた。
「あの!名前は、名前はなんて言うんですか?」
「………もう忘れた」
そう言い残して、山の中に消えていった男の背中は何処か寂しそうだった。
居なくなったのを確認してか、先輩がその場に座り込んだ。
「あ゛あー死ぬかと思った!」
この道のベテランがそう言って泣き目になっているのを見て相当やばかったんだと改めて思っもた。
「そもそも悪魔がいるとか聞いてないし?その悪魔を瞬殺する化け物とかどんなのよ!?」
研修期間に習ったことだが、悪魔は下級から中級、この上に上級が来るらしいが、これよりもっと上もいるらしい。ただ、そんなものはもう生まれることもあまり無いので習わなかった。
「下級でも私たちじゃ敵いませんもんね」
「そんなものじゃ無いわよ!私の見立てじゃあれは[+]が着くレベルだったわよ」
+とは、プラスと読み、調査隊が着けたランクの横に着くものである。B+とかが例で挙げられる。
+はそのランクの中でもとても危険なものと言う感じの意味合いだ、逆にーはそのランクでも比較的マシという感じらしいが、Aーなどは例外らしい。
「取り敢えず下山しませんか?ほら先輩も薬飲んで」
2人で耐寒剤をのみ下山し始めたが、何故か寒さも感じず雪も降っておらずすんなり下山出来た。
村の門までたどり着いたが、そこで見たものは村と言うよりは瓦礫の山だった。
「こ、これは?」
「さっきの悪魔の仕業でしょうね、多分餌を誘き寄せるために村がまだあるように見せてたのかも」
瓦礫の山を横目にどんどん進んでいくと、人骨があった。誰のものかは分からないが、このまま放置する訳にも行かず、埋めてあげた。
「せめて安らかに」
「……終わったかい?もう行くよ。」
「はい」
この人の仇を打ってくれたあの男の人のことを思い出していた。が、
「あれ?本当に男の人だったっけ?」
あの人のことを思い出そうとするとフィルターがかかったかのように分からなくなっていった。
「あの先輩!さっきの男の人って。」
「男の人?あー……あれ?どんな顔だったっけ?すまん忘れたわ」
ニカっと笑った先輩の顔は全然悪気はなく、本当に忘れている様だった。
そもそも最初から認識出来ていたのかも怪しくなって行った。
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