雨(仮称)
頭の中でざらざらと何かがのたうち回っている。
それが蛇なのか、はたまたツチノコというやつなのか、そんなことは今はどうでもいい。
『ザラザラ……ザラザラ……。』
そいつは、僕の頭の中をのたうち回った挙句、さらに激しくもがきだした。静かな暗闇の中に僕の頭の中でだけ、ざらざらとやかましいそいつがのたうち回っている。
『ザラザラ……。ズルッ。』
そいつは、僕の頭を突き破り、そこへはいずり出た。その感覚はまだ経験したことのないはずだったが、なぜかとても懐かしく感じた。
視界がチカチカと光り、機能を果たさない目が眩暈を訴える。次第にそれは明るさとなり、モノクロの景色が目前に広がった。
『足元にはやわらかい針山、目の前には……』
「雨宮君……落ちて。」
その瞬間身体中に、まるで金属バットでタコ殴りにされているかのような激痛が走った。
「雨宮渚さん……災難だったね。千鶴君……。そうか、彼は君の……。あぁ、そのために君はここへ来たわけだ。あぁ、きっと会えるはずだよ。……手違いがなければね。」
「いや、手違いは絶対にないとは言い切れないよ。……それが『約束』だとしてもね。よく考えてごらん、例えば君が君の学校の理事長に賄賂を渡してテストを受けたとしよう。君は好成績を『約束』されるだろうね。でもそれはあくまで君の思い込みだと思うんだよ。人間ってやつが考えることはわからないからね。……その理事長が君を裏切らない可能性がないとは言い切れないだろう?」
「では、『セット』を用意しよう。……『約束』の喫茶店だよ。」
「きっと喜んでくれるはずだ。」