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牧場に引っ越して来ました!

 

初めまして、星降です。……初めましてじゃない人もいるかもしれませんが。ハイファンタジーにお邪魔してます[ジャンル変更の可能性あり]。どうぞよろしくお願いします。


 はい、例によって不定期投稿なのでその辺はご了承ください。

 

 ここがフレッカ伯母さん(おばさん)の牧場かぁ。10年前にも来たことあるけど………やっぱり誰も家の手入れしてないよなぁ。すごくボロボロ。道も草に侵食されてるし………うわぁこれ、牛の小屋とかニワトリ小屋も修理しないといけないんじゃない?って言うか馬小屋ないなぁ。ルイどうしよう。伯母さん本当にどうやって街まで行ってたんだろうか。


 ・ ・ ・ ・


 ローム帝国暦124年、エイプルスの月12日。


 今日僕、ギュミルは愛馬のルイと共に僕が10歳のときになくなったフレッカおばさんから相続していた牧場に引っ越してきた。伯母さんが生前言ってくれてたらしいし僕もここが気に入ってたから相続したんだけど……さすがに10歳では独り暮らしを認めてもらえなかった。 

 僕としてはせめて15で成人したらすぐに引っ越したかったんだけど金がないと困るからと母さんに粘られてようやく金貨10枚貯め終えた17歳の今になって………と言うわけ。

 父さんは商会を継いで欲しがっていたけど、まぁ姉貴と弟が居るし問題ないだろう。アイツ無駄に商才あるんだよな……そんな中、兄貴だからって言うだけで商会を継いでもなぁ従業員も付いてこないだろって話だし。


 さて、とりあえず野営の道具持ってきといてよかった。ちょうどいい感じに木が生えてるし、ハンモックでいいか。虫除けは……虫除け草の匂袋があるから大丈夫だな。

 明日は街でギルドの農業窓口と引っ越してきたから行政窓口にも行かないとなぁ。そうだ、あと商業窓口に行って販売許可書とらないと家が直せないかも。それから近くの牧場の牧場主に挨拶もか。やること多いなぁ。


 うーんまだ空は明るい。寝るにはまだ早いし隣の牧場には行ってこようかな。会ったことある人だし。早いに越すことはない、かな。フィヨルさんという茶髪に湖みたいな蒼の瞳を持つ男性で伯母さんの幼なじみだ。


「ルイ、フィヨルさんの牧場に挨拶に行くから乗せてってくれないか?」


 ルイに声を掛けると「よし、乗れ」と言わんばかりに嘶いた。


 ・ ・ ・ ・


 ルイに跨がり揺られること四半刻。

 伯母さんの牧場がある丘を下りきった窪みにフィヨルさんの牧場がある。少しくすんだ翡翠色の屋根が特徴的な石造りの一軒家とそれに合わせた動物達の小屋。それから控えめな農地が見える。

 近くに木陰でルイを休憩させて家を訪ねる。


「すいませーん!フィヨルさんいらっしゃいますかー?」

「俺はここだー!今作業してるからちょっと待ってくれ!」

「わかりましたー!」


 どうやらコッコ小屋に居るようだ。暫くして小屋から出てきた。


「すまん待たせたな。で、お前は誰………ん?坊主フレッカの血縁の者か?」


 僕の宵闇色の髪と光の当たり方で色が変わって見える瞳を見て思ったのだろうか。


「はい。御無沙汰してます、フィヨルさん。フレッカ伯母さんの兄の孫に当たります、ギュミルです。10年前伯母さんの牧場に遊びに来たときに一度お会いしてますよ。」

「あー。あのときのちっさいのか。でかくなったなぁ。まぁ入れ。で、どうしたんだ?」

「ありがとうございます。実はあの牧場僕が相続してまして、ようやく独り暮らしを認めてもらって引っ越してきたんです。ご近所なのでご挨拶に伺いました。」


 僕がそういうとフィヨルさんは、眉を寄せて僕に訪ねた。


「………あそこに引っ越してきたつーことは、坊主が牧場やるのか?」

「そのつもりですが……?」

「あのボロ家になっちまったあそこでか?坊主いくつだ?」

「17です。ボロ家になってしまったのは僕の責任ですし修繕しながらやっていこうと思っています。」


 フィヨルさんは頭をガシガシと掻いて唸った。


「坊主、よく頑固だと言われないか?」

「そうですか?」

「……しょーがない。フレッカと縁があった大工の工房を紹介してやる。明日街に行くぞ。」

「ギルドに寄って良ければ是非お願いします。」

「あー手続きまだなのか。わかった、ギルドのあと工房に行くぞ。」


 面倒くさそうにしながらも了承してくれる。思わず微笑んでしまう。


「ありがとうございます。では明日朝の3刻で、よろしいですか?」

「ああ、朝の世話を済ませてからにしたいからそのくらいで頼む。」

「わかりました。では、今日はこれで………あ、忘れてました。」


 お暇しようとして、引っ越しの挨拶なのに何も手渡していないことに気がつく。魔道具であるベルトポーチから瓶入りの塩を取り出す。


「これ、どうぞ。僕の生まれは海辺で塩が有名なんです。山の近くでは塩が手に入りにくいと聞いて持ってきました。」

「塩か!ありがとう、この辺だと高いんだよ。自炊するには塩は必須だからな。この辺の奴らなら皆喜ぶぞ。」

「本当ですか?手土産にするのに何が良いか悩んだんですけど喜んでもらえて良かったです。」


 そうそう、と僕は続ける。


「近々、父さんの商会がこちらに行商を始めるらしいので良ければ使ってやってください。なんなら紹介状書きますから。紹介状があれば多少割引いてくれる筈です。」

「はっはっは!フレッカの血縁者に頼まれちゃ否とは言えねぇな。それにあれだろ?その商会、トール(にい)が作ったエーギル商会だろう?」

「そうです、そうです。そう言えば祖父さんもここの出身でしたね。お知り合いでしたか。」

「まぁ、フレッカとは3歳からの付き合いだからな。フレッカの兄弟とも知り合いなんだ。とは言っても俺らが5歳の頃にトール兄は、独り立ちしちまったが。」


 少し間をおいてフィヨルさんは言う。


「でも、フレッカが亡くなるまで手紙は来てたんだよ。」

「あの祖父さんが手紙ですか?」

「ああ。貿易もしてるんだろ?面白いものを手にいれると荷物付きの手紙っても荷物の説明とほんの少し言葉が有るだけだがな。手紙が来る度にフレッカが持ってきて見せてくれたんだ。」


 フィヨルさんは、懐かしそうに呟く。


「おっと、もうこんな時間か。やっぱり今日泊まっていくか?もう遅いし、あの家じゃ寝れないだろ。」

「良いんですか?僕は助かりますが………」

「かまわねぇよ、俺は。一部屋余ってるし。久しぶりに思い出話を聞いてくれる奴も欲しかったしな。そこの部屋使え。」


 フィヨルさんはリビングから繋がっている2つのドアのうち左のドアを指す。


「ありがとうございます。じゃあ、特別に僕秘蔵のヘイズルーン王国の蜂蜜酒を開けちゃいますか。」


 僕はニヤリと笑っていると思う。するとフィヨルさんは目を丸くした。


「なに!?ヘイズルーンの蜂蜜酒だと?本物か?アリスの嬢ちゃんのとこの蜂蜜酒も美味いが、ヘイズルーンの蜂蜜酒が1番だよなぁ。久しぶりに飲めるのか。つーか、やっぱりその腰のやつアイテムバックか。」


「アリス、さん………?」

「ああ、嬢ちゃんは牧場主だ。」

「あ、牧場主の方なんですね。蜂蜜酒って言うことは養蜂やってんですか?」

「……まぁ、そうだな。」

「何ですか?今の間は。まぁ僕はとりあえず果物系統始める前には分蜂した蜂を分けて貰えるといいんですけど………。」


 閑話休題。


「それで、これの話でしたよね。ええ、これはアイテムバックですよ。極小魔石のやつですけど。やっぱり小魔石くらいには交換したいです。意外とすぐ一杯になってしまうんですよね。」

「ぜーたくな悩みだなぁ。アイテムバックは加工するのに費用が嵩むから、ただの少年じゃ手に出来ないだろう?商会の伝か?」

「いえ、これは自作です。魔石さえ手にいれてしまえば意外と加工は簡単なんですよ。」

「魔石ってあのよくわかんねー文字が刻まれたあとのやつだろ?」

「違います。あまり一般的ではないのですが、魔道具には素材……布や革、木や金属の方に魔方陣や魔法文字を刻む方法が有るんです。それなら魔石に刻むものが必要最低限に押さえられるので僕でもなんとか………。」


 それでも1日に2つ作れば限界ですけどねと付け加える。


「へぇそんな方法があるのか。だが俺は作れないな。」

「ああ、初等学校や中等学校の選択科目で魔法学を採っていないとそうそう魔方陣や魔法文字は学ぶ機会が無いですからね。」

「そもそも魔力量があんまりないからな。ま、そんなことより酒だ、酒。ほら、グラス。」

「ありがとうございます。あ、生ハムも有りますよ。おつまみにどうぞ。」

「おう。じゃあ、俺からは特等のチーズを出してやろう。ほんのり炙って食べると美味いんだ。」

「いいですね。でもそれだけだと体に悪いのでキッチン借りられますか?軽食なら材料があるので作れます。」

「あーじゃあ頼めるか?キッチンは使っちまってかまわねぇよ。」

「わかりました。何か食べられないものはありますか?」

「いや特にはねぇなぁ。」

「じゃあ野菜サンドとハムチーズサンドにしましょう。」


 僕はキッチンに立ち、先ほどフィヨルさんに貰ったチーズと僕が持っていた生ハムをスライスする。美食の国コッコルト王国の国民食コルトパンを分厚く切って切れ込みを作り生ハムとチーズを挟む。

 そして野菜サンドの方はレシスタの葉をちぎり、南国のアビィ貿易国の特産品のアボドをコルトパンに塗ってロメロの実のスライスとレシスタの葉を挟み込む。

 これを皿に並べ、アボドの種から採れるアボドオイルをかけて、ピックを刺せば完成だ。


「フィヨルさん出来ましたよ。」

「お、美味そうだな。手際も良いし、器用だなぁ。これで魔道具まで作れるんだろ?」

「まぁ僕の場合、器用貧乏ですけどね。どれをとっても本職の人には敵わないですから。」

「だが、牧場をやるんだろ?けっこう有利だぞ、器用だとな。動物達が柵を壊しちまったときも柵の補強が必要だし、街から離れているから自炊が基本だし、農作物も加工した方が高値で売れるし、何よりモテる。」

「………最後の必要ですか?」

「ものすっごく大事だぞ。だって後継ぎがいなけりゃあ牧場が続いてかないんだからな。」


 喋りながら酒を飲む。僕はときどき食べながら飲んでいるが、フィヨルさんはけっこうなスピードで蜂蜜酒を飲んでいる。


「そんなこと言ってますけど、フィヨルさんご結婚は?」

「お、俺はフレッカ一筋だからいいんだよ。それに甥っ子か姪っ子が、もうすぐうちに来ることになってんだ。ときどき遊びに来てるし。」

「じゃあ今度僕にも紹介してくださいね。お隣の牧場ですし挨拶はしておかないと。」

「む、姪はやらんぞ。」

「えっと……まだ会ったことすらないのにそんなこと言いますか?」

「言う。っていうか俺は言った。姪はやらんぞ、絶対にやらん。」

「……何でも良いですけど、姪御さんに嫌われないようにほどほどにしといた方がいいですよ。」

「わかってらぁ。」

「…………さてはフィヨルさん、酔ってますか?」

「…………そんなことは……んぐ、ねぇ…………ぐぅ。」

「……フィヨルさん、ここで寝ると風邪引きますよ。」

「……んぁ……ぐぅ。」

「ちょっ、フィヨルさん?本当に風邪引いちゃいますよ、起きてください。」

「………………ん。」


 フィヨルさんは立ち上がり、右のドアに入っていった。


「片付けるか…………。これは明日でも食べられるな。」


 サンドイッチは、冷蔵庫にしまう。


「スープが必要かなぁ。卵と野菜のスープなら、二日酔いでも食べられるか?あと、アーサル貝も入れるか。」


 よし、できた。あとは、コルトパンを浸す。って浸すのは食べるときでいいか。ふぁ~眠い。書き置き残しとこう。たしか、使っていいのは左の部屋だよな。寝よう。


 ・ ・ ・ ・


 翌朝、フィヨルさんが寝坊したのはまた別の話。


 登場人物



 ギュミル・エーギル(17)

 器用貧乏な少年。10歳のとき大叔母にあたるフレッカから牧場を相続して17歳になり牧場に引っ越してきた。祖父トールが、貿易商兼行商の商会であるエーギル商会の設立者。現在はギュミルの父がエーギル商会を継いでいる。貴族ではないのに苗字があるのは商会が大きいから。酒豪。宵闇色の髪と光の加減で色が変わって見える瞳を持つ。


 フィヨル(49)

 ギュミルの牧場のすぐ隣にある牧場の牧場主。フレッカの幼なじみ。トールとも面識がある。茶髪で湖のような蒼の瞳の愉快なおじさん。



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