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彼女の“謎”の裏では、こんな事が起きていました。2《ルッツ視点》

次回からはまたアイラ視点になります。今回も短めです。

 「…俺の家に泊める訳にも行かねぇし。仕方ない。アイラの家まで行くか」


 留守だったボブさん宅を後にして。


 「よっ、と」


 アイラを背負い直してから、もう少し先にある牧場を目指して歩き出した。




 



 それから、夜の時間帯の大分暗くなった頃。

 

 無事に牧場に着いた俺は、アイラを出入口となっている古く色褪せた木の扉の横に寄りかからせるように座らせ、アイラの鞄を『すまん、開けるぞ』と断りながら。(意識は無いが、やっぱり黙って開けるのは気が引けるだろう?)家の鍵を探し出して、出入口となっている扉を開いて、中に入った。


 (いやー、しっかし、鍵が鞄の中にあって良かったな…。服のポケットとかに入っているようだったら、取り出し難い…っつーか、俺には無理だ! 取り出せねぇ!)


 室内は外からの月明かりが、カーテンの開いたままの窓から入ってきているからか、真っ暗で何も見えないという状態ではなかった。

 軽く室内を見回し、俺が立っていた場所すぐの所に古い木箱があり、その上にランタンとマッチ箱が乗っていた。


 「っし、これで良し!」 


 ランタンの中のロウソクに火を灯すと、部屋の中がぼんやりとだが明るくなった。


 「よ、いしょっ、と!」


 そして、アイラを横抱きに抱えながら部屋の奥にある簡素な作りのベッドへと、そっと運び寝かせてやり、ベッド上の足元の位置に畳まれていた薄い毛布を掛けてやった。


 「フゥ…これで大丈夫だろ。あんまり無茶するんじゃねぇぞ」


 穏やかな顔をして眠っているアイラの頭を、一度そっと撫でて。


 「えーと“お前は疲労で倒れてしまったので、医院での治療後に、ここまで運んだ。家の鍵は俺が預かっている。また明日の朝、様子を見に来るから。それまでは家に居るように。お大事にな。《ルッツ》”うーん、こんな感じか? 普段、報告書ならともかく、手紙はあんまり書かねぇからなぁ」


 仕事用に持ち歩いている手帳の紙を一枚破り取って、そこにメモを残し、部屋の真ん中にある小さな木のテーブル(これまた年季が入っているようだ)の上に乗せておいた。


 (これで、目が覚めた時に状況が解るだろう)


 開いたままだったカーテンを閉めて、ランタンの火も消した事を確認してから、部屋を出て行き、外から施錠をしてアイラの家を後に帰路に着いたのだった――…


 (あー、明日休みで良かった。俺の仕事も朝早いし泊まり込まないと時間的に鍵が返せねぇところだった。とは言え、例え明日も仕事だったとしても。まあ、本当に泊まり込む訳にはいかねぇんだけどな)


 「ふぁあ…」


 (んー、アイラももう大丈夫だと思ったら、何だか眠くなって来たな。今日は簡単に飯を済ませて、シャワー浴びて寝ちまうか。明日もそれなりに早いしな――…)






 翌朝。早朝、アイラが普段起きているという時間に合わせて牧場までやって来た。


 扉をノックしようとすると、中から何やらアイラの声が聞こえてきた。


 『…――あれれー? おっかしいぞー?』

 『なんで家に居るんだ、私。しかも、ベッドの中』

 


 どうやら、ぐっすり眠っていたようで何よりなアイラは、まだ昨日自身が疲労で倒れた事に気付いていないようだった。


 「…やれやれ、説明してやるとするかね」


 コンコン! コンコン! 今度こそ扉をノックし、中に居るアイラに呼びかける。


 「おーい、アイラ! おはよう、ルッツだ。オマエの家の鍵、持って来たぞー!」


 と、言えば。


 「えっ? ルッツさん? うちの鍵? ええっ、鞄に入ってないっ!? い、いい今開けます…!!」


 髪型が崩れまくり、(あー…髪紐、解いておいてやればよかったな…気づかなくて悪かったな)癖がついた、ボサボサ頭のアイラが慌てて扉を開けて出て来たのだった。


 「よっ、顔色も良くなったし、元気そうだな!」


 この後。俺はアイラに家の鍵を返してから、昨日の経緯を話し、無茶な働き方はしない事、覚えていなさそうだったので、もう一度。夜遅い時には宿に泊まるか警備隊を頼るかするよう、よく注意して帰ろうとしたのだが――…


 「ルッツさん。もう、ほんっとうにすみませんでした!! そして、ありがとうございました!! せめてものお礼に今から朝ご飯作りますから、お時間あったら一緒に、良ければ食べて行って下さい! あっ、それと病院代いくらでした? すぐ払います!」


…――物凄く反省していたアイラの勢いに『お、おう』と返しつつ。そのまま朝ご飯をご馳走になる流れになり“アイラ特製・フレンチトースト、苺ジャムのせ”をご馳走になった。

 

 めちゃくちゃ美味くて、金はちゃんと払うから、また作ってくれないかと言ってみたら『はいっ!』と頷いていたので、俺は浮かれ気分で朝食の礼と、またフレンチトーストを作ってくれる事に対して礼を言い、アイラの家を出たのだった。


 「ルッツさん! 待って、待って下さい! 病院代、忘れていますー!」

 「あ。ああ、すまん」

 「はい! 本当にありがとうございました!」

 

 うっかり忘れてしまった、医院での治療費(今後も、ご近所付き合いするなら貸し借りは無しにしておいた方が良いと思ったし、アイラも同じような事を言った為、しっかりと受け取る事にしたのだ)を受け取って――…


 「あ、そうだ。お前まだ病み上がりだろう? 俺、今日は仕事休みだし動物の世話、手伝ってから帰るわ」

 「え? 大丈夫ですよ!」

 「お前の大丈夫はアテにならん事が昨日判明しているからなー。ほら、せっかくだから力仕事していってやる」


 …――アイラが遠慮していたから、少し強引にではあったが牧場の仕事を手伝って。それから俺は家へと帰ったのだった。


ここまでお読み下さりありがとうございます…!!

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