町に出掛けよう!
あと数話、新キャラ(牧場系ゲーム側のキャラ)登場が続きそうです。“ヒロイン”は、ちょっとお休みです(笑)
少し暗めの、とある日の早朝。今日の天気は曇り空。
私は今日。先日耕した畑へ夏に収穫出来る野菜の種を蒔く為、野菜の種や肥料を買いに、他にも食材や日用品等も買う為、町へ行く予定を立てていた。
「うーん。今日は皆には小屋に居て貰った方が良いかな。曇り空だと雨が降ってくる可能性もあるし、帰りも遅くなるかもしれないしね」
そして、身支度を整えて朝食を済ませてから。
「皆、おはようー! 今日は外には出ないで小屋で過ごして貰うね〜」
牛のモゥモゥさんと、モーモさん。羊のメェータくんと、メーメくん。(実は名前も付けてあったりする。一応言って置くけど名付け、手抜きしてないよ? ネーミングセンスが無いだけなんだ…)体調の変化は無いかと、それぞれ皆に声を掛けながら様子を見て行った後には、ニ頭、二匹が住む動物小屋を掃除し、新しい藁を敷いたり、飼い葉を入れるスペースに飼い葉を追加したり、ブラッシングを済ませ、牛達の場合は乳搾りも済ませた後。
「次は鶏小屋! コッコさん、コケッケさん、おはようー!」
鶏のコッコさんとコーコさんだと思った? フッ、コッコさんと呼び間違えそうだったから、コーコさんというのは避けたんですよ…って、これ誰に言っているんだろう? …ま、いいや。
「今日も有難く卵頂くね――…さて! それじゃ、掃除しよう」
鶏達の住む鶏小屋へ移動し、鶏達に声を掛け様子を見て。産みたて新鮮卵を有難く収穫し、小屋を掃除して、エサも古い物は取り除いてから、新しい物をエサ箱に追加してきた。(うーん、新鮮な葉物とかもあげたいけど、今ウチに葉物無いからなー…これも町で見てくるかな)
「うん、今日はもうやれる事は特に無いかな!」
今日は皆、放牧は無しにしたし、これで出掛けても大丈夫だろう。
王立学園・中等部卒業時に、一番上の兄から卒業祝いに貰った懐中時計をポケットから取り出し、時刻を確認すると八時半に近いところだった。(ちなみに二番目の兄からは木刀を貰った――…扱えるよう簡単な指導付きで。しかし、木刀が役立つ日が来ない事を願うばかりだ)
「うん、時間的に丁度お店が開く頃には着きそうかな。さてさて――…」
私はお金を確認しに小屋へ戻り、ベッド下の奥に隠してある(金庫とか無いんだよね。買うべきだとは思うけど、小さな物でも結構な値段だからなぁ――…)折り畳んだ布袋を引っ張り出し、中を確認した――…のだけれど。
「あれっ…!? 嘘!?」
お金が無くなっていたとか、そう言った事ではなく。
「こ、これは――…!? き、金欠だ!!」
記憶を思い出した幼少の頃から貯めておき、牧場経営と生活の為に使っていたお金を、思っていたよりも使い過ぎてしまっていたらしく。布袋の中のお金イコール私の今の手持ちのお金は…かなり少ない。
「ああー…心当たりが有り過ぎる!…――やっぱりシャワーブース作ったのはマズかった? いやいや、でも。この小屋にはお風呂無いし…風呂もシャワーも無くて川で水浴びとか無理でしょ!? 警備隊に通報されるわ。動物小屋や鶏小屋だって最初から大きいのを建てて置いた方が動物も沢山飼えるし、後で増築するより良いよね? って思ったし――…はぁ、もう使っちゃってるし。こうして考えていても仕方ないな」
父様、母様達から『いざという時に使いなさい。本来ならアイラの高等部での学費に充てようと思っていた金だ』と銀行へ預けられているお金があるにはある。けれど、出来れば、それには手を付けたくはない。本当に本当に困った時には有難く使わせて貰おうとは思っているけど。
「…うん、こうなったら町でアルバイトもして来よう!」
この世界。ゲームの『ぼくハピ(牧場生活☆ハッピーライフストーリー)』同様どこの町にも“ギルド”が存在している。
ギルドでは登録をすれば、様々なアイテムや食材、料理の売買や、(これはギルドを通さず個人同士でのやり取りも可能なんだけれど、ギルドが間に入る事でトラブルが起き難いというメリットがある。ただ勿論、仲介料が掛かるので売上は個人同士の場合よりは減る)主に飲食店や薬屋等の店舗から個人まで。様々なアイテムの納品依頼の請負業務に、日雇い、短期間、長期間の仕事の紹介等も行っている。
特に日雇いは給料が当日払いなものが殆どだし、期間に縛られない。旅費に困った旅人や、秘境と言われるような基本人の住まない場所や、ダンジョン等に生息している、人に害を成す魔物を退治したり、お宝探し(“お宝”と言っても様々なものがある)等を職業としている冒険者さん等に人気がある。
とりあえず、布袋の中のお金を財布に入れて。おじさんに貰った布カバンを肩に掛け、出掛ける用意をした。そして小屋の戸締まりを確認した後、町へと向かったのだった。
約一時間後。町に着いた私は、まず最初に野菜の種を取り扱っている雑貨屋さんへと向かう事にした。
『野菜の種は人気の品種は売り切れるのが早いんだ』
以前、そうおじさんに話を聞いていたので、購入もしくは取り置き出来るなら取り置きをして貰えないかな、と思いつつ。雑貨屋に着いたので、店へ入ると――…
「いらっしゃいませー! って。あら、アイラちゃんじゃない! こんにちは!」
「こんにちは、リリナさん!」
…――店番には雑貨屋『一番星』(ラーメン屋さんかな。って最初思ったよね。何となくだけど)の看板娘であり、男主人公だったなら嫁候補の、鮮やかな赤色から橙色へのグラデーション色の長い髪を高く結い上げ、ちょっと気の強そうな明るい緑色の瞳にツヤツヤでプルンとした唇が魅惑的の美人のお姉さん、リリナさん(ゲームでの年齢は非公開だったんだけど…見た感じ二十代前半かな?)が、立っていて。カウンターから手を振り声を掛けてくれた。
「アイラちゃーん! この前、アイラちゃんから貰った試食のプリン! あれ、美味しかったわー! いつ販売するのー?」
おじさんに町を案内して貰った後、今後お世話になるだろうお店のうち、数店舗にルッツさん同様、ご挨拶がてら、宣伝も兼ねて。試食用のプリンを配って歩いたのだ。挨拶大事だよね!
「お口に合ったのなら良かったです! 次は来週、日の曜日に販売予定です。お昼位までに受け取りが可能な方には、お一人様一つまでですが予約って事で、お取り置きも出来るようにしているんですよ〜」
「え! そうなのー!? それじゃあ予約お願いできる? 楽しみに買いに行くわ!」
「はい! ありがとうございます! お待ちしてますね〜! って、そうだ! リリナさん。私、野菜の種と肥料が欲しくて。トウモロコシ、キュウリ、ナス、トマト辺りの種と苗でお薦めとかあります?」
そう尋ねるとリリナさんはカウンターから出て来て、夏野菜の種や苗が置いてある場所に案内してくれた。
「そうねぇ〜、トウモロコシなら…これと〜、この辺りなら育て易いし、病気にもなり難い品種でお薦めね。ナスなら、これ。キュウリなら、これとこれがお薦めね。トマトなら――…あ〜、そうだ。ごめんねぇ、一番人気の品種は売り切れちゃったのよ。けれど、この二番目に人気の品種も、実は一番人気の物よりは小ぶりなんだけど、お薦めよ。沢山実るし、糖度も高め」
そう言って、テキパキと案内してくれた…のだけど。
「うーん、やっぱり良い種や苗だけあって、沢山買うとなると結構なお値段になりますよねー…あ、肥料はこれが良いかな」
リリナさん、お薦めの種や苗は欲しいと思える物ばかりなんだけれどね――…
「そうねぇー。ああ、その緑の袋の肥料よりこっちの青い袋の方が少し割高だけどお得よ。予算キツイ?」
…――正直キツイ。食料や日用品を買う分も残しておかないといけないし。
「…ハイ。でも、肥料は青い袋の方にします」
来た時も考えたけれど、ここは取り置きをお願い出来ないか聞いてみよう。もし、取り置きして貰えて、日雇いの仕事も見つかったならば。その時は帰りに買いに来よう。
取り置きがダメな場合は仕方がないから一旦諦めて、日雇いの仕事(見つかればだけど)後に、まだ残っていたら、その苗を。売り切れてしまっていたら残念だけど別の品種の物を帰りに買わせて貰おう。
「あの〜…リリナさん。トウモロコシの種とトマトの苗の取り置きってお願いできますか? えっと、肥料とナスとキュウリの苗は、これと、これを一つずつ下さい」
「はーい、ナスとキュウリの苗は、これと、これね。肥料の分も合計して2750ゴールドね。」
2750ゴールドを財布から取り出し、リリナさんに手渡す。
「はい、丁度ね。どうもありがとう! あと、取り置きだけど、トウモロコシの種は仕入れたばかりで在庫もあるから数日は大丈夫よ。ただ、トマトの苗の取り置きは今日中まで、かしら。これも人気の品種だから、品薄でね…」
確実に売れる物なら、買うか解らない客を待ち続けるよりも売りたいと思うのは当たり前の事だ。それでも、トマトの苗も今日一日は取り置いてくれるらしく、私はリリナさんに無理を言っているお詫びと、お礼を言ってから。すぐにギルドへと向かったのだった――…。
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