朝の話。そして、内装作業完了しました!
ほぼアルとアイラの話になってしまいましたf^^;
後半駆け足気味です、すみません。
強い風も無く初夏の日差しが降り注ぐ朝。
「おはよう、アイラ!! 今日も良い朝だな!!」
バァアアン!! と勢いよく小屋の扉が開かれる。あ。この開けられ方、二回目。扉、大丈夫かな――…。
しかし、早めに起きておいて良かった。鍵が掛かっていたままだったら扉が壊れて(壊されて)いたかもしれない。
いやいや、ノックして下さいよ兄様――…なんて思いつつ。
「お、おはようございます、兄様。随分と早いですね」
洗顔や着替えを終え、昨日の夜、代金とは別にテトへのお礼にと作っておいたプリン(ちなみに兄様には今日の夜に作って明日渡すつもりだ)をカバンに仕舞い込み、朝食の準備をしようと思っていた時の事だった。
兄様は町の宿屋に部屋を予約していた為、昨日の夕方、テトが帰った後『戸締まりはしっかりするんだぞ! 知らない人が来たらドアは開けちゃ駄目だぞ! じゃ、また明日な!!』(何だか小さな子供時代に戻った気分になった…)そう言って、愛馬のペガと町へ向かって行ったのだ。
今日。騎士としての仕事は、午後からルナーライトタウンの町長さんと、来週から始まる騎士科の生徒達の校外学習についての打ち合わせがある、と。昨日、パテ塗り作業をしている合間、雑談混じりに言っていたんだけど――…兄様、本当はこれがメインで来ているんだよね? 昨日は私に付きっきりだった訳だけど準備とかは大丈夫だったのだろうか――…。
「兄様、簡単なもので申し訳ないのですが、よかったら食べて下さい」
熱湯でボコボコと数分間、茹でた“コッコさん達の卵〜塩をひとつまみ添えて〜”(ちょっと料理しました風に言ってみたけれど普通に茹で卵です、ハイ)を兄様には二つ、私は一つ。カップには温めたモゥモゥさん達のミルク。カバンからスティック状になって瓶詰めになっていたキュウリ、ニンジン、カブのピクルスを取り出し、それらは食べやすいようにカットした物を混ぜて、白く底が浅めのお皿真ん中に山になるように盛り付けて、テーブル上に置く。うん、緑、橙、白と彩りが綺麗だ。後はパンとジャムをカバンから出せば良いかな? と思っていると。
「おう、悪いな! あっ、そうだ、これ! 昨日、滞在している宿の女将に、明日朝早くに出るって言ったら作っておいてくれたんだよ。一緒に食おうぜ!」
そう言って兄はどこからともなく…いや違う(制服の裾で見え難かったけどウェストポーチ付けていた! って、そうだよね。よく考えたら、荷物を持って来ていない訳ないよね、ハハハ…兄様、すみません。なんだろう、子供時代の私が見ていたヤンチャなアル兄様の印象が強かったみたいです)ウェストポーチからガサガサと茶色の紙袋を取り出し、私に手渡してくれた。
「わ、これは…」
中に入っていた物は――…
「パンだ!」
…――ずっしりとした重さを感じる、ボリュームのありそうな丸いパンが二つ入っていた。
「中にチーズとかベーコンとか芋とか入ってるらしいぜ!」
お、美味しそう…!
「ありがとうございます、兄様。でも、これは兄様の朝食ですよね? 私が一つ頂いてしまっても良いのですか? 兄様、量が足りなくないですか?」
「ん? ああ、そうだが、何だよアイラ! 遠慮なんかするな! 量はお前が用意してくれた物もあるし問題ないぞ! まあ、なんだ腹が減りゃ、そこらの野草でも摘んで食えば良いだろ!」
そう言って、ニカッと笑う兄様。私も笑って『ありがとうございます、兄様。では、遠慮なく頂きます』と、有難くパンを一つ頂いた。
この世界に電子レンジは(恐らく)無いので、鍋でお湯を沸かして。そこに、しっかり蓋を閉じたタッパー(兄様と私の分のパン入り)を入れて温めてみた。
「美味しいですね、兄様!」
「だな! 美味い。お前のところの卵やミルクも美味いし!」
熱々には温まらないけれど、ほんのりと温まったパンは、とっても美味しかった。勿論、コッコさん達や、モゥモゥさん達の卵やミルクもいつも通り美味しかった事は言うまでもない。
今日はいつもより、美味しく楽しい朝食になりました。ありがとうございます、兄様。
美味しい朝食を食べた後は、いつもの日課を済ませて(兄様が手伝ってくれたので、早く終わった。ちなみに、鶏達の放牧を頼んだ際にコケッケさんに背中を蹴られていたんだけど――…何故そんな事に??)、テトが来次第、壁紙貼りをする事になっている。
それから、間もなくテトがやって来て、今日は問題なく。壁紙貼りの作業は午前中の内に完了したのだった。
「テトさん、兄様。本当にありがとうございました!」
壁紙を貼る時に使った、竹ベラ、カッター、ハサミ等を片付けて、脚立を外に出しに来たテトと、残った糊が入っているバケツを洗う為、外に運び出してくれていた兄様に。
私はハケやヘラ、糊付けに使ったローラー等を洗い終えてから、お礼を告げた。
「いや、オレも勉強になったシ。良い感じに仕上がっテ、良かったナ」
「そうだな! 寒々しい小屋ん中が明るくなって良かったな! 後は明日俺が屋根、アイラが外の壁にペンキを塗れば完璧だな!」
と言う、兄様の言葉に――…
「あの、兄様? とても有難いのですが、お仕事の方は大丈夫ですか?」
…そう尋ねると。
「ああ、問題ねえ! 騎士候補生…ああ『騎士科』の生徒な。そいつらの宿も、しっかり確保してあるし日程も確認済みだ。校外学習の内容や、野営体験もあるんだが…場所についてはこの後、予め作っておいた予定表を町長に提出して、訓練や立ち入りを禁止する区域が範囲に入っていないか等の確認と許可を貰っておく位だし、買い出しが必要なモンの調達については候補生達にさせるからな。まあ、明日の夕方辺り王都へ帰りがてら、それぞれ店の人達に挨拶しておく位だな」
兄は仕事(本業)も問題なくやっていたらしい。
片付けが終わり、テトに壁紙貼りの代金を兄様が払ってくれた後。牧場の入口までテトを送りがてら一緒に歩いた私は、カバンから容器に入ったプリンを二つ、袋に入った状態で取り出した。
「テトさん、あの、これ。あまり日持ちしないので二人分だけですが、プリンを昨夜作ったので、お店のおかみさんと一緒に、もしよかったら食べて下さい。容器はまた今度町に行った時にでも取りに行きますので、捨てないでおいてもらえると助かります」
親方さんはまだ暫く戻らないみたいだから、テトとおかみさんの分だけ手渡した。
「エッ、いいのカ? 何だカ気を使わせてしまったナ。だが、アイラサンのプリン、美味いシ、オカミサンも食べてみたいと前に言ってたかラ、喜ぶヨ。ありがとウ。ヨウキも捨てずに取っておくヨ」
そして、テトはプリンをウェストポーチに仕舞い込んでから、手を軽く振り『アイラサン、またナ! もシ、何か作って欲しいモノや修理が必要なモノあったら、いつでも店に来てくレ!』と言って帰って行ったのだった。
ここまでお読み下さりありがとうございます…!!