02 なんか、思ってたんと違う1
おにぎりの具は入ってなかった。ついでに言うと、塩すら振ってなかった。こんなおにぎりは嫌だ。
さて、おにぎりを食べてお腹いっぱいになったから、思い出しますか、できれば思い出したくないけど。こういうときって、何年前のことなんだろう。多分、七年前かな? えぇっと......それは、七年前のことだった。
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ふと気がつくとそこは、白い床で、壁が見えないくらい広いところだった。いや、壁はないのかもしれないけど。
「んー、さっきまで何してたっけ? 確か、ご飯食べて、いや、学校に向かったっけ? いや、私服だったような、じゃあ学校じゃないのか? あと、急に男に可愛いからって告られたっけ? どうだったっけな......うん、にしてもすっごい広いところだな」
因みに、こういうときは考えなければいい、と僕は考えるのを放棄したのである。
「ヤッホーって叫んだら声が跳ね返ってくるかな?」
目一杯息を吸い込んで、思いっきり叫んだ。
「ヤッホー!!」
「お呼びでございますか?」
後ろから声がかけられてビクッとした。すっごいビクッとした。だって誰もいないって思ってヤッホーって叫んだら執事みたいな格好の人に後ろから声をかけられたんだよ、誰もいないって思ってたのに、これはさすがに誰でもびっくり、する、はず?
「疑問形になっております。自信を持ってくださいませ、きっとみんなびっくりいたします」
「っっ!!」
心の中読まれた? ってことは人外的な感じかな?
「あなたがたの言うところの神と呼ばれる領域の存在、とでも思っていただければ宜しいかと、いや、私は神に仕える天使ですかな? まあ、そんな感じでお願い致します」
「は、はぁ......」
その自称天使さんはポケットから懐中時計みたいなものを取り出して如何にもめんどくさそうな顔をしてからこっちを向いていった。
「もうすぐ来ますからお待ちください」
誰がだあーと叫びたくなった。
「それは私が仕えているいわゆる神にあたる人です。人じゃないけど」
あ、心読めるんだった。
「はい、読めますよ。そろそろ来るはずなのでもうちょっとお待ちください」
何度も懐中時計を見ながら行ってきた。てかなんで僕いるんだっけ?
「それについても後ほど」
丸投げじゃないかっ!
「丸投げですいません。しかし、こういうことは神からの言葉でないと、もう少し待ってはいただけませんか?」
そこまで言われたら、待たないわけには行かないよね。十分くらいなら待てるし......ね。
結局神とやらが来たのはそれから一時間くらいしてからだった。この1時間二人とも無言だった。
はい、そこー来るの遅すぎじゃね? とか思わない。それ一番最初に思ったの多分僕だから。あ、自称天使さんか、最初に思ったの。
まあね、多分この神様普通の人じゃないな。だって鼻から上が何も無い空間に浮かんでるんだよ、絶対に変なひ、あ、危なかった自称天使さんが心を読めるんだったら、神様でも読めるよね多分。変なことは考えないようにしないと。
そう考えて自称天使さんの方を見るとなんか笑いをこらえていた。なんでだろ。
そこからさらに三十分くらいしてやっと神様ことルシファー様が......だめだ慣れない。もう、神様でいいや。で、その神様がやっと全身を何も無い空間から出したんだけど、すっごいもじもじしてるのね。さらに、太ってて、顔は汗でぎっとぎと、ダサいメガネかけてて、不細工。見事に持てない要素をつぎ込んだ人みたいな感じの容姿してて、言ったら悪いけどダメな方のヒキオタニートみたいな雰囲気を醸し出している。こんな大人にはなりたくないよねって感じの人ってか神様。
「あ、あなたは、かわ......じゃなかったあ、あなたは死にました?」
いや、なんか聞いてきたんですけど......ていうか多分可愛いって言いかけたよね? マジで困るんだけど。まず、男だし僕、女っぽくても男だし、ちゃんとついてるもんついてるから。あと何となくそうかなぁとか思ってたけどやっぱり死んでたか、僕。自分で言うのもあれだけどちゃんとコミュ症の人を馬鹿にしないで、しっかりと相手するからね。
「あ、あの、せ、生前のき、記憶とかあり、あ、ありますか?」
「あ、いや、あります、けど。ちょっとところどころ欠けてますかね」
そう言って苦笑いをすると、神様は顔を赤くして、何かニヤニヤしだした。うわぁ、鼻息すごい。
「え、えとえと、あの、ふ、ふひひ、セ、セルビスせ、説明してくれ」
「かしこまりました」
そう言った自称天使さんことセルビスさんの顔はにこやかだったが、目が怖い。目だけ笑ってない。自称天使さんってセルビスさんっていうんだね。セバスチャンじゃないんだね。
「ええ、そうですよ。さて、千鶴さんとりあえず記憶を探らせてください。すぐに終わるから大丈夫ですよ」
そんなことを言っているが、俺に拒否権はない。このセルビスさんの目が証拠だあ。な、なんか闇に包まれてる目をしてるんだもん。これは断れないって。
セルビスさんは、手を僕の頭にかざして瞬きを3回して、ほっと、落ち着いたような笑みを見せた。
「良かった。記憶が欠けている部分がとても少なくて本当に良かった」
楽だからかな? 多分楽だからだよな。
「はい。そうです」
ですよねー。まあ、自分の死因は気になるよな。
「しっかりと順を追って説明しますね。まず、あなたの最後の記憶の周辺をしっかりと固めて行きます。最後の記憶が告られたということでよろしいですか?」
「はい。そうです」
多少は違うが概ねあっている。男から告られたんだけどな。同性からだよ?そんなのやだね。私服で黙って立ってれば普通に可愛い女の子って言われる僕も悪いのかもだけど、いやいや、勘違いする方が悪いと思う。
「いえ、喋っててもそう思われる方の方が多いかと......」
ええ、そうですよ。薄々気がついてはいましたよ。ちょっと頑張れば女子から見ても嫉妬するくらい可愛いってことくらいはね。でもね、認めたくなかったんだよ。
「す、すみません......で、その後図書館でしばらく勉強してたようですね。そこでもヒソヒソとされてしまったみたいですね」
あー、勉強関係だから、学校かなって思っちゃったんだ。ヒソヒソって、あの子可愛いなとか言われてるんだろうなって思いながら勉強してたよ。
「その帰りに図書館前の道路の明らかに青信号の横断歩道を渡っている時に時速100キロごえのスポーツカーが来てたようですね」
あ、その車に轢かれて死んだんだろうな。
「あ、いえ、その車はあなたに当たる前に駐車場から出てきていた別の車に当たって、見事にあなたのことを避けていきましたよ」
えー、なんかすごいような悲しいような。てことは、死因は交通事故じゃないってことだろ、じゃあ何だろ。
「あー怖かったとか言って帰ってるときにあなたは血のついた刃物を持っている人に人質にされてしまったみたいですね」
そのまんま成り行きで殺されてしまったという感じかな?
「いえいえ、あなたがそのまま撃退したんですよ、みぞおちを殴って、股間を蹴って。本当に危ないんですから次はそんな事しないようにして下さいね」
「は、はい」
まじか撃退したのか。全然覚えてないぞ。んー、ということはなんで死んだんだろうか。
「あなたが家に帰って、ご飯を食べている時に、それは起こった」
食事中ってことは食中毒とかかな? だとしてもしっかり調理すれば、食中毒なんて起きるわけがな......
「お、正解です。やっぱり食事したら食中毒ですよね。冷凍のナゲットが出てたみたいなんですけど、それがダメだったみたいですね。かなりやばくて、三時間くらいトイレにこもった挙句病院に行きましたから、あなた。」
......それは、相当やばいな。まさか、そのまま死んだんじゃなかろうか。
「大丈夫です。生きてましたよ。今は死んでますけど」
なんかこのまま死なないんじゃないんだろうか。そう思ってしまう今日この頃。
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