01 転生し……あれ?
私はリーナ・ブラシスト6歳。なんてことのない......わけでもないけど、ここナティーブの町の町長の次女だよ。
うちは、父と母に兄2人と姉、弟がそれぞれ1人ずついて私を合わせて七人家族なの。そして、街のハズレの方にはおじいちゃんが住んでるよ。そこそこ大家族なの。すごいでしょ。
今日は近所のお友達とお花摘みに行こうかなって思ってるの。別にトイレに行きたいわけじゃないよ。
......よく考えてみると、明日は私の誕生日じゃん日で7歳だぁー。ということは、明日はごちそうかな? 来年からは、町の学校でお勉強も始まるはずだからとても楽しみなの。あと、何回寝れば学校が始まるのかな?
とても楽しみで......あ、7歳になったらうちに来いっておじいちゃんに口酸っぱくいわれてて、耳にタコができるくらいうるさかった。そんなに言わなくてもわかっているって言ってたのに今の今まで完全に忘れてた。しょうがない、明日はおじいちゃん家に行こうっと。
ご飯を食べに行こうとしてドアに手をかけた瞬間、目の奥がちくりと痛んだような気がした。
「なんかチクチクする」
ついそう言って目をこすったけどまだ治らない。それどころがどんどん痛みがそれも急に大きくなってきてバタッと倒れてしまった。
「......っえ?」
激痛に声を上げる暇もなく、何が起こったのかがよくわからないまま、私は意識を手放した。
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僕は佐々木 千鶴、一応男で17歳で高2......のはずなんだけど、さっき気がついたらなんか女の子の部屋っぽいところで倒れていた。しかも、明らかにここが日本ではないとわかる物や、使い方がわからない道具もある。
たとえば、この浮いている四角い光るキューブみたいなのがそうだろう、キューブの周りに手をかざしてみても、手になにも引っかからないので、原理も動力源も不明だ。
もしかしたら、ファンタジーな世界に来てしまったのではないだろうか。ちょっと嬉しいんだが、少し体に違和感があるのだ。
まずはなんか体が動かしにくい。麻痺って動けないとかじゃなくて、動かし方がわからない感じなのだ。それに、視点の高さもそこそこ低くなっていて、違和感しかない。今までのことから考えて、異世界転生というものを現在進行形で経験しているのだろう。まあ、ここまでは許容範囲だ、いや、十分におかしいがまだ許せる。
しかしだ、一つだけ許せないことがある。まずは、少し青みがかった銀髪が腰のあたりまで伸びているのだ。さらに考えたくもないことがある。そう、例のアレがないのだ。アレはアレだ、その、男だったら必ずついているアレだ。
すごく嫌な予感がして、部屋の中を見渡すと窓の近くに鏡があった。
その鏡を覗くと、なんとかわいい女の子が写っていた。
「え、は?」
素っ頓狂な声をあげて呆然としていると、目の奥がチカチカして、激しい頭痛がして、立つのもやっとの状態になった。そのままうずくまっているとだんだんと楽になってきたが、すぐに体が熱を帯びてきて気を失ってしまった。
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気がついたら夕方で多分だけど自分のベッドの上で横になってた。ちょっと暗い中起きたら目の前にファンシーな感じの猫がいてびびったけど、頭を冷やすためのタオルに刺繍されていた猫だと気づいて恥ずかしくて顔を赤くしたこと以外は特に今の時点で悪いことはあんまり無かったとは思うけど、ちょっとだけいいことがあったのです。今までのことほとんど思い出したよ。前の世界のことから今の世界でのことまですべて思い出しましたとも。
まあ、記憶に穴があるからちょっと記憶を整理しなきゃいけないけど、それはもうちょっと後でいいや。お腹がすいたからなにか食べなければ。枕から頭を上げないまま左を見た。そこには、↑三途の川 ←入口(一方通行) ↓奈落の底という文字が書かれた看板みたいなぬいぐるみがあった。
「で、出口ないじゃん」
もちろん普通に笑った。だってあれ絶対死ぬもん笑わない方がおかしい。いや、僕の笑いのツボが浅いだけかもしれないけど......
そのまま右を見た。げっそりとしている幼女の顔があってびびった。それが自分だとわかるまでに三分の時間を要した。もし数々の名言を残して三文字の言葉で目を潰された大佐がいたら、もう待ってはくれないだろう。
「それにしてもひどい顔をしてるよな。ちゃんと元の顔に戻るんだろうか」
そこがとても心配だ。このままじゃお嫁に行けなくなっちゃう。行く気どころか結婚する気もさらさらないけど。
少し首を上げて自分の足の方を見るとなんか変な生物がいた。それは、鯛と、カニと、牛を足して三で割ってから、美味しくいただいた人をカメラで撮った人くらいおかしな人をストーキングしている人くらいにうまく隠れようとしているスライムがいた。びっくりである。本当にいろんな意味でびっくりである。なんか、ちょっとかわいい......かも?
因みに、今はぷにぷにとしているスライムだが、元気がなくなってきたり傷ついたりするとだんだんとドロドロとしてくる。
まあいいや。そんな事よりご飯はどこだご飯は。
「こちとら腹減ってんだよ! ご飯よいいかげん姿現さんかい」
おっと、つい叫んでしまった。少し動けるようになったようなので起き上がると、スライムが仲間になりたそうにこちらを見ている......わけではなく、いや、仲間になりたそうに見てるか? ......違う、申し訳なさそうに見てたのか。ちょっとがっかり。床の上に空の皿があった。
「ま、まさかこのスライムが食べたとか? いやいや、そんな事......ありうる」
よく見るとスライムにふやけた米粒がいくらかついている。
そうかそうか、君が食べたのかなぁ。うんうん、あははぁ、うふふぅ、食べ物の恨みは怖いんだぞぉ。
因みにではあるが、後に、この時のことをスライムは、あの時のリーナさんは、どこかがおかしかった。まるで魔神にでも睨まれたようだった、いや、それ以上に恐ろしいものかもしれない。と、供述して、絶対にリーナさんと敵対したくない。特に、リーナさんの食べ物の恨みは買いたくないと、それはそれは気をつけることとなる。
まあ、それはさておき斯々然々、紆余曲折......つまりは、結構いろいろあってとりあえずスライムは半殺しにして、私は部屋を出た。ご飯のために。
とっても美味しそうなおにぎりがドアの外においてあった。具はなんだろうか。多分お米じゃないけど、いい匂いがしてるから別にいいもん。
またスライムに食べられたら嫌だもんね、スライムをタオルで包んで、タオルが解けないように、そしてスライムに当たらないように壁に釘で打ち付けた。後で怒られるかもしれないけどまあいいでしょ。スライムよ、そこで、しっかりとそれはもうしっかりと反省してからドロドロになってタオルの隙間から出てきなさい。
おじいちゃんに貰った、滋養強壮に良くてとっても健康になってHPも長期間に渡って回復するけど、味がひどく回復する時間の倍は口の中に味が残り、飲むと宝くじにも当たるこの......いや、宝くじには当たらんけど、とっても元気になれる薬液? ポーション? をタオルの下と、タオルに染み込ませておくからね。