やきもち
どうしようアイが口を聞いてくれなくなった。
「アイ、どうしたの?気分でも悪い?」
「怒らせるようなことしたかな?」
「ねぇってば」
冷や水をかぶった気分になって、今まで感じた幸せが自分の胸から漏れ出すのを感じた。
このままほおっていたらアイが薄れてしまって、自分の前からいなくなってしまうような気がしてとてもつらかった。
「自分の胸に聞いてみてください。」
やっとアイから帰ってきた言葉は、こちらを突き放すようで泣いているのか震えていた。
私にはこの人に相談することしか道はなかった。ほかに女性の知り合いはいない。
「ユイ姉。アイが私と話してくれなくなってしまった。私は何がいけなかったのだろうか?」
「そうですね…。いいですか?アイはご主人様が倒れられたとき私が舐めた手を泣きながら舐めていました。まるで自分の臭いを着けて上書きするように。」
「それって…?」
「ご主人様が私に名前を付けるのを見て、アイはやきもちを焼いてしまったのだと思います。」
「うん?」
「だから、ご主人様はアイに血を飲ませてあげるのが一番良いと思います。」
「わかった。」
「アイ、ユイ姉ばかりかまっていて悪かったね。」
「マスターは嘘つきです!!私のことが大切だって言ったのに!!!やっぱり胸の大きな女の方がいいってことですか!そうならそうとはっきり言ってください!!」
「そんなことはない、アイの体だって素晴らしいよ。私はアイと話すとき意識して君の目しか見ていなかったんだ。それはひとえに、君が魅力的過ぎて瞳以外の部分を上手く見ることができなかったからなんだ。君の刃物としてのプロポーションも素晴らしい。重心位置、刃の角度、グリップ性能どれをとっても私の手のひらにあつらえて作ったようだった。君に出会えた時、鳥肌が止まらなかったことを今でも覚えている。」
「そこまで思ってくれているならどうして!!どうして私を一番大切にして下さらないのですか!!!」
「私は君たち刃物を一つの家族として考えている。だからこそみんなを平等に扱いたいと考えているんだ。」
「ユイ姉ばかりずるいです。彼女だけがご主人様の…血を飲んでいます。」
「アイ、待たせて悪かったね。私の血でよかったら飲んでくれるかい?」
マスターはずるい
「マスターのがいいんです。」
「ここに寝ればいいのかい?」
「はい、肩の力を抜いてリラックスしてください。」
アイに馬乗りにされる。もちろんこんな経験は私にはなっかった。初体験だ。アイの女性らしい、妙にやわらかいふとももがわき腹にあたってなんというか、良い。
「ややっぱり、その前に体を洗った方がいいんじゃないかな?」
「そのままで、その方が香りが強くていいです。」
アイが体を傾けてくる。ちょうど抱き合うような形となった。香るのはアイの甘い香り。初めて”お帰りなさい”と言われた時と同じ匂い。椿の香り。彼女に着けてあげていた防錆用の椿油の香りだろうか。私は汗臭くないだろうか。
「今なら後戻りできますよ?」
「そんなこと許すのかい?」
「フフフ、まさか。 それではいただきます。」
カプッ ジュル.....




