空の神兵
ん、ん、ん、ん、ん、
「はあ、ご主人様、気持ちいいですかあ?」
「凄く気持ちいいよ、ニーナ。」
「どうして、こんなに固くなるまで我慢されていたのですか?言って下さればもっと早くこうしていたのに。」
何のことはない。今私は肩をもんでもらっている。程よい力加減で中々心地よい。
「痛みに慣れちゃってね。」
「これからは、いつでもこのニーナにお任せください!」
「ありがとう。はいこれはお駄賃。」
近所に駄菓子屋は無いから太っ腹に500円。可愛らしい彼女にやってもらえたとなったらこれでも安いくらいだ。
「こんなにもらえません!」
「コンビニでお菓子でも買うといいよ。貯めておいて好きな物を買ってもいいしね。」
「うー、もらっておきます。」
小さい子は正直なのがいいね。
ピンポーン
お客さんかな?
「こんにちは、私は陸上○衛隊から来ました、矢野と申します。剣太さんでしょうか?」
そこにいたのは制服に身を包んだお兄さん。20代後半と言ったところか。
「はい、そうです。」
「実は刃物に関して、お話があってきました。」
面倒事じゃないといいけど。
「家に上げてもらってもいいでしょうか?」
「汚くてもよろしいなら。」
とりあえず上がってもらった。ユイ姉にお茶を頼んで向い合って座る。
「いやあ、私の隊は貴方の話でもちきりですよ。広報のおっちゃんは『展示物が女性になってしまってどうしたらいいか分からない』って頭を抱えていましたw」
「ご迷惑をおかけしているようで、申し訳ないです。」
「あ、いえ!そのために言ったのではないのです。実は彼女達が”どうしてもあなたに会いに行く”と聞きませんで、でも、彼女たちの多くはサーベルや刀なので簡単には外に出してやれないんです。なので血だけでも、貴方にもらって彼女たちをなだめようかと。」
「そういうことでしたか。わざわざ来てもらって申し訳ないです。用意して送らせてもらいます。それから時間を見つけて定期的にそちらにもお邪魔したいと思っています。」
「助かります。それと、ここからは個人的な相談なのですが、貴方の横に控えている美しい女性は貴方の刃物ですか?」
「はいそうです、私を支えてくれています。」
「初めまして、アイと言います。」
(やはり、自我を持っているのか。それにしても人間と変わらない。おかしいとすれば美しすぎることぐらいか。アイドルだって彼女の前だとくすむぞ。)
「どうか、私の刃物にもその力を与えてもらえないでしょうか。」
「どのような見た目になるか、どのような性格になるのかは決められませんよ?」
「もちろんそこまでは望みません。ただ、私は空挺部隊に所属しています。私の部隊は落下傘を背負って敵地のど真ん中に降りなくてはならなくなる時が、いつ来るとも知れません。その時、心を交わした道具に支えてもらいたいと思うのです。」
そこまで言われたら断れないじゃないですか。
「分かりました。あなたの刃物を見せてもらってもいいですか?」
取り出されたのは使い込まれたナイフ、グリップ底は黒い塗装が剥げてしまっていて、ハンマーのようにして、硬い物を叩いたのを想像できた。刀身はグリップの中心線の延長上に切っ先が来ていて、まさしく刺すためのデザインと言えた。刃に軽く触って分かるその鋭さ。どれをとっても大切に使い続けてきたことが容易に想像できた。
「それでは今から力を使いますので少し離れていてください。」
親指をそっと乗せてスライドさせる。良かった、漏れ出す光は白だった。
光が収まったそこには
ヘルメットをかぶり、上に迷彩服、下にジャージを装備した女の子がいた。頬っぺたにはドーランで塗ったと思われる二本線。目をくりくりさせて彼女の持ち主を見ている。
「お前が俺のナイフか。」
「はい!そうであります!!」
「ジャー戦とはwww課外時間かwwwww」
「自分は貴方のような方に出会えて幸せ者であります!!」
「そうか。今日はケーキでも買って帰って一緒に食うか。」
「はい!!」
なんか、こういう関係もお父さんと子供みたいでいいな。
お見送りの玄関にて
「世話になったな。一つ礼に、ひとり言だ。『国がお前をほおっておかないだろうから、やばくなったら国外に逃げろ』以上。」
「時間を無駄にしないようにな。少年」
言われるまでもありません。
用語解説
ジャー戦:課外時間駐屯地内ファッション。下にジャージを着て上に戦闘服(迷彩服)を着る。
ドーラン:迷彩効果を高めるために顔に塗る化粧




