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新たなる出会い

 アイの説得を何とか終えて、私が次に人の姿にしたいと思った刃物は「un○ted cutlery 製 M48 HAWK」いわゆるトマホーク、一般には手斧と言った方が分かり易いかもしれない。この一本を選んだ理由は、なんとなく力強い仲間になってくれるという予感がしたからだ。古くは木を切り倒したり、木の皮をはいだりする便利な道具であり、また、強力な武器でもあった。このM48 HAWKはベトナム戦争で使われた個体の子孫にあたる。燃料タンクに穴をあけることなどに使われた、刃の反対側にせり出したとがった部分がまだ残っており、丁度Tの字のような形をしている。その大きく重い重量は私の所有する刃物の中で最も大きな破壊力を有する。まき割くらいにしか使っていないが。

 アイは私が講義を受けている間、ずっと一人で私の帰りを待っていなくてはならない。女の子にとってこのことは苦痛であろう。良い話し相手となってくれればと思った。そして、ないとは思うが外敵の侵略に対しての戦力の増強。この提案でアイはM48 HAWKを次の”人になれる力”を授ける相手として認めた。しぶしぶであると顔に出ていたが。


「それじゃ早速、人の姿にしてあげたいのだが、どうしたらいい?」

「はい、それではマスターの血を力を与えたい刃物自体を使って自らの体を傷つけ、刃に含ませてください。」


「え?」

「やはり、そのようなことは望まれませんよね?私がこの身に変えてもマスターを守りますので今回のことはなかったことに…。」

絶対に痛いじゃないか。でもこの子たちは私に会うのを楽しみにしていると言っていた。


「いや、一度決めたことは最後までやり通そう。切るのは手のひらで良いか?」

「指先を少し切れば十分です!!私たちの変わりはいますが、あなた様は一人しかいないのです!もっとご自身の体を大事になされてください!!」

 アイは自分のことはすぐに差し出そうとするのに私のこととなると、急に人が変わったように必死になる。心配してくれているようでうれしいが、自分自身を大切にしないのは私も許せなかった。

「アイ、いいかい?自分の変わりがいるなんて悲しいこと言うな。アイと同じ規格で生まれたナイフは数あるが、君は一人しかいないんだぞ!」

 きっとまた同じIMF2に力を与えても同じ結果になると。私には到底思えなかった.


「マスターはそこまで…。そこまで私のことを大切にしてくださるのですね。そんなことを言われてはもう、他の人に使われても満足できなくなってしまいそうです。」

「なんだ、そんなことか。君たちを私は生涯手放すつもりはないよ。」


 (ああなんてお方だ。マスターにこんな素敵な言葉をかけられたら、きっとみんな恋をする。私たち刃物が嫉妬深いということをご存じないのだろう。取り合いになってしまう。やっぱり私がマスターのおそばについて守ってあげなくては。)



「それじゃ早速血を含ませようか。」

 刃に直接親指の腹を置き、ゆっくりとスライドさせる。

はじめは熱いものに触れたような感覚が、次に氷に指を置いているような鋭い冷たさが指先に宿る。アイが固唾をのんで見つめているのが分かった.


 瞬間、狭い6畳間に鋭い閃光が走ってとても目を開けられなくなった。驚き、とっさにM48 HAWKを手から落としてしまうが床に落ちた音がしない。


 白一色となった視界が段々となれ、目の前には見知らぬ女の人が立っていた。


「お力をいただき、無事、新たなる体を手に入れることが出来ました。M48 HAWKでございます。これからどうぞよろしくお願いします。可愛らしいご主人様。」


 礼儀正しくそう言うと彼女は跪き、私の右手をとって手の甲に回った私の血を舐めた。



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