謝罪
ニーナのことを構いすぎてアイが口を聞いてくれなくなった.帰り道でも一言も口を開いてくれなかった.こうなるのは今回で二回目だ.私は阿呆だ.彼女の気持ちを分かっている風に感じて,実際は,ほんの一握りも分かっていなかった.彼女が,他の刃物を扱う私のことをどんな目で見ていたのか,私は知ろうともしなかった.持ち主失格だ.
家に帰ると彼女は,何も言わずに刃物に戻ってしまった.刀身は小さな傷ができて刃がなまってしまっているようだった.それで気が付くことができた,彼女が何を望んでいるのかを.
すぐに砥石を用意する.砥石が水を吸っている時間さえも惜しい.一刻も早く彼女を綺麗にして謝りたかった.
研いでいて,気が付いた.彼女は特殊な硬い鋼材を使用して作られていて,鋼とは全く違う匂いがする.その硬さゆえに長期間の使用を可能とするが,それが今回の失敗に繋がってしまった.彼女ならきっと大丈夫だろうと,思ってしまった.
数時間をかけて両面研ぎあがり,いつもはここで,自分の爪に食い込ませて切れ味を確かめるが,今日は自分の指を切って切れ味を確かめる.この失敗を,この痛みで忘れないように.
すると,いきなり手の中からナイフが無くなって,目の前に水でびしょびしょになった服を肌に張り付かせたアイが私の膝の上に跨るように表れた.彼女は泣いていた.
首に抱き着いてきて
「私が,一々いじけないと,かまって下さらないのですか?」そう言ってきた.
「ごめんよ.二度と同じ失敗はしない.」
「そう言ってまた,失敗するのですね.マスターは刃物に愛される才能はあるようですが,刃物娘の扱い方に関してはまるで素人です.」
「今回は許してあげます.でも今後,私に構わないと貴方を監禁します.」
良い笑顔なのに,冗談に聞こえない.冗談だよね?
「血をください.飢えています.」
久しぶりに直接アイに血をあげることになった.
首筋にアイが,顔をうずめる.髪が当たって少し,くすぐったい.
カプ ジュルルル
そういえば,アニメで吸血鬼の女の子に血をあげ時に終わりの合図として背中をポンポンしていたことを思い出した.
なので,アイで試してみることにした.
ポンポン
「?」
ジュルルルルル!!!!!
もっと強く血を吸い出された.違うんです.そうじゃないのです.
夜になって,ニーナが訪ねてきた.
「こんばんは,お兄さん,その,お礼を...届けに来ました.」
何もいらないって言ったのに.
「お礼は..その....私で,お夜伽に..参りました.」
お夜伽?たしか,夜伽話とかいって,昔話を聞かせる行事があったな.それの事かな?
「よく来たね,外は寒いから中に入って.」
この暗い中,一人で来たのだろうか.女の子がこんな時間に外をうろつくのは良くないな.
この日,お布団の中で突然服を脱ぎだしたニーナに驚き,見てしまった,その白玉の様な肌に狼狽しながら話を聞き出したことで,彼女たちが差し出した”お礼”の本当の意味を知ることとなった.
アイには耳に噛みつかれた.




