エンジェルの始まり
朝起きると、首の辺りが冷たい。どうやらAKちゃんが抱きついたまま眠って、寝ヨダレを垂らしたらしい。彼女も私になれたかな?
「おはよう。」
「オハヨウ。」
にぱぁ。と開けられた口からは雫が垂れて、銀の糸を生成している。
はいはい。ふきふきしようね。
あ、アイ。
「おはよう。」
だばぁ。小さな川かなってくらいヨダレが…私の上に。
ボタ、ボタボタ。
「何してるの?」
「マーキングです。これは私のだぞーって主張してるんです。ね、私の食料さん。」
Akちゃんを優先して寝たせいか、私の扱いがマスター(主人)から、食料に降格している。下がりすぎじゃないですかね?ふざけてみようか。
「私がアイのことを食べちゃうぞー!」
肩をガシガシする。勿論痛くないように優しく。さて、食料に食われる感情はどんなものかな?
「は、」
「は?」
「はひぃ!!」
彼女の理解できる要領を軽く越えたらしい私の行為は、彼女に鼻血を出させた。
こぷぅ。鼻が真っ赤な提灯を生成している。だが、その表情は幸せなようだ。
しっかりティッシュを鼻に詰めてと。
「落ち着いたら来てね。」
その間に私は着替えをする。ベトベトヌルヌルになってしまったからね。私は変態ではないので、女の子達のヨダレで興奮したりはしない。断じてしない。
「マスタ、マスタ」
「お、どうした。ちょっと着替えるから待ってね。」
裾を持ち上げてぐっと上着を脱ぐ。ふぅ。
「スキ。」
ちゅ。
かわいらしいキスをされた。腕は脱いだ服で埋まっていて完全に油断していた。彼女はぴゅーと離れていってしまう。これはおふざけなのか。からかわれているのか。え?可愛くない!?やば!!!
こう言うときはあれだな!
「惚れてまうやろー!!!!」
もちろん、私の心を吐き出した叫びは着替えかけの服によって減音された。ぐちゃ。
「何に惚れてしまうのですか?」
「アイ、聞こえてた?」
「ええ。ハグしていいですか?」
「どうして?」
「大変そうだからです。」
「ん。」
「そうだ。AKちゃんの名前は、エンジェルにしようと思う。どうかな?エンジェルキングからとった。よく武器商人が使うAK47の隠語だ。」
「本当に名前のセンスが無いですね。あんなみすぼらしい子にエンジェルだなんて。娼婦の名前みたいですよ?」
「そうかな。」
「そうです。あなたの子供が宿ったら、私が責任をもって名付けます。」
可笑しくて私は笑ったが、彼女は本気だったようで怒られた。
こんな地のはてみたいな所でも、私達は幸せだった。だが、暴力はすぐ近くまで近寄ってきて、その重たい首をもたげていた。
作者です。この年期の入った、悪く言えばおんぼろの鉈は1日に平均4時間、3日連続で竹を叩き割ったのに刃こぼれひとつしない。滑って地面に刺さったりしたのに。なぜこんなことがありうるのか。私にはまだ分からない。




