指名手配
アイを抱き締めつつ、次の娘の番になった。この子は服に十字架をモチーフにしたような模様がある。
「次は私です!私はフランベルジェといいます!」
「がんばってね。」
彼女が笑うと口からギザギザした歯がのぞいた。彼女が両手で構えているのは細身の長い剣。その刀身は異様だった。まるで蛇が体をくねらせるようにグネグネと曲がっている。なんとも手入れのしにくそうな剣だ。だいたい、どうやって形作ったのだろうか?
ジャン!!
一振りで回りにあった草木の枝も巻き込み、青竹の中程までめり込んで止まった。あれだね、娘の子達には竹なんて簡単に切れるわ。力試しになってない。
ここで終わるかと思ったが、彼女は不思議な形状をした剣を抜いたり刺したりし始めた。それにより、まるでノコギリのように竹が削られていく。
ガリリリリリ!ガリリリリリ!!
「ストップ!」
竹の断面はもうガタガタ。もし、これが肉に対して行われたとすれば、再生は難しくなるだろう。この子だけには切られたくない。
「どうですか!?私も凄いでしょ!!」
「凄い!!でも、私にはしないでね!」
「ええー!!!」
やる気だったのか!!
なんだか胸が熱いと思ったら、アイが息できなかったみたいでポカポカ叩かれた。
「マスターは私をこ、殺す気ですか!!」
「ごめん、強くしすぎた。」
「胸筋が当たって口とか塞がれたんですから! はあ。酸欠でクラクラします。 あああ。」
がちでヤバイかも。アイはヘロヘロと座り込んでしまった。
「大丈夫?」
「人工呼吸してくたさい。」
あ、大丈夫だこれ。仮病を使って気を引こうとしているだけか。でも、本当に苦しそうなので、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ空気をおくりこむ。
すーーーー
やばいって!吹き込む空気の量より、アイに吸われる空気の方が多い!!
「生き返りました♥」
皆見てるのに。こんなことしてて恥ずかしい。目をそらすしかない。
「だめ。こっち見て。 私をこんなにしたのはマスターなんだから、ちゃんと責任とって。」
「昼まっからさかってんな剣坊。」
「若頭さん!!お疲れ様です!!」
「おう!今日はお前にお知らせがあったんや!」
完全に見られてた。いったいどこからなのかはわからないが顔から火が出そうだ。それにしてもわざわざ若頭さんが伝えに来るなんてどんなお知らせかな?見られたことは忘れる。絶対にだ。
「ほら!お前、指名手配されてるぞ!」
「はい?」
「だから、お前が指名手配されてるって。」
「それまたどうしてでしょうか?」
「警察関係者400名以上殺害となってるな。流石にここまで殺したやつはうちの組にもいないわ。」
ええええ!!!銃刀法違反とかじゃなくて、殺害って。全く身に覚えがない。
あ。
「クロー。ちょっと来て。」
「はいにゃ!」
「今まで、どれくらい悪いお客さんとバイバイした?」
「わかんにゃい!」
あああああ!!!!これか!!!!!
「ど、どうしましょうか!!若頭さん!!こう言うときどうしたら!?」
「ま、ほとぼりが覚めるまで国外に出てるっちゅうのが一般的やな。安心しろ剣坊。俺が面倒見てやる!!」
本当に頭上がりませんわ!!しかし、せっかく落ち着けると思ったのにまた動かなくてはならないとは、トホホ。




