変わった若頭
俺らの若頭はな、そりゃ凄い人なんよ。
組の若いのがさらわれ時なんか、一振りの刀を持って助けにいちまった。しかもたった一人でだ。鉄砲だって目じゃねーんだから。
ただ、一つ残念な所があってな、若頭は刀に話しかける癖がある。それこそ恋人に話しかけるみたいに話すもんで一緒いる俺たちは面食らっちまうわけさ。
「変わった人なんですね。」
「でも変な顔するなよ、若頭はあれでいて傷つきやすい。」
僕がこの組に入って5年目になろうかという今日。組の若頭と会うことになった。
ここで待てと言われた部屋は、大きめな机と高級そうな革張りのソファーが置かれていた。そして、中でも目を引いたのは、掛け軸の近くに置かれた日本刀。
本物だろうか
「凄く綺麗…。」
「その刀が気になるのか?どうだ、抜いてみるか?」
そこには体格のいい笑顔が似合う男が立っていた。
「ここで若頭を待っているんです。だから、勝手に触るのはいけないと思います。」
「? ああ、いいんだ。きっとそいつも、君に見てもらいたいと思っているよ。」
「でも…。」
「いいから、貸してみろ!」
この人勝手に刀抜いちゃったよ!!指をつめたりしなくちゃいけなくなっちゃうよ!!
その刀身は、鏡のように反射し、部屋の中に飾られた花や壁の色を映してとても美しかった。
「どうだ!綺麗じゃろう!!」
「速く戻さないと若頭さんが来ちゃいますよ!!」
「心配なか!!」
なんでこの人はこんなに笑顔なんだ。
「あ!!!若頭!!いないと思ったら。また刀なんか抜いて!危ないじゃないですか!」
「いいんじゃ!ほら、こいつに見せとった。目ーば、輝かせとったぞ!」
今、この人若頭って
「え?えええええええ??????」
「大変失礼しました!!」
「いいんじゃ!説明しなかったわしも悪い!」
「それよりお前、俺の友になれ!!年も近いし、俺の刀を見て盗もうとしたり、恐縮しなかったのはお前が初めてじゃ!!」
「謹んでお受けします。」
「ほんに固いやっちゃのー!今日から友達じゃけん、もっと砕けて話せ!」
「?ああ、口調のことですか?若頭は、緊張しなくていい人の前だと方言が出るんです。良かったですね、気に入ってもらえて。」
とんでもない友達ができてしまった。
それからしばらくして、僕たちは良く二人でいることが多くなった。
「若頭さん、今インターネットで話題になってる、ナイフを人に変身させられる大学生の話、知っていますか?」
「詳しく話せ」
いつも豪快に笑う若頭が、見たことない真剣な顔でこちらを見ていた。




