お着換え
「さあ、これで大丈夫ですね。下も脱いでください」
流石に女の子に見られている中で脱ぐのは嫌なのですが...それにアイはしゃがんで丁度私の下半身、ベルトのあたりに顔がある。さあ脱げと言わんばかりだ。
「もしかして、嫌なのですか?あの密室で何があったか聞かないからせめてその臭い服を脱いでくださいといっているのに、貴方は...」
ぅぐ。ウっグッ!
顔を手で覆い、泣いてしまったようだ。その表情はうかがい知ることができない。
「分かった。分かったからあっちを向いていて」
「ありがとうございます!!それではこれを」
彼女、泣いていなかったんじゃないかな。いくらなんでも回復が早すぎる。
アイに渡されたのは、なんか燕尾服みたいなやつ。無駄に高級感が溢れている。これが彼女の趣味なのだろうか。
よりあえず着てみる。驚くことにサイズはぴったり。まだほんの少し暖かくて、作りたてだと温かいのかなと予想。それにしても落ち着く。
「やっぱり!!良くお似合いですよ!他の女に見せたくない位、カッコイイ。」
「そうかな、うれしい。 あ、これアイの匂いがするよ」
落ち着く理由はこれだった。いつも一緒にいるし、寝るときでさえ添い寝だからもうしっかりと記憶している。
「はわわわわわ!!!!」
「どうした?」
「やっぱり、すぐ返してください!!」
アイの顔が熟れたリンゴみたいに真っ赤だ。
「え?大丈夫だよ、アイのこと好きだし」
脱がそうと伸ばされる腕をよける。動揺しているのか、狙いがあまい。
袖口を鼻に近づけてほのかに残る香りを楽しむ。
「恥ずかしいです...そんなに嗅がないで。」
アイは、自分で私のことを嗅いでいながら、自分を嗅がれるのが嫌らしい。涙まで浮かべちゃって。
「ごめん、もう嗅がないよ」
「うー。これから絶対嗅いじゃだめです。」
「こんなに良い匂いなのに。本当好きだよ」
「もう。嗅ぐなら、お布団の中でだけにしてください。
それから、良い匂いと言うのは貴方の匂いのことを言うのですよ。春の朝日のような匂い。多くの女性を引き付ける魅惑の香り。私の血なまぐさい、汚らしい物とは大違いです。」
彼女の手を取る。この柔らかく温かい彼女の手が血に汚れているとでも言うのだろうか。私かそうは思わない。
「こんなに綺麗なのに、そんなこと言わないで。アイは美しいのだから。」
「私は、貴方にふさわしい道具でしょうか?こんなに嫉妬深い私はお邪魔じゃないでしょうか?今さっきまで、あの部屋に飛び込んで、良い思いをした者たちに罰を与えたいと考えた私が。貴方に美しいと言われて本当にそうなのかもしれないと夢見ている私が。」
「私の方が、アイにふさわしくないのではないかと毎日心配していたんだ。僕たち良く似ているね。」
いつもと違って、きつく抱き着かれる。少し痛いぐらい。でもそれくらいの方が彼女の気持ちを良く感じられる気がした。




