二択だ好きな方を選べ
お久しぶりですね
俺は自分の目を疑った。
「適性が光と....闇だと........」
属性を調べる水晶でミリーアが出した結果に辺りは騒然となっている。
それもそうだ、彼女が魔力を込めた水晶玉の中に現れたのが、これまで見たこともない両手を繋ぎ見つめ合った白と黒の一対の妖精で、そしてその妖精から感じる属性は光と闇というこれまた有り得ない事になっているのだ。
これで騒ぎにならない方が可笑しい。
それよりもこの事態をどうするべきか。
このままだと確実にミリーアは城に連れていかれ学園は辞める事になるだろう。
彼女が学園を辞めたいのならこのまま傍観なのだが、
「「いかが致しますか殿下」ルーティーン様」
俺が内心頭を抱えていると、オーガスとツーリスから同時に声が掛かる。
2人は声が被ったことにお互いを睨みつけ合いながらも膝を付き俺の指示を待つ。
こいつら仲良しだな。
その2人の様子に苦笑しつつ俺は2人に指示を出す。
「ツーリス、黒の眠り魔法は使えるな?」
「はい、もちろんでございます」
「なら、俺が指示を出したら俺達と先生、それとあの生徒以外を眠らせろ」
「承りました」
「殿下、私は何を致しましょう」
「オーガスはツーリスが生徒達を眠らせたら、先生と今後についての相談を頼む」
「かしこまりました」
「俺は少し恩人と話をする」
そう言い、振り返るとオーガスとツーリスはざわつくクラスメイト達を掻き分け、俺はその出来た道からミリーアの方に歩いていく。
この騒ぎの中心にいるミリーアといえば、自分が何もしたのか分かっていないのかきょとんと周囲の反応を見ているだけだ。
そして俺が近づいているのに気付くと若干ほっとしたような表情になるが、少し俺から左右に視線をずらすと今度は怯えた表情になる。
何かあるのだろうかと後ろを振り返って見るがそこにはオーガスとツーリスしかいない。
何かあったのだろうか?
まぁ今はそんな事はいいだろう。
「ツーリス」
「了解しました。ルーティーン様のご命令で眠ることになるんだ。光栄に思いな“ナイトスリープ”」
俺が名前を呼ぶと、何だかよく分からないことを言いながらツーリスが魔法を発動する。
すると、先程までざわざわとしていたクラスメイト達は、その場でまるで糸が切れた人形のようにバタバタと倒れていった。後に立っているのは俺達と先生とミリーアだけだ。
「おいおい今度はなんだよ」
「それは私から説明致します」
騒ぐ者達を止めようとしていた先生は突然倒れていくクラスメイト達を見て頭を抱えるが、そこにすかさずオーガスが先生に説明をしに行く。
後は俺のやる事をやるだけだ。
「俺の恩人ミリーア。ミリーアの思いを聞かせてくれ」
「え?どういう事ですか?」
「今ミリーアはある二択を迫られている」
首を傾げるミリーアに指を2本立ててそう言うと、首の角度が先程よりも急になってしまった。
まぁこの状況もよく分かっていない様なので仕方が無いか。
「二択内の一つはこの学園を辞め、城のなかで一生暮らす」
「え?!なんでですか!!」
俺が一つ目を言うと慌てたように俺の襟を掴み、慌てたように手を離すミリーア。
「す、すみません.....」
「気にするな。それよりも理由だが、それはミリーアの適正属性のせいだ」
謝りつつも頻りに俺の背後を気にするミリーアだが俺は構わずに話を続けていく。
「初めにカイン先生も言っていたと思うが人間は相反する二属性を絶対に持つことが出来ない。相反する二属性とは火と水、風と土、そして光と闇。この組み合わせで属性を持ってる者は実は稀にだが居ることは居るんだ。だが反発し合う魔力によって、全員長くても10歳までしか生きていられない」
「あっ.....。で、でも私は」
俺の言葉に、手に持っている水晶で自分がどのような結果を出したのかを見て顔を青ざめるミリーア。
「そうだな、ミリーアはこの学年だと大体15歳くらいか?それなのにまだ生きている。反発する魔力を持つのにな」
ミリーアが握りしめている水晶を指差してやると、ビクッと怯えたように後ずさった。すると、先程まで水晶内で見つめ合っていた白黒の妖精の内、黒い方の妖精がバッとこちらに振り向き、まるで吸い込まれそうな程黒い瞳で射抜くように見つめた後に何度か喋るように口を開閉するとまた白の妖精と見つめ合っていた。
「なんだ今のは?」
「ルーティーン様、どうかなさいましたか?」
後ろに控えていたツーリスに水晶を指差し見るように促すと、首を傾げながら心底不思議そうに言う。
「すみません、俺には光属性と闇属性を表す玉しか見えません」
「.....そうか、ならいい」
もしやあの妖精は俺にしか見えてないのか?
「誠に申し訳ございません!!」
うわぁ!!なんで突然土下座?!!
見えないのなら仕方が無いと思ったのだが、何故かツーリスは地面にめり込みそうな程に頭を下げている。
「頭をあげるんだ。何を気にしているのかは知らないが、俺は別になんとも思ってない」
「.........精進いたします」
なんとも思ってないと言っているのに、悔しそうに唇を噛み締めるツーリスは置いておき、水晶を握りしめ震えるミリーアに口を開く。
「この国は魔法馬鹿ばっかりだからな。光と闇の適性を持つ君の事が知れたら研究対象として何不自由無く一生城の中にある魔術塔で暮らすことになるだろう」
普通の者は何不自由無く城で暮らせると聞くと考える間もなく直ぐに城で暮らすと言いそうだが、どうやらミリーアはそれが嫌なのか苦い顔で首を振った。
「.....どうにか.....なりませんか?」
消え入るような声で泣きそうになるのを堪えながら懇願する様に言うミリーアに任せろという気持ちで笑顔を向けてやると、何故か引きつった顔になった。
「最初に言ったがこれは二択だ。一択目が一生城の中で暮らす、そして二択目がこの件は俺に任せミリーアは何も気にすることなくこれまで通りこの学園で暮らす」
俺が胸をどんと叩き言い切ると同時にこの闘技場にある扉が勢いよく開き、怒りを具現化した様な人物が飛び込んで来て一瞬でオーガスとツーリスに取り押さえられた。
「貴様ァ!!ミリーアを虐めるんじゃない!!」
は?どちら様ですか?
さあさあ、卒業制作も修羅場となって参りました。
あ、もう更新しないと思いました?
大丈夫です。絶対に完結させてみせます。