4話 俺の夜の特訓
王立魔法図書館から帰ってきた夜、俺はイスカにバレないように、こっそり借りてきた本を袋から取り出した。
本のタイトルは'魔力の扱い方入門編'と聖力の扱い方入門編'だ。
ちなみに、精力の扱い方の本は借りてないぜ!
だって精力の数値が一桁だもの。
後からイスカから聞いた話だと、この値は産まれたばかりの赤ちゃんと同等らしい。
ばかにしやがって!
俺は魔力と聖力を極めて見返してやる。
さて、まず魔力の本から見ていこうか。
「ふむふむ、なるほど、なるほど」
まず精力の時と大きな違いは、〜の精霊よって言葉が必要ないということだ。
これによって詠唱のスピードが上がり、精力を使え人より有利になる。
また、魔力は主に攻撃魔法に補正が掛かり威力が増加する。これがあるため、魔族が危険視されているらしい。
「まぁザッとこんなもんかな!一通り魔力については分かったし、庭に出て実際に試してみるか!」
外は夜で誰も庭にはいない。
俺が魔力を使えることがバレる心配もないしやるなら今だな。
そして俺は庭に向かった。
「んー、風呂上がりに当たる、夜の風は気持ちいいわ!」
そう言ってイスカはベランダに出て背筋を伸ばした。
「あら?あれはユートさん?」
なんでこんな時間に外に出ているのかしら?
「改めて見るとこの庭、相当広いな!」
今、俺の目の前には半径50mほどの庭が広がっている。また庭には城にむかう一直線の道が城の周りの壁の入り口まで続いていた。ちなみに庭の周りの壁は高さ3mほどのレンガの壁だ。
庭にはポツポツと無作為に木が植えられている。また地面は芝生で柔らかそうだ。
そして俺は庭の真ん中辺りまで歩いていき立ち止まった。
まぁこの辺なら魔法をぶっ放しても大丈夫だろ。客観的に見たらどうか知らんけど。
「えーと、何ページだっけな?」
俺はそういって魔力の本を広げた。
まずは初級魔法のファイアーボールからいきたいと思う。
そういえば言うのを忘れたが、魔法は初級、中級、上級、超級、天災級、伝説級、神魔級とランク付けされている。
でも、いきなり超級とかだと体を壊す心配があるから初めは初級からが妥当だよね!
ではさっそく…
人差し指を前に出し、
「燃やせ、ファイアーボール!」
ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
バコン!
「……はっ?」
一直線に飛んでいったのは良かっよ。うん。
でも何で50m以上飛んでくのかな?
しかも壁に当たって壁がぶっ壊れるって本当に初級魔法なのかな?
とりあえず、考えるのは後にしてまずは証拠隠滅が先だろう。
「さてバレないように穴に石を詰めておこう!」
俺は心を痛めながらも証拠隠滅に全力を注いだのであった。
「ふぅ、何とか隠滅はできたぜぇー!」
謎の達成感に浸りながら、俺は次の魔法を覚えるため、本を開いた。
「んーとなになに、属性混合魔法だって?
なんか面白そうだな、試してみるか!」
俺は、風と火の混合魔法のページを開いた。
「'火炎乱風'っていうのをやるか!ランクは超級だけど、さっきの魔法で感覚掴めたし、大丈夫だろ!」
まずは俺の右手方向にある木にやるか。
俺は対象となる木と魔法をイメージして…
「天に滅っせよ、全てを燃やし尽くせ、火炎乱風!」
するとその木を中心に炎に覆われた竜巻が発生した。
竜巻は数十秒続き、消えた後には対象にした木は元々存在していなかったかのように消えて、周りの芝生は焦げていた。
「……」
「お、俺はな、何も知らん、知らんったら知らん!」
俺は自分にそう言い聞かせ、部屋に急いで戻った。
「ふふふっ面白いもの見せてもらっちゃったわ!」
イスカは子供のように、純粋に心から笑っていた。
「でも、ユートさんって、確か精霊に嫌われていて極端に霊力が少なかったんじゃなかったかしら?
それにあの詠唱、明らかに省略していましたわ!
真実を知るために明日尋問しないといけませんわね!」
そう言ってイスカも自分の部屋に戻り、眠りについた。
「朝ですよーユートさーん起きてくださーい」
「ぶくぶくぶくうぉぉ」
朝起きると俺はなぜか顔だけ水の中だった。
そう、イスカが水魔法で俺の顔を水の塊の中に閉じ込めていたのである。
「じぬぅぅぅし、しぬぅぁぁ」
「ユートさん!大丈夫ですか!?
「だいじょうぶじゃないぃぃぶくぶく、はやくかいじょしろぉぉぶくぶく」
「ハッ!?忘れてました!ごめんなーちゃい!」
忘れてましたじゃねーよ。
そう言ってイスカは自分の右手で頭を軽く叩き、少し舌を出していた。
ちょー可愛い!許す!
「で、俺に何か用事でも?ないなら俺はもう一度寝たいんだけど」
「えーとですね、私、朝に庭を散歩していたんです。」
「ギクッ、お、おう…」
「そしたらですね。庭の木の数が減っているような気がするんですね?気のせいでしょうかー?」
「き、気のせいなんじゃないカ?」
「ふーん、そうですかー、そういえば、何か壁に明らかに不自然な穴をみつけたのですがー…」
「なんだと!?あれは俺がきちんと隠蔽したはずじゃ……ハッ!?」
俺はロボットのようにゆっくりイスカの方に顔を向けた。
イスカは笑っていた、それも幸せそうに。
一体何が幸せなんだろうか?
俺にはさっぱり分からん。
とりあえず謝っておこう。
「ごめーんちゃい!」
「ふふふっ」
「はははっ」
俺も笑っておいた。
次の瞬間、俺の体に電流が流れたような感覚に襲われ画面が暗転した。
やっぱ悪いことは見つかるのね!
悪いことはいつかバレますw(俺の体験談)