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プロローグ


―――――気が付けば、荒野にいた。



 考えるよりも早く、世界の有り様を理解する。その視界には果てなき闘争の末に、辿り着いた結末の姿が映っていた。音を立てる者は何一つなく、生命を拒むかのような見渡す限りの不毛の大地。そこに存在する命など、あってはいけない筈だった。

 そんな世界で、声を上げる者が独り。


「―――――――――」


 いや、声を上げる者ではない。彼女が、そう感じただけだ。彼女の視界に入るモノは、少女が何かを抱えて天に咆哮をあげる姿。それは多大なる絶望を孕んだ悲痛すぎる哀哭だった。


 ――――いや、そうあって欲しいと勝手に願っているだけね。

 ――――何て……身勝手で醜悪な、人間。


 そうして彼女は、力なく笑いを浮かべていた。だがその笑みにあるものは喜びなどとは程遠い、切なすぎるほどの痛みの顔。


何せ、この凄惨な結末を導いたのは紛れもなく彼女だから。


 視界に映る少女は、叫び声も枯れた後その瞳から涙を零す。そんな零れ落ちる雫を見て、彼女はただ己の咎を心の裡で積み重ねた。この光景を見るべきは、私ではないのにと。己の存在を忌避し、否定し、そして最後に彼女の思考はただ一つの言葉に辿り着く。



 ――――――何故、私はここにいる



 それが、彼女が人として歩んだ最後の感情。

 そこから先、何がどうなったかは彼女は知らない。ただ、ずっと前に進んでいた。あの一夜の悪夢を拒むように。この世界の全てを否定するかのようにと。そうして進む度に摩耗し、心が荒み、軋轢を生み、擦り減ったあげく衰退の果てに零となり。その果てに辿り着いたのは、救いを孕んだ奇跡などとは程遠い、傲慢で愚昧な咎人の叫び声。





――――此処は始点と終点を紡ぐ場所


    運命の夜に咲く、強く儚い物語――――


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